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Synspective、夜も雲も越える12号機を572km軌道へ

夜でも雲の下でも地表を見る SAR 衛星が、日本の民間の手でまた一つ増えた。増えた1機に何ができて、何がまだできないのか。

Synspective、夜も雲も越える12号機を572km軌道へのイメージ

この記事でわかること

  • Synspective の StriX 12号機が9月19日、Rocket Lab の Electron で高度572キロへ。Electron は通算96機目、2026年17機目。
  • StriX は X バンドのマイクロ波で夜も雲の下も観測できるが、1機の観測幅は10〜30キロ。30機体制の目標にはまだ半分しか届いていない。
  • 12号機は試験と初期運用に今後数か月かかり、まだ運用には入っていない。

日本の SAR (合成開口レーダー) 衛星企業 Synspective の12号機が、9月19日、高度572キロの軌道に入った。夜でも雲の下でも地表を見るレーダーの目が、日本の民間の手でまた一つ増えたことになる。

衛星が1機増えたという話は、ふだんの暮らしと結びつけにくい。ただ、この種の観測は、災害の夜に誰が最初に被害を把握するかという具体的な場面まで降りてきている。増えた1機に何ができて、何がまだできないのかを見ておきたい。

光を使わない目が572キロに入った

打ち上げたのは Rocket Lab の小型ロケット Electron。ミッション名は Owl By The Dozen で、現地時間9月19日午後3時22分、ニュージーランド・マヒア半島の第1発射場から上がった。最上段のキックステージが、StriX の12号機を高度572キロの低軌道へ直接投入している。

StriX は光学カメラを積んだ衛星ではない。Synspective の公開仕様によれば、9.65ギガヘルツの X バンドのマイクロ波を地表に当て、返ってきた反射から像を組み立てる。光に頼らないので、夜でも、雲や雨の下でも観測できる。NTTドコモとの協定文でも、SAR は夜間や悪天候でも観測できる手段として位置づけられている。

ただし像の細かさと広さには条件がつく。分解能は観測モードで変わり、広く撮るストリップマップで地上距離3.6メートル・進行方向 (アジマス) 2.6メートル、絞り込んだスポットライトで0.46メートルまで。観測幅はストリップマップで10〜30キロ、公称20キロ。スポットライトでは約10キロ。1機が一度に捉えるのは、都市の一部が収まるくらいの帯だ。

17日で2機、残る受注は15回

11号機が同じ Electron で上がったのは9月2日だった。12号機までの間隔は17日しかない。

Rocket Lab 側はこれを Electron の通算96機目、2026年に入って17機目の飛行だと説明している。Synspective との複数年契約では打ち上げ成功率100%を維持しており、商用 SAR コンステレーションを完成させるため、2020年代の終わりまでに15回の専用ミッションを受注済みだとしている。Synspective の衛星は、これまで全機が Electron で運ばれてきた。

Synspective 自身が掲げる目標は30機体制で、時期は2020年代後半。12機はまだ半分に届いていない。同社は StriX について、同じ場所を毎日訪れることができ、この頻度はコンステレーションが大きくなるほど上がる、と書いている。毎日見られるのは、あらかじめ狙いを定めた場所だ。機数を増やす作業は、その狙える回数を増やす作業にあたる。

ドコモが災害の夜に見るもの

8月28日、NTTドコモ・NTTデータ・Synspective が「災害時における衛星画像活用に関する協定」を結んでいる。NTTデータが光学画像を、Synspective が SAR 画像を出し、ドコモがそれを基地局の被害情報や公的機関の情報と突き合わせる。浸水した範囲、土砂崩れの箇所、道路が通れるかどうかを見て、復旧の優先順位と人員・資材の配置を決めるという建て付けだ。協定は締結日から発効している。

読者が StriX の画像を自分で注文する場面は、当面ない。届くとすれば、携帯がいつ戻るか、どの道が使えるかを決める誰かの判断が、どれだけ速くなるかという形でだ。三社とも、実際の災害での運用を通じて使い方を検証していく段階だと書いている。運用の実績はこれから積む段階にある。

運用開始は数か月先

今回の12号機は、軌道に入っただけで仕事を始めてはいない。Synspective は、今後数か月かけて試験と初期運用を行い、観測性能を確認してから運用に入るとしている。9月2日に上がった11号機も同じ段階にある。打ち上げの成功はサービスの開始ではない。

確かめるなら、Synspective のニュースページを見ておくといい。12号機の運用開始は今後数か月のうちにそこで告知される。実際に何機が働いているのか、30機という目標までどれだけ残っているのかも、同じ場所で数えられる。

ことば

  • SAR(合成開口レーダー) — 電波を地表に当て、返ってきた反射から像を作る観測方式。光を使わないので夜でも雲の下でも撮れるが、出てくるのは写真ではなく、反射の強弱を並べた地図になる。
  • StriX — Synspective が運用する小型 SAR 衛星。9.65ギガヘルツの X バンドを使い、1機が一度に見るのは幅10〜30キロほどの帯。機数を増やして同じ場所を見る回数を稼ぐ設計になっている。
  • キックステージ — Electron の最上段にあたる小型の推進部。本体と切り離れたあとに自力で軌道を整え、衛星を狙った高度に置く。今回は572キロへの直接投入に使われた。

夜でも雲越しでも地表が見える体制が整っていくとき、その目はあなたの側に立つ道具になるだろうか? それとも、あなたの住む場所について誰かが判断を下すための材料が増えるだけだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。