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Starlink でビデオ通話が成功、音声通話と緊急通報は不可

イタリア中部で Fastweb が Starlink Mobile 経由の初のビデオ通話に成功した。ただし電話番号にかける音声通話も緊急通報も対象外で、条件は屋外かつ空が直接見えること。日本の au Starlink Direct も同じ制約のまま動いている。

Starlink でビデオ通話が成功、音声通話と緊急通報は不可のイメージ

この記事でわかること

  • Fastweb が Starlink Mobile 経由で成功させたのはアプリ上のビデオ通話で、電話番号にかける音声通話も緊急通報も対象外。条件は屋外かつ空が直接見えることで、試験は業界関係者に限られ料金も開始時期も未発表
  • 日本の au Starlink Direct は2025年4月から稼働し、対応端末ならテキストと一部アプリが圏外でも使える。当面追加料金なしだが音声は未対応で、110番や119番に電話をかけることはできない
  • KDDI は9月15日に次世代衛星 Starlink Mobile V2 の契約をアジア初で締結し、VoLTE を含む提供を2027年内に目指すと発表。マスク氏が言う100倍はデータ密度の側で、衛星1機あたりの通信量は約20倍と説明されている

イタリア中部で、通信事業者 Fastweb が Starlink Mobile 経由の初のビデオ通話に成功した。Starlink の公式アカウントが現地時間の9月17日に明らかにしたもので、衛星が「空にある基地局」として働き、手元のスマートフォンをそのまま使う。

ただし、同じ経路で音声通話はできない。緊急通報もできない。つながらない場所が減っていくのは確かだが、減り方には順番がある。

つながったのは音声通話ではなく、アプリのビデオだ

先に語の範囲を絞りたい。Starlink が発表で使っているのはビデオ通話という語で、電話番号にかける音声通話とは別のものを指す。

Fastweb が自社の案内ページに書いている内容はこうだ。SMS は対応する端末すべてで送受信できる。メッセージや映像は、衛星サービスに対応したアプリを通してなら使える。従来の音声通話には対応しない。緊急通報の番号も同じく対象外だ。

つまり今回つながったのは、データ通信の上で動くアプリの映像と音声である。「スマホで通話ができた」と読むと、出典より広い話になる。

屋外で、空が直接見えるときだけ

使える条件も狭い。Fastweb は、屋外にいて空が直接見えることを前提としている。木や山や建物が視界を塞げばつながらない。

端末の側にも段差がある。追加の機器は要らないが、アプリまで使える最適化済みの機種と、SMS しか使えない機種に分かれる。自分の端末がどちらなのかで、できることが変わる。

そしてこの試験は、まだ一般向けではない。Fastweb は現時点で業界関係者に限った実験段階だと書いており、商用の開始時期も料金も公表していない。イタリアの山あいで1本つながったことと、契約者が明日から使えることのあいだには、まだ距離がある。

日本の読者にとって、これは遠くの実験ではない。au Starlink Direct が2025年4月から動いていて、対応端末なら圏外でもテキストと一部の対応アプリが使える。au は当面追加料金なしとしている。

制約はイタリアとほぼ重なる。屋外であること、空が見えること、対応端末であること。音声通話には対応しておらず、留守番電話や転送も衛星につながっているあいだは働かない。音声が通らない以上、110番や119番に電話をかけることもできない。KDDI の説明では、現在対応しているのはメッセージ、対応アプリのデータ通信、SOS の救助要請、IoT、ドローンの運用だ。

次の段も日本側で決まっている。KDDI は9月15日、次世代衛星 Starlink Mobile V2 の提供契約をアジアで初めて締結したと発表した。衛星1機あたり約20倍のスループット、約100倍のデータ密度とされ、ここで VoLTE、つまり通常の音声通話が入る。目標は2027年内の提供だ。

イーロン・マスク氏が9月18日に V1 比で帯域100倍と投稿したのは、この V2 を指している。ただし100倍という数字が付いているのはデータ密度のほうで、衛星1機あたりの通信量は約20倍と説明されている。どちらも本人と同社の説明であって、第三者が測った値ではない。

住む場所を通信で決めるのをやめる前に

移住、二拠点、車中泊、山や離島での仕事。通信の可否を条件から外せるなら、選べる場所は増える。その方向に動いていること自体は、疑う必要がない。

ただし今日の粒度で書けばこうなる。届くのは文字と一部のアプリで、声はまだ届かない。屋外で空が見える場所に限られ、樹林や谷筋では切れる。緊急通報は、衛星経由では電話としてかけられない。

だから圏外でも連絡は取れるという前提で住む場所を決めるなら、取れるのは文字の連絡だという粒度まで落として計画することになる。家族との合流方法、体調を崩したときにどう搬送を頼むか、停電が続いたときの充電。文字だけで回せるかを一度書き出すと、足りないものが具体的に出てくる。

その一覧は、2027年にもう一度書き直すことになる。音声が入れば短くなるからだ。

確かめる先は3つある。au の対応端末一覧(自分の機種が SMS 止まりか、対応アプリまで使えるか)、KDDI が9月15日に出した V2 の発表(2027年内という目標が動くかどうか)、そして Fastweb の Starlink 案内ページ(業界関係者限定という但し書きが外れる日)。

ことば

  • Direct to Cell — 専用のアンテナや端末を足さず、いま持っているスマートフォンが人工衛星と直接やりとりする方式。衛星を上空の基地局として扱うため、地上の電波が届かない場所でも圏内になりうる。
  • VoLTE — データ通信の回線に音声を乗せて通話する方式。衛星側でこれが使えるようになって初めて、電話番号にかける通常の通話が圏外でも成立する。
  • データ密度 — 決まった面積のなかで衛星がさばける通信量。同じ空の下に人が多い場所ほどここが効くので、1機の速さより混雑したときの実感を左右する。

声が届かない場所でも、文字は届く。その差を、あなたはどこまで許容して住む場所を選ぶだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。