DeepSeek が8月13日、V4-Pro を公開した。目を引くのは性能の数字ではなく、使う側に渡された一つのつまみのほうだ。「どれだけ考えさせるか」を、簡単な用件なら低く、日常の作業なら高く、込み入った問題なら最大に、と選べるようになった。しかもこれは開発者向けの設定にとどまらない。アプリとウェブの画面にも、Expert Mode という入口として来ている。賢さが固定の性能ではなく、その都度こちらが決める量になりはじめた、という話だ。
つまみは、どこに来たのか
公式の告知によれば、思考の量を選べるのは V4-Pro と V4-Flash の両方で、段階は低・高・最大の三つ。アプリとウェブでは Expert Mode から使え、開発者向けの窓口では従来のモデル名のまま呼べる。公式の更新記録も、呼び出し方は変わらないと書いている。
モデルカードの言い方では、三つの段階は「考えない」「高く考える」「最大限考える」と説明されている。いちばん下は減らすのではなく、考える工程そのものを外す設定だ。速く返ってくることが値打ちになる用件が、はっきり別枠に置かれている。
公開されている中身も見ておきたい。構成は必要な部分だけを動かす方式で、全体は1兆6000億、一度に動くのは490億とされる。一度に扱える文脈は100万トークン。重みは公開されていて、ライセンスも制約の緩いものだ。ただし総量が総量なので、手元の機械に置いて動かすという話にはならない。触るのは、アプリか開発者向けの窓口を通してになる。
「最大にしておけば安心」は、静かに高くつく
選べるということは、選ばなければならないということでもある。
考える量を増やせば、返ってくるまでの時間は延びる。従量で払っている使い方なら、支払いは処理した量で決まるので、そこにも効く。常に最大に置いておくのは、待ち時間と費用を静かに積み上げる置き方だ。
逆に、低いままで足りる用件も多い。要約、書き換え、定型の返信、調べものの入口。考える量が結果を変えない仕事に、考える時間を払う理由はない。
そして公表されているのは「どの段階があるか」であって、「どの段階で結果がどれだけ変わるか」ではない。自分の用件でどう変わるかは、同じ頼み方のまま段階だけ変えて試してみないと分からない。ここは各自で確かめるしかない部分だ。
使い分けの手数を、どこまで払うか
つまみが増えると、判断も増える。
毎回どの段階にするか考えること自体が小さな手間で、その手間は用件の数だけ積み上がる。現実的なのは、都度決めるのをやめて、自分の中に二つ三つの型を作ってしまうことだろう。この種の頼みごとはここ、これはここ、迷ったらここ、と決めておく。
それでも取りこぼしは残る。難しさは頼む前には分からないことが多い。低い段階で始めて足りずにやり直せば、結局二回払うことになる。最大で始めて余っても、余った分は返ってこない。
もうひとつ、選べるようになったこと自体の副作用もある。これまでは「AIがそう答えた」で済んだところに、「どの設定で聞いたのか」という条件が挟まる。同じ質問でも、条件が違えば返ってくるものは違う。人に見せるとき、自分で見返すとき、その条件を覚えているかどうかで、答えの重みは変わる。
自分がAIに頼んでいることを思い返してほしい。そのうち、深く考えてもらう必要が本当にあるのは、どれくらいあるだろうか?
参照
- 公開の告知(V4-Pro と V4-Flash で思考の量を低・高・最大から選べる/アプリ・ウェブでは Expert Mode/API では従来のモデル名のまま)— DeepSeek 公式アカウント(2026年8月13日)
- 公式の更新記録(deepseek-v4-pro を DeepSeek-V4-Pro-0813 へ更新/呼び出し方は変更なし/思考の量を指定する項目)— DeepSeek 公式ドキュメント
- 公式モデルカード(必要な部分だけを動かす構成で総1兆6000億・一度に動くのは490億/文脈100万トークン/重みは公開・MIT ライセンス/「考えない」「高く考える」「最大限考える」の三段階)