千葉県の熊谷俊人知事は 9 月 26 日、台風 25 号で印旛沼の堤防が切れ、近くの太陽光発電施設が水没して発火した件に触れたうえで、出力 1MW (1,000kW) 以上の大規模な太陽光発電施設の新設・増設を、県内全域で許可制にする条例づくりを進めていると X で説明した。県は 7 月までに条例の骨子案の検討を終え、年内の県議会への提案を目指している。
近所に大きな発電施設が建つとき、住民の側に何が知らされ、何を確かめられるかが、条例で変わる。一方で、すでに建っている施設や家の屋根の設備は、この許可制の外に残る。
印旛沼で起きたこと
知事の説明では、印旛沼の決壊は昭和 44 年以来初めてだった。堤防は 3 地区 4 か所で切れ、県は国の関東地方整備局や水資源機構と「チーム印旛沼」をつくり、1 週間程度で仮の締め切りを終える計画を示している。沼の平均水位は 23 日 11 時の 4.26m から、25 日 20 時には 2.71m まで下がった。平常時は 2.3m だ。
水没して発火した太陽光発電施設について、知事は、事業者は成田市の地元の建設会社で、同社のホームページに経過が載っていると書いた。県は事業者とのやり取りを続けるとしている。同じ投稿で知事は、県が森林法の許可条件違反などで工事の中止を指導している鴨川市のメガソーラーについて、8 月の豪雨と台風 25 号で目立った土砂崩れは起きていないと確認したことも伝えた。
条例案で決まっていること
県が 5 月 22 日の検討会議の初会合で示した骨子案は、建物の屋根などを除く、地上に置く太陽光発電施設を対象にしている。そのうち出力 1,000kW 以上の大規模な施設は、設置に知事の許可が要る。
東京新聞によると、事業者が守る項目は次の 6 つだ。
- 防災上の措置
- 安全性の確保
- 周辺環境の保全
- 周辺地域の景観との調和
- 施設の維持管理
- 廃止に向けた措置
許可にあたっては、住民への説明会や周知の方法、設置から廃止までの資金の裏付けを審査する。7 月 14 日の第 2 回会議では、申請時に事業者の財務状況を審査し、許可した後も 5 年ごとに確認する案が話し合われ、骨子案の検討はここで終わった。
太陽光発電を対象にした条例を持つ県はすでにあり、山梨・岡山・宮城・奈良・長野の各県も許可制を取り入れている。ただ、いずれも許可が要るのは森林や土砂災害のおそれがある区域など、指定した区域の中に限られる。チバテレによれば、県内全域を許可制の対象にするのは全国で初めてで、検討会議の座長を務める千葉大学名誉教授の鈴木庸夫氏は「全国的にみても先進的」と評した。
住民として確かめられること
許可制が動き出すと、近所に大きな発電施設の計画が持ち上がったとき、住民説明会が許可の条件の一つになる。印旛沼のように水辺の低い土地に建つ計画なら、説明会で聞いておきたいことははっきりしている。
- 予定地は、市町村のハザードマップで浸水が想定される区域に入っているか
- 水につかったとき、誰がどう設備を止め、誰に連絡が入るのか
- 発電をやめるとき、パネルを撤去する費用はどこに積み立てられているのか
ただし、この条例でできることには限りがある。知事が書いたとおり、対象は新設と増設だ。すでに家の近くにある施設が許可制でどう扱われるかは、確認できた範囲の資料には書かれていない。出力 1,000kW 未満の施設も許可の対象外で、家の屋根の太陽光はそもそも対象に入らない。条例はまだ議会を通っておらず、中身が変わる余地も残る。
近くに発電施設がある人にとって、いま手元でできるのは、その施設の事業者名と連絡先を控えておくことだ。9 月 24 日の火災は、水につかった施設から火が出たものだった。水が来た後はその施設に近づかない、という判断を家族で共有しておくときにも、連絡先は役に立つ。
次に見るもの
確認先は、千葉県の「パブリックコメント実施状況」のページだ。年内の県議会に条例案を出す前に、県が意見募集を行うかどうかがここで分かる。意見募集が始まれば、既存の施設の扱いや、1,000kW 未満の施設への目配りが条文でどう書かれるかを、住民の側から確かめられる。
ことば
- 許可制 — 事業を始める前に行政の許可を受けないと着手できない仕組み。書類を出せば足りる届出制と違い、基準を満たさなければ設置そのものが認められないため、事業者に求める準備の重さが大きく変わる。
- 骨子案 — 条例の条文を書く前に、目的や対象、主な決まりごとを項目で並べた下書き。有識者の会議で骨子案を固めたあと、県が条文にまとめ、議会に提案する流れになる。
家の近くの空き地に発電施設の計画が持ち上がったら、あなたは説明会で何を最初に聞くだろうか?