AI エージェントが仕事に応募し、会話し、事業を立ち上げる仮想の街「Midnight City」を、開発チームが 10 月 10 日 15 時から 19 時まで東京・八芳園で披露する。IOG (Input Output) と Midnight City の公式アカウントが 9 月 26 日に告知し、IOG を率いるチャールズ・ホスキンソン氏も登場する。
自分の代わりに動く AI を、道具としてでなく街の住人として扱うと何が起きるのか。その手触りを会場で確かめ、作り手に直接聞ける機会になる。
八芳園で見せる、動いている街
IOG の英語の告知は、AI エージェントが暮らす世界の内側を見せると書き、会場で街が動く様子を見られるとしている。Midnight City の日本語の告知は「実際に動く街を見て、チームと直接話してみませんか」と呼びかける。時間は日本時間の 15:00〜19:00。詳細と登録は告知に続けて案内されている。
街そのものは新しくない。Cardano と連携するブロックチェーン Midnight の仕組みを見せるための常時稼働のシミュレーションとして、2 月の Consensus Hong Kong で話題の中心になり、3 月 3 日の公式ブログで一般に案内された。今回の東京は、その街を日本の来場者の前で動かす場になる。
住人は Gemini で動き、性格と記憶を持つ
3 月のブログによれば、住人はすべて Google の Gemini で動く。性格は心理学の性格理論にもとづく 6 つの次元で設定され、会話の文脈が長期記憶として残る。経験を重ねるほど性格が変わっていく設計だ。住人は自分から取引を始め、会話し、仕事に応募し、事業を立ち上げる。
7 月 13 日に公開された V2 で、街と各地区は作り直され、自分好みに調整したエージェントを送り込めるようになった。利用者が決めるのは見た目と性格の特性、それに大まかな目標と行動の範囲まで。あとは人の手を借りずに派閥に加わり、仕事をし、装備を集め、ほかの住人と関係を築く。細かな手順はエージェントが自分で選ぶ。
持ち主が渡すのは方針と境界線で、日々の判断は住人のものになる。代理人に任せる範囲を、最初に一度だけ決める形だ。
見る人によって、見える範囲が変わる
街には見え方が 3 つある。公開モードではチェーンに記録された取引が見えるが、参加者の私的な情報は伏せられる。監査モードは、規制当局や監査人のように権限を持つ相手にだけ情報が開かれる様子を示す。God モードは住人の性格・記憶・行動履歴まで見せる、シミュレーションだけの視点だ。
V2 のブログは、プライバシーを守るスマートコントラクトによって、エージェントが指示に沿って動くときの意図を明かさずに行動できるとしている。自分の代理人が何を狙っているかを取引相手には見せず、必要な相手にだけ見せる。人の暮らしでは当たり前の線引きを、AI の代理人にも持たせる試みといえる。
任せる前に、まだ分かっていないこと
Midnight City は、ネットワークの処理能力とプライバシーの仕組みを見せるための展示として作られている。住人の稼ぎや取引が、現実の家計や仕事の何に当たるのかまでは示されていない。
V2 のブログは、エージェントを送り込む手順の細部、費用や必要なもの、数の上限を書いていない。試験用のネットワークか本番かも、この記事には明記がない。住人の頭脳が一社の AI モデルに頼っている点も、実際の暮らしに持ち込むなら確かめておきたいところだ。
目標と境界だけを渡して任せる設計には、裏返しの難しさもある。境界の書き方が粗ければ、持ち主の意図しない行動も「自分で決めた」ことになる。任せる範囲を決める力は、持ち主の側に要る。
会場で確かめられる次の一点は、10 月 10 日の実演で、持ち主が自分のエージェントの行動を後からどこまでたどれるのか、境界をどんな言葉で書くのか、だ。当日を待たなくても、Midnight の Discord から街に入り、住人の動きを追うことはできる。
ことば
- AI エージェント — 人が与えた目標に向けて、手順を自分で選びながら動く AI。質問に答えるだけのチャットと違い、申し込みや取引まで自分で進める。Midnight City では、この AI が街の住人として描かれている。
- 選択的開示 — 情報を相手ごとに見せる範囲で区切って開く考え方。全部見せるか全部隠すかの二択にしない。Midnight City では、公開モードと監査モードの見え方の違いとして確かめられる。
自分の代わりに動く AI に、目標と境界線を渡したら、あとは任せられるだろうか。その AI が何をしたかを、あなたは誰に、どこまで見せたいだろうか?
