ホワイトハウスは 9 月 25 日、習近平国家主席の国賓訪問にあわせて公表したファクトシートで、米中の両首脳が、対象となる新しい技術を「人工知能」ではなく「超知能 (super intelligence)」と呼ぶことで合意したと明らかにした。あわせて米中超知能 (SI) 対話を新設し、次の意見交換を 2026 年 11 月までに行うこと、SI に関わる事案を互いに知らせる二国間の連絡経路を設けることも決めた。
決まったのは呼び名と話し合いの枠で、能力の認定ではない。超知能と呼べる機械がすでに存在すると、どちらの政府も言ってはいない。それでも、国家どうしの文書で使う語が変わると、同じ技術を眺める角度は少し変わる。毎日使うチャットや翻訳の道具は、その変化とどう付き合えばいいのか。
ファクトシートに書かれた三つのこと
AI に関する記述は短い。一つ目が呼び名の合意で、両首脳は「該当する新興技術」を指す語として超知能を使うことにした。二つ目が米中超知能対話の新設で、SI に関わるリスクと便益について意見を交わす場とされ、次回は 11 月までと期限が付いている。三つ目が、SI 事案のための二国間の連絡経路だ。
書かれていないことも多い。何をもって「SI 事案」とするのか、定義はファクトシートにない。どの省庁が窓口を担うのか、連絡の中身が公表されるのかも示されていない。会談の成果として並んだ項目の多くは薬物対策と貿易の枠組み、戦略的な安定に割かれていて、AI はその一つにとどまる。
習氏の言葉は「人工知能」のまま
呼び名の合意は米側の文書に載ったものだ。中東の放送局 Al Jazeera によれば、ホワイトハウスの発表に対して北京からの即時のコメントはなかった。同局が伝えた習氏の発言は、両国を人工知能の先導国と位置づけ、AI を善のために発展させ管理する能力と責任を共有していると述べるもので、語は人工知能のままだった。習氏はさらに、両国の競争は互いに追いつき合う競走であり、どちらかが勝ってどちらかが負ける組み合いではない、という趣旨を語っている。
同じ会談を、一方は超知能と書き、もう一方は人工知能と語った。どちらの語が両国の公式文書に残っていくかは、11 月の対話の記録で見えてくる。
呼び名が変わっても、手元の道具は変わらない
暮らしの側から見ると、今回変わったものはない。使っている AI アシスタントの性能が合意で上がるわけではなく、新しい規制がかかるわけでもない。国家間の連絡経路は、個人が何かを届け出る窓口でもない。
変わりうるのは、ニュースの読まれ方だ。政府の文書が「超知能事案」と書き始めれば、報道もその語を引き継ぐ。そのとき超知能が指しているのが手元のチャットの延長なのか、まだ存在しない段階の機械なのかは、見出しからは分からない。定義が出ていないうちは、語の強さと中身の大きさを切り離して読むほうがいい。
もう一つは、自分の道具の置き場所だ。国家が同じ技術群を超知能という語でくくり、リスクを話し合う対象にしたことで、仕事や家計の相談に使う AI もその枠の端に入った。使うのをやめる理由にはならない。ただ、何を任せて何を任せないかを自分で決めておく意味は、少し重くなる。一方で、ここで急いで線を引き直すと、定義が出たあとにもう一度引き直すことになる。いまは書き出しておくだけでも足りる。
11 月までに確かめられること
次の SI 対話は 2026 年 11 月までに開かれる。そのとき、ホワイトハウスのファクトシートと中国外交部の発表の両方で、二点を見ればいい。一つは「SI 事案」の定義が示されるかどうか。もう一つは、対話の成果文書が超知能と人工知能のどちらの語で書かれるか。定義が出れば、見出しの超知能を中身で読めるようになる。出なければ、呼び名だけが先に歩く状態が続く。
ことば
- 超知能 (super intelligence) — 一般には、人間の知能を幅広い分野で上回る段階の AI を指す語。今回の合意では、米中の文書で対象の技術をまとめて呼ぶ語として採用された。能力の到達を認めたものではない。
- 米中超知能 (SI) 対話 — 今回新設された両国の協議の場。超知能に関わるリスクと便益について意見を交わすとされ、次回は 2026 年 11 月までに開かれる。参加する省庁や議題の範囲はまだ示されていない。
- 二国間の連絡経路 — SI に関わる事案が起きたときに、米中が互いに知らせ合うための経路。何を事案とみなすのか、誰が窓口を担うのかは公表されていない。
国家が超知能と呼び始めた技術を、あなたは明日も同じ手つきで使うだろうか。それとも一度、任せている範囲を書き出してみるだろうか?