SpaceXが8月7日、13号機のスターシップをインド洋から回収する作業がまだ続いていると投稿した。荒れていく海の中で、52メートルの機体を港へ誘導しようとしている、と。同じ日、マスク氏は回収の見通しは今のところ良くないと述べている。降りることには成功して、持ち帰るところで詰まっている。使い終わったものを取り戻すのに、どこまで払えるのか——という問いが、ここには裸で置かれている。
浮いていることと、持ち帰れることは違う
13号機が飛んだのは7月24日。上段はインド洋、西オーストラリア沖に着水した。着水の衝撃を越えて機体が壊れずに残ったのは異例で、そこから3週間近く、機体は浮いたままだ。
SpaceXの説明では、回収チームは厳しい条件と、しだいに荒れていく海の中で、52メートルの機体を港まで誘導しようとしている。マスク氏の言い方は「今のところ良くない」。
一つの作業に見えるが、中身は別々の工程だ。狙った海域にやわらかく降ろすことと、浮いているものを海の上で曳いて港に入れることは、要る技術も、失敗する理由も違う。前者は設計と制御の問題で、後者は天気と海と時間の問題になる。
浮いていることと、持ち帰れることは違う。
すでに取り戻せているのは、機体ではなく情報
同じ発言の後半でマスク氏は、耐熱シールドとエンジンの重要な部分について近接写真を得られた、今後の改良に使う、と付け加えている。
これは順番として見ておく価値がある。機体が港に着くかどうかはまだ分からないが、見て分かることのほうは、海の上ですでに手元に入っている。仮に曳航が失敗して機体を失っても、その部分は失われない。
裏返すと、回収の目的が最初から一つではなかったということでもある。物としての機体をもう一度使うことと、その機体から次の設計に効く手がかりを取ることは、別の収穫だ。前者は港まで運びきらないと成立しないが、後者は途中でも取れる。
なお、この回収にどれだけの費用と時間がかかっているのかは、今回の発表からは分からない。成否も、この記事を書いている時点では確定していない。
手元のものに置き換えると
「使い捨てをやめる」という言い方は、作り直さない分だけ安く済むように聞こえる。実際には、取り戻す側にも別の費用がかかる。
壊れた家電、動かなくなった自転車、一度使った資材。直して使うと決めた瞬間に発生するのは、引き取りに行く手間、それを置いておく場所、分解する道具、手が空く時間、そして「直せるか分からないまま抱える」という不確かさだ。作るコストと取り戻すコストは、別の財布から出ていく。
向かない条件もはっきりしている。置き場所がない、部品がもう手に入らない、開けても何が悪かったのか読めない——このどれかに当たると、手元に残るのは物だけで、分かったことは増えない。今回の洋上作業と同じで、難しいのは着地ではなく、そのあとの搬送と置き場のほうだったりする。
だから切り分けが効く。取り戻したいのは物そのものなのか、それとも壊れた理由のほうなのか。後者なら、直さずに開けて眺めるだけで足りることがあるし、そこで分かったことは次に買うものの選び方を変える。取り戻さない、という判断も同じ台の上にある。
あなたの手元にも、捨てるか直すか決めかねているものが一つはあるはずだ。取り戻したいのはその物だろうか、それとも壊れた理由のほうだろうか?