Qwenが8月、最上位クラスのモデルの重みをHugging Faceで公開した。Qwen3.8-2.4T-A95B。総パラメータ2兆4000億、うち一度に動くのは950億という構成だ。モデルカードには「Qwen-Max級のモデルをオープンで出すのは初めて」と書かれている。ただし、開いた中身を見ていくと「ダウンロードできる」と「自分で動かせる」のあいだには、まだかなりの距離がある。
開いたのは「テキストだけのMax」だ
語の範囲を絞っておきたい。公開されたのはテキスト専用の版で、モデルカードは「Qwen3.8-2.4T-A95Bはテキスト専用モデルで、すべてのやりとりに思考モードを必要とする。マルチモーダル入力は非対応」と明記している。画像を読む力と、思考モードを切って使う選択肢は、有料のQwen3.8-Maxの側に残された。
思考モードを切れないのは、使い勝手にそのまま効く。どんな短い質問でも、返答は必ず推論から始まる。速さや出力量を自分で削る余地が、その分だけ狭い。
コンテキストは標準で26万2144トークン、拡張して101万トークンまで。構成は512人の専門家から毎回11人だけを起こす方式で、2兆4000億という総量に対して実際に動くのは950億にとどまる。
4.89TBは、個人の機械には入らない
リポジトリのファイル一覧を見ると、重みは213個に分割されて置かれていて、合計は4.89TB。1個あたり34.4GBのものが並ぶ。
この時点で、家にあるパソコンに置くという話ではなくなる。動くのが950億パラメータ分でも、そのつど別の専門家が呼ばれる以上、2兆4000億の全体をいつでも取り出せる場所に置いておく必要がある。外付けドライブを足せば保管はできても、実用的な速度で読み出せるかは別の問題だ。
つまり、開かれた重みを実際に動かすのは、当面は設備を持っている側になる。個人が触るとしても、誰かがホストしたものを経由することになる。
ライセンスは、標準のオープンソース形ではない
ここも正確に見ておきたい。付いているのは汎用のオープンソースライセンスではなく、qwen3.8-maxという固有の条件だ。
使う・複製する・改変する・再配布する・微調整する・派生物を作ることは認められている。そのうえで条件が二つ付く。月間利用者1億人超、または月商2000万ドル超の製品で使う場合は、画面にモデル名を目立つ形で表示すること。モデル提供事業やAI業務アシスタント事業で、連続する12か月の売上が5000万ドルを超える場合は、使用前にQwenから別途ライセンスを取得すること。
個人や小さな事業の手元では、この二つはまず引っかからない。それでも「オープン」の一語で片付けると見落とす部分ではある。条件付きで開いている、というのが実際のところだ。
開いていることは、誰にとっての保険なのか
手元で動かせないなら、開いたことに意味はないのか。そうとも言い切れない。
重みが外に出ているモデルは、提供元が値上げしても、方針を変えても、サービスを畳んでも、そこで消えない。誰かが引き受けて動かし続けられる。使う側から見ると、選べる相手が一社ではなくなるということだ。今日の自分が動かせるかどうかとは別に、明日その選択肢が残っているかどうかが変わる。
一方で、それは他人の設備を前提にした保険でもある。手元にあるのは「いざとなれば誰かが動かせる」という条件であって、自分が動かせる状態ではない。自分の暮らしのどこまでを、外に置いたAIに預けているのか。預けた先が明日変わったとき、乗り換える先は残っているのか。
あなたが使っているAIは、提供元がやめたとき、どこへ引き継がれるだろうか?