Artificial Analysis が Qwen3.8-27B に52という数字を付けた。同社の Intelligence Index v4.1.1 で、比較対象となるモデル群の中央値は9とされている。重みは公開されていて、ライセンスは Apache 2.0。つまり誰でも落として、自分の機材で動かして、商用にも使える。
外のサービスに預けずに済む範囲がどこまで広がるかは、手元に置ける大きさのモデルがどれだけ使えるかで決まる。27B はその「置ける側」に入る大きさだ。そこに、上位帯に見える数字が付いた。
見ておきたいのは一点だけだ。この52は、自分の使い方の何を保証しているのか。
まず、52 と 9 が比べているもの
指数の中身は公開されている。v4.1.1 は9つの評価を4分野に配分した加重平均で、エージェント的な作業が34%、コーディングが24%、科学的推論が24%、一般が18%。重心はエージェント寄りだ。
そして、同社は但し書きを明記している。この指数は「テキストのみ・英語での評価」であり、多言語と視覚の能力は別枠で測る、と。
これが効く。Qwen3.8-27B はモデルカードで画像と動画を理解する視覚言語モデルだと説明されているが、その部分は52には入っていない。日本語で使ったときの実力も同じく入っていない。
中央値9のほうも、母数の取り方で動く数字だ。ページは同クラスの重み公開モデルの中で1位(135件中)としている。何と比べた中央値なのかを外して「9倍賢い」と読むと、測っていないものまで含めてしまう。
52は「英語のテキストで、主に道具を使わせる型の作業をさせたときの位置」だ。それ以上でも以下でもない。
27B は、手元に置ける大きさなのか
構成は dense で、一部だけを起こす方式ではない。使うたびに全体が動く。安定して読める代わりに、必要な分は最初から必要になる。
配布形式は BF16 で、パラメータ数は28B と表示されている。1パラメータあたり2バイトなので、重みだけで50GB台になる。量子化して落とすことはできるが、落とした分だけ出力も変わる——そのモデルは、もう52を測ったモデルと同じものではない。
モデルカードは必要なメモリ量を書いていない。書いてあるのは、実運用には SGLang や vLLM といった専用の配信基盤を使え、ということのほうだ。個人の1台で回す前提の説明にはなっていない。
文脈の長さも同じ向きに効く。標準で262,144トークン、拡張して100万トークンまで対応するが、長く読ませるほど必要な分は増える。上限は「使える長さ」であって「気軽に使える長さ」ではない。
置ける大きさであることと、いま自分が持っている機材で動くことは、別々に確かめるしかない。
数字が測っていない側
Artificial Analysis のページで、出力速度は N/A、価格は入力・出力とも $0.00 と表示されている。比較対象群の中央値が入力$0.04・出力$0.15であることを思えば、この $0.00 は「安い」ではなく「値札の付く相手がいない」という意味に近い。重みを持ってきて自分で動かすなら、値段の欄には代わりに機材と電気と手間が入る。速さについては、まだ測られた数字がない。
設定の幅もある。思考モードは既定で入っていて、リクエストごとに切れる。推論にどれだけ手間をかけるかも段階で選べる。どの設定で52が出たのかを自分の側で揃えない限り、同じ数字が自分の手元で再現するとは限らない。
ライセンスは Apache 2.0 だ。ここは条件が少ない。使う、改変する、再配布する、商用に使う——追加の売上条件や表示義務は付いていない。開いている部分については、はっきり開いている。
自分の手元で確かめる順番
順番があるとすれば、こうなる。
最初は、自分がさせたい作業が指数の測った範囲に入っているかどうかだ。日本語で書かせたいのか、画像を読ませたいのか、道具を使って作業を進めさせたいのか。3つ目なら52は参考になる。前の2つなら、その数字は自分の用途をまだ何も言っていない。
次に、どこで動かすか。自分の機材に置くのか、誰かがホストしたものを経由するのか。後者なら、重みが公開されていることの利点は「いざとなれば別の誰かが動かせる」という保険の側に寄り、手元の自立という話からは少し離れる。
最後に、代償のほうだ。自分で持てば、更新も、壊れたときの復旧も、電気代も自分にかかる。誰にも止められない代わりに、誰も直してくれない。それが手元に置くという取引の中身で、賢さの数字はその取引を軽くしてくれない。
分かっていないことも残る。日本語での実力は、公開された数字からは読めない。速度も同じだ。どちらも、自分の用途で自分が測るまで分からないままになる。
手元で動かしたいモデルに、あなたは何をさせるつもりで、それは誰かが測ってくれた数字の中に入っているだろうか?
参照
- Artificial Analysis — Qwen3.8 27B(Intelligence Index v4.1.1 で52・比較対象の中央値9・同クラスの重み公開モデルで135件中1位・出力速度 N/A・価格$0.00と中央値$0.04/$0.15・256kの文脈・Apache 2.0)
- Qwen3.8-27B モデルカード(dense 構成・BF16 で28Bパラメータ表示・画像と動画を理解する視覚言語モデル・262,144〜100万トークン・思考モードの既定と切り替え・推奨される配信基盤)
- Artificial Analysis 評価方法(v4.1.1 の9評価と分野別の配分・「テキストのみ・英語での評価」という但し書き)