国税庁は2026年9月24日、基幹システムをKSK2へ更改した。副業や暗号資産の取引がある人は、申告額の根拠となる記録を整理するきっかけにしたい。今回の変更には、申告書の様式や電子通知の受け取り方など、次の手続に直接関わるものもある。
申告額を確かめられる記録を持つ
KSK2は、税目ごとに分かれていたデータベースや業務システムを統合し、データを中心に税務の仕事を進めるための基盤だ。SNSでは、無申告や「所得ゼロ」の申告が必ず見つかるといった強い表現も広がる。しかし、今回確認した国税庁の資料には、個々の申告を必ず検出できるという説明はない。
自分の備えとして着手しやすいのは、売上や経費を後から確かめられる状態にすることだ。副業の入金が複数のサービスに分かれているなら、請求内容、入金日、サービス側の明細を照合できる場所にまとめる。現金で受け取った報酬も、相手先や仕事の内容を思い出せるうちに記録しておくと確認しやすい。
たとえば、仕事の報酬が手数料を差し引かれて振り込まれた場合、通帳だけでは請求額と手数料の内訳を説明しにくい。請求書とサービスの明細を一緒に参照できれば、入金額との差をたどれる。これは記録を整理するための例であり、所得区分や個別の経費の扱いを決めるものではない。
法令上の記帳・保存義務は、自分の所得や書類の種類に応じて確かめる必要がある。国税庁は、事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行う個人について、所得税の申告が必要ない場合も記帳・保存の対象になると案内している。すべての副業に同じ義務や保存年限が当てはまると、一括りにはできない。
「今年は利益がなさそう」という見込みがあっても、その数字を何で確認するかは考えておきたい。申告の要否や所得の区分が分からないときには、税務署や税理士へ、記録を示しながら確認できる形にする。
暗号資産は報告書と取引履歴をつなぐ
暗号資産を取引しているなら、利用したサービスを一覧にするところから始められる。国内の交換業者、国外のサービス、自分が管理するウォレットに分かれた記録を、どこから取得できるか確かめておく。
国税庁は、国内の交換業者が交付する年間取引報告書を使った所得計算を案内している。手元にない場合には、交換業者へ再交付を依頼できる。国外のサービスや個人間取引については、取引履歴、銀行の入出金、取引相場などで取得価額や売却価額を確認する方法が示されている。
ここで残しておきたいのは、資料同士をたどるための手掛かりだ。取引日時、数量、円換算に使った根拠、手数料、移動先のサービスなどを、元の履歴と結び付けられる形で整理する。履歴を出力できるうちに保存し、所得計算に使ったファイルと元の資料を区別して持っておけば、後で数字を直す際にも確認しやすい。
年間取引報告書は、利用者が計算に使う資料だ。その存在だけから、KSK2が国内の全利用者の取引を自動的に取得しているとは判断できない。また、あるサービスの報告書だけで、別のサービスやウォレットを含む自分の取引全体が説明できるかは、個別に確かめる必要がある。
資料がそろっても、自分で判断しにくい取引は残る。そうしたものは、疑問の内容と関係する履歴を一緒にまとめて相談する。根拠が分からないまま数字だけを確定させるより、確認が必要な箇所を見える状態にしておく方が作業を進めやすい。
次の手続では様式と受け取り方を確認する
今回の更改には、一般の利用者が目にする変更も含まれる。一部の紙の申告書、申請・届出書、法定調書は様式が変わり、申告書の控用もなくなった。以前に保存した用紙を使う際には、国税庁の案内で最新の様式を確認したい。
電子通知を希望する人には、受け取り設定の確認も必要だ。処分通知等の電子交付は対象が拡大し、同意方法が原則として事前の一括同意に変わった。以前から電子交付を利用していた人も、e-Tax上で一括同意の手続が必要になる。
一部の手続には別の扱いがあるため、過去の設定がそのまま使えると決めず、自分が利用する通知について公式案内を確認する。提出に使った資料、送信内容、受け取った通知を後から探せる場所にまとめておくと、手続が終わったかどうかも確かめやすい。
こうした確認は、記録を大量に増やす作業にしなくてもよい。副業の売上なら請求から入金まで、暗号資産なら取引履歴から所得計算まで、税務手続なら提出から通知まで。自分がどこを見れば確認できるかを決めておく。
納税証明書は申請前に最新情報を見る
直近で納税証明書が必要な人には、導入時の遅れも関係する。国税庁の9月29日更新の通知では、現金領収や納税証明書の交付など、窓口の各種手続に時間がかかる状況が示されていた。e-Taxで請求しても即座に交付できず、電子交付を希望しても書面になる場合があるという。
国税庁は、電子申請をする場合、e-Taxのマイページの基本情報に電話番号を登録するよう案内している。税務署から連絡が必要になるためだ。提出先の期限があるなら、電子申請した時点で書類が間に合うと見込まず、処理状況を税務署へ確認する必要がある。
さらに、e-Taxの9月30日更新の通知では、9月24日から28日までに納税証明書の手数料納付のお知らせがメッセージボックスに入った人は、引き続きインターネットバンキングで手数料を払えないとされた。急ぐ場合には、その事情を税務署窓口で伝えるよう案内されている。
この案内は納税証明書の手数料に関するものであり、税金の納付全般ができないという話ではない。影響のある手続と期間を確かめることが、自分の予定への影響を判断する助けになる。
復旧状況は変わるため、次に証明書を申請する前に、国税庁とe-Taxのお知らせを確認したい。過去の投稿や「復旧した」という短い説明だけでは、自分の申請が対象に含まれるか判断しにくい。
記録を自分のためにも使える形にする
副業の明細や暗号資産の履歴が整理されていれば、確定申告の準備に加え、仕事の採算や手元のお金の動きも確かめやすくなる。取引の件数が増えてからまとめて思い出すより、日々の記録と計算の根拠をつないでおく方が、必要な確認を小さく区切れる。
税務のデジタル化が進んでも、自分の取引の意味を説明する作業は残る。まず、まだ手元にない明細や履歴を一つ選び、取得方法を確かめる。申告が必要か判断する材料はそろっているか。次の手続で受け取る通知を見つけられるか。今の記録の持ち方で答えられるところから、備えを組み直していきたい。
ことば
KSK2:国税庁の次世代基幹システム。税目別の業務システムなどを統合し、データ中心の事務処理を進める。2026年9月24日に更改され、利用者向けの様式や手続にも一部変更が生じた。
年間取引報告書:暗号資産の交換業者が利用者へ交付する資料。購入・売却の数量や金額などを確認でき、所得計算に利用する。利用した他のサービスや取引の記録も併せて確かめる必要がある。
電子交付:税務署からの処分通知等をe-Taxで受け取る仕組み。対象や同意方法が変更され、以前から利用していた人も原則として事前の一括同意が必要となる。一部の手続には別の扱いがある。