9月1日、無人タクシーをめぐる発表が二つ同じ日に並んだ。Waymo はデンバー、サンディエゴ、タンパで一般の乗客を乗せ始め、これで14都市になった。Zoox はヒューストンとサンディエゴで走行試験に入り、拠点は12になった。数字だけを並べると、同じ「拡大」に見える。だが中身は、まったく違う段階の話だ。呼べる場所が増えるより先に動くのは、たぶん台数のほうだ。
14と12は、同じ物差しの数字ではない
Waymo の発表は公開乗車の開始で、運転席に人はいない。公式ブログは「14都市で完全自動の移動を提供している」と書いている。ただし全員がすぐ乗れるわけではなく、「順次より多くの人に開放し、すべての人に開くことを目指す」という段階的な進め方だと明記されている。
Zoox のほうは走行試験だ。車には保安要員が乗り、改造した試験車で街を走って地図を作る段階にある。報道によれば、同社が乗車料金を取っているのは現時点でラスベガスだけで、サンフランシスコなど他の都市では無料での提供にとどまる。
片方は「もう乗れる」、もう片方は「これから測る」。拠点の数だけを数えると、この差は消える。
都市の数より、台数のほうが生活に効く
新しい3都市は、それぞれ数十台から始まり、時間をかけて数百台へ増やすとされている。車両は全体で4,000台を超えるが、デンバーとサンディエゴで乗れるのは新型の Ojai だけで、この車種は300台ほどしかない。
数十台という規模は、都市の広さに対してはほとんど点だ。呼んでも来ないなら、それは選択肢として成立しない。生活の前提が動くのは、都市がひとつ増えたときではなく、待ち時間が「たまたま空いていれば」から「だいたい来る」に変わったときだろう。閾値は台数の側にある。
それでも、順番だけは先に動いている
Waymo は各都市で数万人がすでに登録している、と書いている。段階的な開放なので、登録したから乗れるという意味ではない。
ただ、この数万人は「車を買うかどうか」という問いの手前で動いている。使えるかどうか確定しないうちから、選択肢として並べておく人がこれだけいるということだ。所有をやめる決断より、所有しない可能性を残しておく行動のほうが先に起きる。
日本から見ると、まだ距離がある
ここまでは全部アメリカの話だ。日本で同じ選択肢が並ぶ時期については、どちらの発表にも書かれていない。だから今日の話は「乗るかどうか」の判断ではない。
代わりにできることがあるとすれば、自分の移動を先に数えておくことだと思う。1週間で車を出した回数。そのうち、片道15分以内でひとりだった回数。維持費を月あたりに直した額。この三つが手元にあれば、選択肢が届いたときに考え直す材料になるし、届かなくても損はしない。
逆に、数えても答えの出ないものもある。急に必要になる移動、大きな荷物、家族の予定、公共交通の細い地域。台数が増えても、そこは埋まらないかもしれない。数十台が数百台になっても、埋まらないままの部分は残る。
あなたが車を持っている理由のうち、何台分が置き換わったら、その理由は変わるだろうか?