Runway が 8 月 31 日、Solaris という研究成果を公開した。同社が Interface World Model と呼ぶ新しい種類のモデルで、操作画面そのものを、あらかじめ書かれたコードではなく、一枚ずつのフレームとして生成する。ボタンを押すという入力も、次のフレームを決める条件として扱われる。
言い方を変えると、アプリを開いているのではない。目の前の画面が、そのつど描かれている。ここで変わるのは見た目の速さではなく、道具というものの在りかだ。これまで手元にあった「同じ画面」は、生成される側に移る。
何を作ったと書かれているのか
公式の記事によれば、Solaris は中間のコード表現を持たない。ひとつのモデルがすべてのフレームと、入力への反応を生成する。画質は 720p で成立するとされ、遅延については、およそ 0.5 秒を超えると人は対話だと感じなくなる、という一般的な線が示されている。
比較の結果も載っている。250 人が 30 の例について 7,500 回の対比較を行い、指示どおりに動くかでは Solaris が 61%、コードで作られた側が 24%。自然な振る舞いに見えるかでは 71% と 21% だった。数字としては大きい。ただしこの調査を設計し実施したのは開発元であり、第三者が同じ条件で回した結果ではない。
「アプリを開く」が消えると、何が一緒に消えるか
生成された画面には、元になるコードがない。ここが今回の本題だと思う。
私たちが道具を長く使えてきたのは、同じ操作をすれば同じ結果が返るからだ。手順を紙に書いて誰かに渡せるのも、去年の設定を今年も再現できるのも、画面の裏に固定されたものがあるからだった。フレームとして描かれる画面は、その固定を前提にしない。
家の中の道具に置き換えると分かりやすい。取扱説明書のある道具と、使うたびに形が少し変わる道具では、覚え方が違う。前者は覚えれば終わりだが、後者は毎回確かめることになる。速さでは後者が勝つ場面もある。それでも、他人に渡す・数年後に自分が戻る、という使い方には向かない。
開発元が自分で挙げている難しさ
公式の記事は、未解決の点を隠していない。安定して読める文字の生成は最も難しい問題のひとつだと書かれている。長く開かれた操作のあいだ、見た目と意味の一貫性を保つことも、まだ研究途上だとされる。商用で使うには、もっともらしく作られてしまう内容への信頼の問題が残るとも書かれている。
そして、読み上げソフトなどのアクセシビリティとの統合はまだ入っていない、と明記されている。画面が生成物になるということは、画面の構造を読み取って別の形に変える仕組みが、そのままでは働かないということだ。ここは性能が上がれば自然に解決する種類の話ではない。誰かが締め出されるかどうかは、設計として決められる。
また、いま触れるのは申し込みによる早期アクセスで、誰でも使える段階ではない。
生成される道具と、残る道具を分ける
それでも、この方向が全部だめだという話ではない。一度きりの用事には、生成される画面のほうが速い。名前のない小さな作業、その場限りの比較、道具を探すより作ったほうが早いもの。ここは素直に恩恵がある。
分けたほうがいいのは、繰り返すものと、他人に渡すものだ。毎月同じ手順でやる家計の整理、道具の手入れの記録、誰かに引き継ぐ予定のある作業。ここは、再現できる形で持っておく価値が今も残る。何がどこに保存されるのか分からない画面の上でやると、便利さの代わりに継承を失う。
ソフトウェアはこの数年、手元に置くものから、向こう側で動くものへ移ってきた。生成される画面は、その先にある。移った先で何を失うかは、移ってからでは測りにくい。
あなたが毎日触っている画面のうち、来年も同じであってほしいものは、どれだろうか?