9月2日、Alibaba の Qwen が最上位モデルの更新を出した。Qwen3.8-Max-0902。2.4兆パラメータ、100万トークンの文脈長、料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドル。ただし更新の告知が出たのは、借りて使う側だけだ。同じ2.4兆という数字を持つ重みは8月に配布されているが、そちらに同じ告知は並んでいない。同じ名前で呼ばれる二つのものの距離が、静かに開いた。
「2.4兆」は、いま二つある
まず語を分けたい。今回上がったのは QwenCloud の API で提供される Qwen3.8-Max-0902 で、モデルページには100万トークンの文脈長を維持し、最大出力は13万1千トークンと書かれている。料金は入力2ドル・出力6ドル、明示的なキャッシュからの読み出しは0.17ドル。落として動かす形では提供されていない。
もう一方は Qwen3.8-2.4T-A95B。8月に公開された重みで、モデルカードでは総パラメータ2.4兆・実際に動くのが950億、標準の文脈長は26万2,144トークンで最大101万トークンまで伸ばせるとされる。テキスト専用で、すべての応答に思考モードが必要。ライセンスは Apache でも MIT でもなく、qwen3.8-max という独自のものだ。
数字も名前もよく似ているが、同じものではない。
上がったのは、借りる側だった
公式の投稿によれば、今回の更新はコーディングと Cowork の領域で追加の学習を行ったもので、複雑な業務や科学研究、長い工程の作業で性能が上がるとされる。ベンチマークの数値は添えられていない。告知の締めくくりは「QwenCloud の API で利用可能」であり、重みの配布については触れられていない。
つまり「無料で落とせる」ことと「同じものが手に入る」ことは、もう自動的には重ならない。落とせる側が最新かどうかは、そのつど確かめる話になった。
値段が書いてある側と、書いていない側
借りる側のコストは明示されている。100万トークンで入力2ドル・出力6ドル。キャッシュが効けば読み出しは0.17ドルまで下がるので、同じ長い資料を何度も投げる使い方ほど差が出る。使う前に見積もれる。
手元で動かす側のコストは、値段では書かれていない。2.4兆パラメータの重みは、個人が持つ一枚のグラフィックカードには載らない。実際に動くのが950億だとしても事情は変わらず、複数のカードか、それに相当する計算機を前提にした数字だ。個人が現実に自分の機械で回しているのは、これよりずっと小さい層のモデルになる。
制約もついてくる。テキストしか扱えず、思考モードを切れない。ライセンスは独自のもので、使う前に自分の用途がその範囲に入るかを読む必要がある。落とせることは、自由に使えることと同じではない。
選ぶ基準が、賢さから場所へ移る
こうして並べると、選択は「どちらが賢いか」だけでは決まらなくなる。
借りる理由ははっきりしている。新しい学習が入っている、長い文脈をそのまま渡せる、環境を自分で用意しなくていい。手元に置く理由も同じくらいはっきりしている。外に出したくないものがある、相手の都合で仕様や値段が変わらない、向こうが止まっても自分の作業は止まらない。
どちらが正しいという話ではない。ただ、この二つが同じ名前で呼ばれているせいで、比べているつもりで比べていないことが起きる。「Qwen3.8 を使っている」と言ったとき、それが更新されうる遠くの計算機なのか、自分の機械の中で固定された重みなのかで、話はまったく違う。
まだ分かっていないこともある。今回の更新で性能がどれだけ動いたのか、公表された数値はない。配布される重みの側が今後どう追いつくのかも書かれていない。
あなたが次に何かを AI に任せるとき、選んでいるのは賢さだろうか。それとも、それが動いている場所だろうか?