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バチカンは「発電か、農業か」を選ばなかった——サンタ・マリア・ディ・ガレリアの畑の上で、国全体の電気をまかなう

バチカンがサンタ・マリア・ディ・ガレリアの畑の上に、国全体の電気をまかなう営農型の太陽光発電所を建てる。公式文書で確かめられることと、関係者情報にとどまる数字を切り分けて読む。

バチカンは「発電か、農業か」を選ばなかった——サンタ・マリア・ディ・ガレリアの畑の上で、国全体の電気をまかなうのイメージ

この記事でわかること

  • 建設指示(2024年6月の自発教令)、イタリアとの協定発効(2026年5月27日)、Fratello Sole 財団の設立(同年6月)までは公式文書で確認できる
  • 1億ユーロ・80〜90メガワット・約200ヘクタールという規模はロイターが関係者の話として報じたもので、教皇庁の公式発表ではない
  • 律速はパネルではなく土地の法的な地位と行政手続き。日本の営農型でも、許可の前提は「営農を継続しながら」に置かれている

バチカンが、自国の電気をまかなう発電所を畑の上に建てる。ローマ北西郊のサンタ・マリア・ディ・ガレリアにある教皇庁の土地に、支柱で持ち上げた太陽光パネルを並べ、その下で農業を続ける「営農型」の設備だ。ロイターは8月22日、関係者の話として総額1億ユーロ・出力80〜90メガワットという規模を伝えている。

引っかかるのは規模ではない。土地を発電に使うか農業に使うかという二択を、そもそも降りたところだ。同じ選択は、畑を持つ人にも屋根を持つ人にも回ってくる。

公式に決まっていることと、まだ関係者情報のこと

まず切り分けたい。「バチカンが営農型の発電所を建てる」ところまでは、公式の文書がある。

2024年6月21日の自発教令『Fratello Sole』で、教皇フランシスコはサンタ・マリア・ディ・ガレリアの治外法権区域に営農型発電所を建てるよう指示した。目的は、そこにあるラジオ送信所の電力だけでなく、バチカン市国全体のエネルギーをまかなうことだと明記されている。土地の法的な足場もそろった。イタリアと教皇庁の協定は2025年7月31日に署名され、2026年5月27日に発効している。運営主体も決まっていて、2026年6月1日の自筆書簡で教皇レオ14世が「Fratello Sole 財団」を設立し、建設と財務を含む運営を担わせた。

一方、1億ユーロ・80〜90メガワット・450ヘクタールの敷地のうち約200ヘクタール・工期18〜24か月・数週間内に入札という数字は、ロイターが関係者の話として報じたもので、教皇庁の公式発表ではない。取材に対してバチカンは回答していない。数字はこの前提で読む。

「両方使う」を選ぶと、構造とお金がどう変わるか

営農型は、パネルを地面に敷かずに数メートル上げ、その下で作物を育てる。日陰で水の蒸発が減り、極端な気象から作物を守れる、というのが利点として説明される。

ただし、上げれば構造は重くなる。地面に並べるだけの設備に比べて支柱も基礎も強くしなければならず、同じ出力を出すのに費用がかさむ。土地を二重に使う代わりに、建てものとしては高くつく。

お金の条件もついている。ロイターによれば、バチカンは、イタリアの家庭や事業者が太陽光を導入するときに使える優遇を受けられない。全額を自前でまかなう前提の計画だ。

そして肝心の農業側の中身——何を作るのか、誰が耕すのか——は、まだ公表されていない。営農型の評価はここで決まる。パネルの下が耕され続けるかどうかが、この設備が「発電所」になるか「畑」であり続けるかを分ける。

一番時間がかかったのは、パネルではなかった

指示が出たのが2024年6月。協定の発効が2026年5月。財団の設立が同年6月。そして8月の時点で、まだ入札前だ。止まっていたのは技術ではない。土地の法的な地位と、行政の手続きのほうだった。工期として語られる18〜24か月にも、許認可と行政手続きが含まれている。

教皇が特別委員に与えた授権を思い出したい。現行の規定にかかわらず、いかなる認可も要さずに進められる、という強い言葉だった。国家に近い立場の主体が、自前の法体系の上でそこまでして道を空けている。

個人に、その近道はない。

自分の土地で、同じ選択が回ってきたら

日本にも同じ構造の制度がある。農林水産省は営農型太陽光発電を、簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立て、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行うもの、と定義し、農地の一時転用許可を受けて設置するものとしている。

読むべきは「営農を継続しながら」の一句だ。許可の前提は発電ではなく、農業が続いていること。発電が主で農業が従に反転した瞬間に、その前提は崩れる。細かい要件は農地法の側にあり、地域や作物によって変わるので、自分の土地の条件は自分で確かめるしかない。

そのうえで、選択肢は開いている。屋根に載せるのか、畑の上に上げるのか。使う電気を自分で作るのか、売るための設備として建てるのか。日陰に合う作物へ寄せるのか、いま作っている作物にパネルの高さと間隔を合わせるのか。上げるほど土地の自由は増えるが、そのぶん費用も増える。

バチカンは200ヘクタールを二重に使うことにした。その決定に要ったのは、パネルではなく、土地の法的な足場と、補助なしで払う覚悟だった。あなたの土地や屋根は、いま何に使われていて、同時に何ができるだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。