北京で開かれている第2回 世界ヒューマノイドロボット競技大会(World Humanoid Robot Games)で、Tiangong Ultra が400mを38.15秒で走った。当初は38.16秒と伝えられた数字だ。人類の世界記録はWayde van Niekerkの43.03秒(2016年リオ五輪)なので、5秒近く速い。100mでも9.39秒が出て、ウサイン・ボルトの9.58秒(2009年)を下回った。走り高跳びは2.88m、人の記録は2.45mだった。
数字だけ並べれば、人間は抜かれている。ただ抜かれたのは「決められた距離を、平らな床で、まっすぐ移動する」という一種類の能力だ。それが自分の家の中でどれだけ効くのかは、記録とは別に確かめる必要がある。
破られたのは、条件を固定した記録だ
まず範囲を絞りたい。大会は8月22日から26日まで、16か国から666チーム・2,056体が集まり、51種目・1,301試合が行われている。昨年は280チーム・約500体、26種目・487試合だった。一年で規模はおよそ4倍になった。
今年から400m・1500m・4×100mリレーは、遠隔操作も人の介入もなしで走ることが求められている。38.15秒は、人が横から操縦して出した数字ではない。そこは軽くない。
一方で、トラックは平らで、レーンは引かれていて、距離も終わりもあらかじめ決まっている。条件を固定すれば性能は出る。Lightningという機体は、大会前に研究者が脚を10cm伸ばしている。速く走るために体そのものを作り替えられる、そういう場所で出た記録だ。
止まり方も報じられている。走り終えた機体は、クッションに突っ込んで倒れることで停止した。柵に激突した機体、数歩で崩れ落ちた機体、発火した機体もあった。故障した機体は青い担架でトラックの外へ運び出されている。
家に要るのは、速さではない
家の仕事を思い浮かべると、速さがボトルネックになっている場面は意外と少ない。皿を洗う、洗濯物を畳む、床に落ちたものを拾う、棚の上のものを下ろす。どれも要るのは、毎回形の違うものを壊さずに掴むことと、人のそばで安全に減速して止まることだ。
床は平らとは限らない。段差があり、コードが這っていて、昨日と今日で物の位置が違う。終わりも決まっていない。400mは400m走れば終わるが、家の仕事は「これで終わり」を自分で判断するところまでが仕事になる。
そこに電池と排熱が乗る。ロボティクス投資家のXu Qiaosheng氏は、今年の競技強度が昨年より高く、機体の電池管理と排熱の能力に大きな要求を課していると述べている。全力の数十秒でそれなら、数時間続く家の仕事はまた別の課題だ。
会場にいた観客の一人は、これはただ走っているだけの速さの競争であって、知能の試験ではない、と語ったと伝えられている。
それでも、見ておく価値はある
批判で終わらせると見落とすものがある。平均で秒速10mを超える速度で二本の脚を動かし続けて転ばない、という制御は、競技場のためだけの技術ではない。姿勢を保つ、歩き方を切り替える、動きながら周囲を見る。この土台は、段差でつまずかない配達用の機体や、床のコードを踏んで倒れない家庭用の機体と地続きにある。
大会が公開の測定台として機能している面もある。誰がどこまでできるのかが、同じ条件で並ぶ。転んだことも発火したことも、同じ場所に記録される。
ただし現在地は、専門家が言うとおりだ。ヒューマノイドは今のところ実演・パフォーマンス・研究が中心で、実社会への大規模な展開にはまだ時間がかかる。今回の記録は、その時間が短くなったことを示すものではあっても、なくなったことを示すものではない。
自分の暮らしで、速さはどこに効くか
記録のニュースは、たいてい「いつ家に来るのか」という問いに変換されて読まれる。だが変換の途中で、何が測られたのかが落ちる。今回測られたのは、条件を固定した場所での移動の速さだった。
いずれ家庭用の機体を選ぶ段になったとき、見る数字はたぶん最高速度ではない。一回の充電で何時間動くのか。散らかった床や段差でどうなるのか。人がそばにいるときに、どう止まるのか。壊れたとき、誰がどれくらいの費用で直すのか。
今はその数字を並べて比べられるほど、家庭向けの選択肢は揃っていない。裏を返せば、機械の側が決まる前に、自分の側を先に決めておける時期でもある。何を任せたくて、何は自分の手でやりたいのか。
あなたの一日の中で、速さが足りなくて困っていることは、いくつあるだろうか?