SpaceX が 8 月 27 日、クリスマス島沖で Ship 40 を数日かけて調べたと発表した。耐熱シールドのサンプルを採取し、機体が再突入をどう耐えたかについて手がかりを得て、今後の機体に改良を反映する予定だという。機体はその後、半潜水船に積まれて数か月かけて Starbase へ戻る。飛ばして壊して終わりにせず、拾って測るところまでを 1 回の試験に含める。その手間の大きさのほうを見ておきたい。
「無傷で回収」ではない
まず語の範囲を絞る。この機体が「そのままの形で回収された初めての Starship 上段」と呼ばれるとき、意味しているのは 52 メートルの機体が散らばった破片にならなかったということで、傷がないということではない。海に落ちて 3 週間以上浮いていたものだ。
7 月 24 日の第 13 回飛行で、Ship 40 は実運用の Starlink 衛星 20 基を初めて放出し、宇宙空間でエンジンを 14 秒ほど再着火し、再突入を経て着水した。これまでの飛行と違ったのは、着水後すぐに爆発せず、1 つの機体のまま浮いていた点だ。
映像と数値の次に、現物が来た
着水直後、SpaceX の広報担当は「無傷の Starship を海に置けたのはこれが初めてだ」「耐熱シールドのデータを取ろうとしているチームにとっては夢のような状況だ」と述べていた。その言葉の中身が、1 か月後に回収作業として実現した。
耐熱シールドは、飛んでいる間の温度や映像からしか分からなかった。実物を切り出して手元で調べられるのは、性質の違う情報だ。どの層がどこまで失われたか、どう変質したかは、触れる形の破片からしか出てこない。
作って、飛ばして、壊して、拾って測る。この工程を最後まで通せるかどうかで、次の設計に何を書けるかが変わる。今回の発表が言っているのは、その最後の 1 つが初めてつながった、ということだ。
24 日、そして数か月
ただし、手間は正直に見たほうがいい。着水後、機体はおよそ 24 日にわたって海上にあった。8 月 7 日の時点でイーロン・マスク氏は回収の見通しが良くないと述べており、8 月 18 日にようやくクリスマス島沖へ導かれた。そこから数日かけて調査し、いま半潜水船の上で数か月の帰路にある。
1 機ぶんの現物を手にするのに、これだけの時間と船と人が要る。回収して測る開発が「普通のこと」になったわけではない。今回できたのは、条件が揃った 1 回だ。
拾いに行く価値があるものは、どれか
生活の側にすぐ跳ね返る話ではない。打ち上げが安くなるとも、頻度が上がるとも、この発表には書かれていない。この機体が再び飛ぶという発表もない。分かったのは 1 機ぶんの挙動と、そこから次の機体に何を変えるかを検討している、というところまでだ。
それでも、方法としては真似できる形をしている。うまくいかなかったものを、すぐ片付けずに残しておく。何が起きたのかを、記憶ではなく現物で確かめる。手間がかかるから、普通は飛ばされる工程だ。
手元の話に引き寄せるなら、失敗を残しておくにも場所と時間が要る、というところが要点になる。全部は取っておけない。24 日かけて拾いに行くだけの価値があるものと、その場で片付けてよいものの線は、あなたの場合どこにあるだろうか?