SpaceX が8月25日、フロリダのケープカナベラル宇宙軍基地からファルコン9を打ち上げ、スターリンク衛星29基を軌道に運んだ。1段目は大西洋上のドローン船「A Shortfall of Gravitas」に着地している。この1段目にとっては37回目の打上げと着陸で、同社は「ブースターとして初の37回目」と告知した。
数えているのは、今年の打上げ回数ではない。同じ1本の機体が何回飛んで何回戻ってきたか、という数だ。使い捨てを前提にしない設計が、実物でどこまで持つのかという話になる。
そして同じ SpaceX が、投資家向けの書類ではこの機体の寿命を25回と書いている。
37回を、5年で割る
この1段目は B1067 という機体で、就役は2021年6月だ。5年あまりで37回、平均するとおよそ7週間に1回のペースで飛び、戻り、また飛んでいる。記録の更新はこれが初めてではなく、今年6月にも自分の35回目で塗り替えている。
飛んだ中身も一様ではない。30回目を報じた記事は、それまでの経歴を「有人飛行2回、国際宇宙ステーションへの補給2回、スターリンク18回を含む」と書いている。人を乗せた機体が、そのまま貨物を運び、衛星を運び続けてきた。
記録を作っているのは、機体そのものというより、降りてきたものを点検して次に出す工程のほうだ。飛ぶことよりも、戻したものをもう一度飛べる状態に置くことのほうが、回数を決めている。
40回と、25回と、5回
SpaceX が米証券取引委員会に提出した目論見書には、こう書かれている。当社のファルコン9ブースターは40回まで飛行できるよう設計され、実証されているが、想定される稼働見込みに基づく見積もりとして、会計上の耐用回数は25回と定めている——。
工学上はそこまで持つと言いながら、帳簿では25回で使い切ったことにする。理由として挙げられているのは、スターシップへの移行で今後のファルコン9の需要が減ると見ていること、そして政府との契約のうち一部の任務では、5回を超えて飛んだ実績のあるブースターを使えないことだ。
つまり同じ1本の機体に、少なくとも三つの寿命がある。設計上の40回、会計上の25回、一部の契約では5回。どれも嘘ではなく、数えている人が違う。
機械の寿命は、機械だけでは決まらない。
手元の道具にも、同じ三つがある
これは軌道の話に見えて、そうでもない。冷蔵庫にも電動工具にも、蓄電池にも太陽光パネルにも、同じ三つの数字がついている。メーカーが保証する年数や回数。税や会計の上で定められた耐用年数。そして実際に使い続けられる年数。
三つはたいてい一致しない。そして直して使い続けるかどうかを決めているのは、多くの場合いちばん上の数字ではない。部品がまだ出るか、開けられるか、どこが壊れたか切り分けられるか、工賃が買い替えより安いか。そのどれか一つが欠けた時点で、まだ動く機械が使い終わったことになる。
SpaceX が37回を成立させているのは、捨てなかったからではない。降りてきた機体を検査し、整備し、次の打上げに載せるための設備と人を持っているからだ。手元の道具では、その工程が修理店と部品供給と自分の時間に置き換わる。再使用が成り立つかどうかは、そこで決まる。
差し引いておきたいこともある。37回は、生き残った1本の記録だ。同じ設計のブースターがすべて37回飛べるわけではなく、着地に失敗して失われた機体もある。最長記録は、平均寿命ではない。
どれを、直して使うと決めているか
区別は、たいてい買う時点でついている。分解できる構造か、部品の型番が公開されているか、10年後に交換部品が残っていそうな相手か。使い切る前提のものと、直して使い続ける前提のものを、たいていは意識しないまま同じ棚に並べて買っている。
決めておくと、壊れた日の判断が早くなる。直す前提のものなら、見積もりを取ってから考える意味がある。使い切る前提のものなら、壊れる前に次を見ておくほうが早い。どちらでもないまま壊れたときに、買い替えになる。
いま手元にある機械のうち、次に壊れたときは直すと決めているものは、どれだろうか?