OpenAI が 8 月 29 日、コード編集ツール Cursor との提携を終えると発表した。同社の提案どおりなら、Cursor から OpenAI のモデルへの直接アクセスは 11 月 12 日で切れる。きっかけは性能でも価格でもなく、SpaceX が Cursor を買収したことだ。毎日開いている道具の中身が、使っている本人の判断と関係のないところで入れ替わる——今回はその実例になっている。
期日を決めたのは、使っている側ではない
順を追うと、SpaceX は 6 月に 600 億ドルでの Cursor 買収を発表し、8 月に完了させた。OpenAI が提携終了を通知したのは、その数週間あとだ。理由として同社が挙げたのは、イーロン・マスク氏の企業が契約に違反してきた経験から、SpaceX が自社の利用規約の範囲で技術を使うと確信できない、という趣旨の説明だった。大口の提携契約には、支配権が移ったあと一定の期間だけ解約できる条項が入っていたと報じられている。ここまでの経緯は、OpenAI 自身の告知そのものは公式一次ソース未確認のまま、複数報道が一致している範囲で書いている。
規模は正確に置きたい。Cursor の共同創業者マイケル・トゥルーエル氏は、OpenAI のモデルは Cursor 全体の利用のうち 5% ほどだと述べ、解決に向けて OpenAI と話していると説明した。Anthropic は同じタイミングで、Cursor 向けに Claude の対応を広げると表明している。Cursor が明日止まる、という話ではない。
それでも、その 5% の中に自分がいるかどうかは、自分にしか分からない。
「一番賢い」の隣に、もう一つの軸が並ぶ
道具を選ぶとき、これまで見ていたのは主に機能と価格だった。今回はその手前にもう一段ある。使っている道具が、どの会社のモデルを、誰と誰の契約で呼んでいるか。その契約は、自分の使い方とはまったく無関係に終わりうる。
11 月 12 日以降も GPT を使い続ける道は残ると報じられている。自分で OpenAI の API キーを取って登録する方法、OpenAI 自身が出している拡張を使う方法、Claude や Gemini に切り替える方法。ただし、どれも無料ではない。API キーを自分で持つと、支払いは月額のまとまった枠から使った分だけの従量に変わり、たくさん使う人ほど高くつきうる。
手元で動く公開された重みを使う、という選択肢もある。こちらは他社同士の合意に依存しないが、動かす機械が要るし、同じ答えが返る保証もない。「止められない」と「一番賢い」は、いまのところ別の性質だ。
今日のうちに確かめられること
まず、いま使っているツールの設定画面を開いて、モデルの一覧を見る。どの会社の名前が並んでいて、そのうちどれを実際に選んでいるか。ここを見ないまま既定のまま使っている状態が、いちばん外から動かされやすい。
次に、乗り換えの深さを測る。移すのはモデルだけか、それとも蓄積した設定や書き方の規則、履歴も一緒か。道具を替える手間の大半は、後者にある。
そして、急がなくていい条件も同じ場所に置いておく。5% の側にいないなら、今回は何もしなくていい。交渉は続いていて、11 月 12 日は提案された期日であって確定した終わりではない。慌てて環境を移し替えて、いま動いているものを壊すほうが高くつくこともある。
道具は機能で選ばれ、供給で止まる。あなたが毎日開いているその道具は、いま誰の判断で止まりうるだろうか?