テスラの蓄電池部門 Tesla Energy が10月8日(米国時間)、カリフォルニア州の家庭用蓄電池 Powerwall 8万5,774世帯分が10月6日の夕方に一斉に放電し、送電網へ最大601MWを送ったと発表した。同社は「Powerwall の VPP として過去最大」と書き、9月の記録を1か月たたずに塗り替えたとしている。
1世帯あたりにならすと、ピーク時の出力は約7kW、送った電気の量は約11kWhになる。停電への備えとして家に置いた電池が、地域の夕方の電気を支える部品としても数えられ始めている。自分の家の電池を、誰に、いつ使わせるのか。その判断に要る材料を整理する。この件は速報で第一報を出している。
601MW は、参加した電池だけの数字
Tesla Energy が投稿に添えた画面には、数字が四つ並んでいる。参加世帯8万5,774、参加世帯の最大出力601MW、参加世帯が送った電気の量932MWh、そしてカリフォルニアの Powerwall 全体の最大出力634MWだ。投稿の「600MW超」は参加した世帯の分で、全体の線とは別に描かれている。参加した家と、しなかった家がある。
グラフの形も読みどころがある。正午前後、電池は全体で200MW以上を充電側に回し、夕方に向けて放電へ転じる。山は午後6時過ぎに立つ。昼の太陽光が余る時間にためて、日が沈んでも需要が残る時間に出す。家の電池が、そのまま地域の需給の調整に組み込まれた一日だった。
前回の記録は9月9日だ。Tesla Energy はその夕方、約6万9,000の所有者が500MW超を送っていると投稿した。9月21日には、住宅向け太陽光大手 Sunrun の電池と合わせて580MW、うち517MWは11万台の Powerwall からだったと発表している。台数と世帯数では数え方が違うので、規模を単純には並べられない。それでも同じ「所有者」の数で比べると、1か月足らずで約1万7,000世帯増えた。
7kW と 11kWh を、自分の家で読み直す
日本でも8月に発売された Powerwall 3 は、1台13.5kWhだ(「テスラの蓄電池、7〜9月に13.7GWhを導入」)。複数台を置く家もあるので一概には言えないが、1台だけの家なら、平均の11kWhは電池の8割ほどにあたる。夕方に送電網へ出した分だけ、その夜の停電に使える電気は減る。
だから、こうした仕組みに入るかどうかは、報酬だけで決まる話ではない。少なくとも次の点は、自分の条件で確かめる必要がある。
- 停電用にどれだけ残すか — 放電の指示が来ても、停電に備えて残す量を自分で決められるか。残す量を増やすほど、送れる電気と受け取る報酬は減る
- 報酬の決まり方 — 9月の放電は、州エネルギー委員会の DSGS と、州公益事業委員会の緊急時の需要削減制度(ELRP)を通じたものだったと Drive Tesla Canada が伝えている。同誌は、テスラが2024年に VPP の各制度を通じて所有者へ1,000万ドル近くを払ったとも報じた。10月6日の放電がどの制度によるものかは、テスラの投稿に書かれていない
- 制度は毎年動く — DSGS は州が定める制度で、2026年に指針が第5版へ改められた。今年の条件が来年も続くとは限らない
- 電池の使い方が増えること — 放電の回数が増えることを、保証や契約がどう扱うかは、加入前に文面で見ておきたい
日本で電池を置くなら、契約に書かれた「誰が動かすか」
日本では、Powerwall 3 の設置が始まったばかりだ。今回のような一斉放電に自分の電池が加わるかどうかは、電池そのものではなく、電池をつなぐサービスの契約で決まる。購入や契約のときに聞いておきたいのは三つある。放電の指示を出すのは誰か。停電用の残量を自分で決められるか。報酬と保証は、放電の回数とどう結びつくのか。
次に見るもの
DSGS が放電を求める期間は、委員会の制度ページによれば5月から10月までだ。今季の山場は過ぎつつある。次に確かめられるのは、テスラが10月21日午後4時30分(米中部時間、日本時間22日午前6時30分)に X で配信する7〜9月期の Company Update だ。蓄電事業の数字の中で、家庭の電池を束ねる事業に触れるかを見たい。
ことば
- VPP(仮想発電所) — 各家庭や事業所に散らばった蓄電池などを通信でまとめて動かし、一つの発電所のように電気を出し入れする仕組み。発電所を新しく建てずに、夕方の需要の山を削れる。
- DSGS — カリフォルニア州エネルギー委員会の需要側の電力網支援制度。猛暑などの非常時に、需要を減らしたり蓄電池から電気を出したりした利用者へ報奨を払う。2022年の州法で作られた。
- MW と MWh — MW は瞬間の出力、MWh は送った電気の量。601MW は放電の山の高さで、932MWh はその夕方に送った電気の合計にあたる。
停電の夜のために残しておくのか、地域の夕方のために差し出すのか。あなたの家に電池があるとしたら、その残量の線をどこに引くだろうか?
参照
- Tesla Energy 公式 X の告知 (10月6日の放電・参加世帯8万5,774・最大601MW・932MWh・全体634MW)
- Tesla Energy 公式 X (9月21日・Sunrun と合わせて580MW・Powerwall 11万台で517MW・9月9日の約6万9,000所有者で500MW超の投稿を引用)
- Drive Tesla Canada (9月10日) — 9月の放電の制度 (DSGS・ELRP)・2024年の所有者への支払いdriveteslacanada.ca
カリフォルニア州エネルギー委員会 DSGS 制度ページ (5〜10月の非常時・指針第5版・根拠法)California Energy Commission- Tesla 公式 X (10月2日・7〜9月期の数字と10月21日の Company Update 配信告知)
