Sunrun と Tesla が 9 月 21 日、カリフォルニアで家庭用蓄電池 14 万台以上を同時に放電させ、夕方の 3 時間で 580 メガワット、つまり 58 万キロワットを送電網に送ったと発表した。イベントそのものは 9 月 9 日、熱波でエアコンの需要が跳ね上がった日に行われている。
内訳は Tesla の Powerwall が約 11 万台で 517 メガワット、残りの 63 メガワットは Sunrun の顧客が持つ他社製の蓄電池 3 万台以上からだ。家庭の壁に付いている箱が、その日の夕方だけ発電所として数えられた。個人が置いた設備が、外から呼び出される対象になってきている。
誰が呼び、いくつ応じたか
放電を要請したのはカリフォルニア州エネルギー委員会と電力会社で、経路は 2 つの制度だった。Demand Side Grid Support と、Emergency Load Reduction Program である。Electrek によれば前者は前日市場の価格が 1 メガワット時あたり 200 ドルを超えると自動で発動し、後者は熱波が強まる局面で電力会社が直接引いた。
翌日の 9 月 10 日にも 140 メガワット超の放電が続いている。Sunrun の CEO メアリー・パウエル氏は、分散して置かれた家庭用蓄電池が「多くのピーク対応発電所を合わせたより大きな規模で動いている」と述べた。同社はこの日の規模を、サクラメント郡の全世帯のピーク時の電力に相当するとしている。
家庭の箱が、発電所として呼ばれる
蓄電池を家に置く理由は、これまで停電への備えと自家消費の最適化だった。今回起きたのはその先で、置いた設備が系統の需給に応じて外から呼び出されている。
呼ばれる側には対価が付く。Sunrun は参加者が系統に分けた電力に対して直接の補償を受けると書いており、Electrek も参加者が送り返した分の支払いを受けると伝えている。ただし 1 キロワット時あたりいくらかは、どちらにも書かれていない。
数の上では、これは 14 万台という母数で成立している。517 メガワットを Powerwall 11 万台で割れば、1 台あたりは 5 キロワットに届かない。その大きさが 11 万台集まって、発電所と同じ単位で数えられた。
参加する前に、分からないままの点
発表に書かれていないことがある。放電のあいだ、各家庭が停電に備えて残す分をどう扱ったのかだ。夕方の 3 時間に系統へ出した電力と、その晩に自宅で使うために残す電力は同じ箱の中にある。Sunrun のリリースにも Electrek の記事にも、この配分の説明はない。参加を検討するなら、ここは事業者に直接確かめる項目になる。
前提としての制度も大きい。今回の 2 つのプログラムはカリフォルニアの枠組みで、要請の引き金も現地の卸価格と電力会社の判断だ。同じ設備を別の場所に置いても、呼び出す制度がなければ夕方の 3 時間は来ない。
そして設備そのものの費用がある。Powerwall 1 台の価格帯は、停電対策としてだけ見れば安い買い物ではない。系統に分ける対価が加わることで計算は変わるが、その対価の水準が公表されていない以上、回収年数を自分で見積もるだけの材料はまだ揃っていない。
自分はどう構えるか
蓄電池を「非常用の備え」として見るか、「系統に貸し出せる設備」として見るかで、選ぶ機種と契約が変わってくる。後者で見るなら、集約プログラムに参加できる機種かどうかが最初の条件になる。
次の数字が出る場所は 2 つある。Sunrun の投資家向けプレスリリースの一覧と、カリフォルニア州エネルギー委員会の Demand Side Grid Support のプログラムページだ。次の熱波、つまり来年の夏の需要期に同じ規模が出るかどうかが、この形が定着したかの目安になる。
ことば
- 仮想発電所 — あちこちに分散して置かれた蓄電池や太陽光を通信でまとめ、1 つの発電所のように動かす仕組み。今回の 14 万台はこの形で呼び出された。
- Demand Side Grid Support — カリフォルニア州エネルギー委員会の制度で、需要が逼迫したときに需要側の設備に電力の供出を求める枠組み。前日市場の価格が一定水準を超えると自動で発動する。
- ピーク — 1 日のうち電力需要が最も高くなる時間帯。夏のカリフォルニアでは、気温が下がりきらないまま太陽光の出力が落ちる夕方がそこに当たる。
家に置く電池を、自分のための備えと見るか、貸し出せる設備と見るか。あなたはどちらで値段を計算するだろうか?
