MetaMaskがAIエージェント専用の自己保管型ウォレット「MetaMask Agent Wallet」を発表した。2026年8月6日に限定されたトレーダー・開発者グループ向けの早期アクセスプログラムが始まり、一般提供は今夏予定だという。
ポイントは「AIが自分でお金を使える」ことそのものではない。人間が先にルールを決め、そのルールをAIが破れない仕組みごと権限を渡す——この順番にある。
AIエージェントに財布を持たせるとはどういうことか、設計を見ていこう。
ポリシーが先、権限は後
Agent Walletの中核は、ユーザーが1日の上限額(daily spend limits)や許可するプロトコル(allowlist)といったポリシーを先に定義し、そのうえでAIエージェントに実行権限を委譲するという流れだ。
秘密鍵をAIにそのまま渡すのではなく、「この範囲内なら自律的に動いてよい」という枠を人間側が握り続ける。自己保管(セルフカストディ)の原則を保ちながら、自律的な取引を許す——両立の落としどころをここに置いた形だ。
Guard ModeとBeast Mode——手綱の締め方は選べる
デフォルトの動作モードは「Guard Mode」。日次上限と許可プロトコルを強制し、ポリシーの範囲外の取引はブロックして人間の承認(2FAレビュー)に回す。AIが勝手に枠を越えることはできない。
一方、オプトインの「Beast Mode」では承認による中断を減らせる。ただしこちらでも、セキュリティチェックと悪性と判定された取引への2FAは引き続き適用される。つまり「完全放任」の選択肢は用意されていない。
さらに全取引には、実行前のシミュレーションと脅威スキャンがデフォルトで走る。公式発表によれば、エージェントはこのチェックを迂回できない。手綱の長さは調整できても、手綱そのものを外すことはできない設計だ。
CLIから始まる、全EVM+Hyperliquidの世界
現時点の提供形態はCLI経由。公式の開発者ドキュメントにインストールと利用の手順が載っており、まずは開発者・トレーダー向けのツールとして始まっている。
対応チェーンは全EVMチェーンに加えてHyperliquid。扱えるDeFi機能はスワップ、パーペチュアル、予測市場、流動性提供(LP)などに及ぶ。AIエージェントが動ける「経済圏」として、最初からかなり広い面を押さえてきた印象だ。
「AIにいくらまで任せるか」という新しい家計の問い
この発表が突きつけるのは、技術の問題というより生活設計の問題だ。人を雇うとき、権限と予算を決めてから仕事を任せる。Agent Walletの設計は、それと同じ規律をAIに適用しようとしている。
上限額をいくらに設定するか。どのプロトコルまで許可するか。Guard Modeの安心を取るか、Beast Modeの速度を取るか——これらはすべて、ユーザー自身が決める設定項目として現れる。AIの性能ではなく、人間側のポリシー設計こそがリスクとリターンを決める構図だ。
一般提供は今夏。もし自分の資金の一部をAIエージェントに委ねられるとしたら、あなたは1日いくらまでの「枠」を渡すだろうか?