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ガイド土と食FUTURE LIFE BRIEF

食べる森とは何か、小さな庭から始める

果樹の下に低い木や草、きのこを重ね、森の形をまねながら食べものを採る「食べる森」。考え方と、小さな庭で始める手順、始める前に知っておきたい決まりをまとめる。

食べる森とは何か、小さな庭から始めるのイメージ

この記事でわかること

  • 食べる森は、木の下に植物を重ねて森の形をまねる庭
  • 小さな庭で始める手順と、実がなるまでの時間
  • 境界の枝・外来種など、始める前の決まり

「食べる森」(フードフォレスト) は、果樹の下に低い木や草、きのこを重ねて植え、森の形をまねながら食べものを採る庭のつくり方だ。米国農務省の森林局は、上の層と下の層の植物を一緒に管理し、若い森の構造をまねながら収穫物を生む仕組みだと説明している。

畑のように毎年植え直すのではなく、何年もかけて育つ庭になる。この記事では、その考え方と、小さな庭の一角から始める手順、始める前に知っておきたい決まりをまとめる。

食べる森とは何か

米国農務省の森林局は、食べる森を、上の層と下の層の植物が重なり、それを一緒に管理する仕組みと説明している。ワシントン州の農場の例では、管理された在来の森の木の下で、食べものや薬になる木、低木、草、ハーブ、きのこなどが層をなして育っている。

考え方の土台は、FAO (国連食糧農業機関) が「アグロフォレストリー」と呼ぶものに近い。FAO は、木や低木などの多年生の木本植物を、作物や家畜と意図的に組み合わせる土地の使い方の総称だと定義している。食べる森は、それを家の庭の大きさでやるものと考えると分かりやすい。

畑と違うのは、主役が何年も生きる木であることだ。木が育つにつれて、庭の日の当たり方も変わっていく。下に植える草や低木は、その変化に合わせて入れ替えていく。

層で考える

食べる森は、高さの違う植物を重ねて考える。決まった数の層があるわけではないが、家の庭なら次のように分けると組み立てやすい。

層役割例
主役の木庭の骨格になり、日陰と落ち葉をつくる柿・梅・柑橘など、地域の気候に合う果樹
低木木の足元で実をつけるブルーベリー、スグリ類
草・ハーブ半日陰でも育つものを入れるハーブ類、ミョウガ、フキ
地面を覆う植物土の乾燥と雑草を抑える這うように広がる草、わらや落ち葉のマルチ
つる木や支柱を伝って上に伸びるブドウ、キウイ
きのこ木陰の湿った場所を使う原木のシイタケ

例はあくまで出発点だ。何が育つかは地域の気候と、その庭の日の当たり方で大きく変わる。苗木を買う店や、地域の園芸の相談窓口で、その土地に合う種類を聞いてから選びたい。

小さな庭で始める手順

手順1 日の当たり方を1日見る

朝・昼・夕方に、庭のどこに日が当たるかを見る。主役の木は日当たりのよい場所に、半日陰を好む草はその足元や建物の陰に置く。

手順2 主役の木を1本決める — 境界から離して植える

最初の1本は、育ったときの大きさで選ぶ。苗木のときは小さくても、木は年々大きくなる。

境界の近くに植えると、枝が隣の土地に伸びていく。法務省によると、2023年4月1日に施行された民法の改正で、隣の土地から枝が越えてきたときは、竹木の所有者に切るよう求めても相当の期間内に切られない場合などに、越えられた側が自分で枝を切れるようになった。隣との関係のためにも、育ったときの枝の広がりを見込んで、境界から離して植えておく。

手順3 足元に低木を足す

主役の木の足元や、木と木の間に、実のなる低木を入れる。

  • ブルーベリー — 千葉県によると、強い酸性の土を好み、乾燥に弱い。涼しい地域に向くハイブッシュ系と、比較的育てやすく暖かい地域に向くラビットアイ系があり、品種を組み合わせると6月から9月まで収穫できる
  • スグリ類 (レッドカーランツなど) — 農研機構の小果樹のマニュアルによると、レッドカーランツは寒い気候を好み、東北地方に向く。高さ1.5〜2mほどの低木で、挿し木から2〜3年で実をつけ、4〜5年で成木になる

植え付けは、農研機構のマニュアルでは、晩秋の落葉直後の秋植えが根の傷みが少なく適しているとされている。幅50cm、深さ40cmほどの穴を掘り、掘った土と同じ量の堆肥を混ぜて埋め戻す。風が強く当たると実のつきが悪くなるので、なるべく風当たりの少ない場所を選ぶ。

手順4 地面を覆う

土がむき出しだと、乾きやすく、雑草も生えやすい。農研機構のマニュアルは、植え付けた後に乾燥を防ぎ、株元の雑草を抑えるため、稲わらなどで株元を覆う (マルチ) としている。わらや落ち葉、這うように広がる草で地面を覆うと、森の地面に近い状態になる。

手順5 年単位で育てる

食べる森は、植えた年に完成するものではない。低木でも実がつくまでに数年かかり、主役の果樹はさらに時間がかかる。1年目は主役の木と低木を1本ずつ、2年目に草とハーブを足す、というように、育ち方を見ながら層を増やしていく。

植えてはいけないもの — 外来種

環境省は、悪影響を及ぼすおそれのある外来種について「入れない・捨てない・拡げない」の三原則を呼びかけている。栽培している外来種は適切に管理し、野外に逃がしたり捨てたりしない。

特定外来生物に指定された植物は、許可なく栽培や運搬、譲渡ができない。よく増える植物を地面を覆う層に使いたいときほど、植える前に環境省の特定外来生物の一覧を確かめる。抜いた株や刈った草を、川原や山林に捨てない。

ベランダや狭い庭なら

地面が無くても、考え方は使える。大きな鉢に低木を1本植え、その足元にハーブを添え、土の表面をわらなどで覆えば、小さな層ができる。鉢は土が乾きやすいので、ブルーベリーのように乾燥に弱い木は、水やりを欠かさないようにする。

つまずきやすいところ

  • 大きくなる木を境界の近くに植える — 何年か後に枝が越え、隣との問題になる。育ったときの大きさで場所を決める
  • すぐに収穫を期待する — 実がなるまでは年単位。最初の数年は、育つ過程を見る期間と考える
  • 地域に合わない種類を選ぶ — ブルーベリーでも系統によって向く地域が違う。苗木を買う前に、その土地で育つかを確かめる
  • 世話がいらないと思う — 農研機構のマニュアルは、低木でも剪定や施肥の手順を年ごとに示している。森の形を目指しても、手入れはゼロにはならない
  • 増えすぎる植物を入れる — 地面を覆う植物は広がりやすい。外来種でないか、隣に広がらないかを先に確かめる

今日できること

庭かベランダでいちばん日が当たる場所に立ち、朝・昼・夕方の日の当たり方を見てみる。そのうえで、その場所に収まる大きさの果樹を1本、地域の苗木店や園芸の相談窓口で聞いてみる。

植えたい植物が決まったら、環境省の特定外来生物の一覧で、指定されていないかを確かめておく。

あなたの庭で、10年後に実をつけていてほしい木は何だろうか。

ことば

  • 食べる森 (フードフォレスト) — 果樹の下に低木、草、きのこなどを重ね、森の構造をまねながら食べものを採る庭のつくり方。毎年植え直す畑と違い、何年も生きる木が骨格になる。
  • アグロフォレストリー — 木や低木を、作物や家畜と意図的に組み合わせる土地の使い方の総称 (FAO の定義)。食べる森は、これを家の庭の大きさでやるものと考えられる。

一次ソース

版 1.0 (2026年11月2日)

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。