農林水産省は、家庭の食品備蓄を「最低3日分〜1週間分×人数分」が望ましいとしている。水は飲み水と調理用を合わせて、1人1日3リットルが目安だ。
この記事では、2つの目安の根拠を確かめたうえで、家族の人数から水・食料・燃料の量を数え、それを切らさずに回す方法までをまとめる。
3日と1週間、2つの数字はどこから来たか
農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」は、根拠を3つ挙げている。災害支援物資が3日以上届かないことがある。ライフラインの復旧に1週間以上かかった例が多い。物流が止まり、1週間はスーパーやコンビニで食品が手に入らないことが想定される。
首相官邸の防災の手引きも、飲料水と食料を最低3日分とし、大規模災害の際は1週間分の備蓄が望ましいとしている。
つまり3日分は最低線、1週間分が目標になる。同じガイドは、ハザードマップで地域の状況を確かめ、必要なら2週間分など多めに備えることも勧めている。自宅が浸水や土砂災害の想定区域に入っているなら、1週間で足りるかを一度考えておきたい。
水を数える — 人数 × 3リットル × 日数
計算は掛け算ひとつで済む。
| 人数 | 3日分 | 1週間分 |
|---|---|---|
| 1人 | 9リットル | 21リットル |
| 2人 | 18リットル | 42リットル |
| 3人 | 27リットル | 63リットル |
| 4人 | 36リットル | 84リットル |
農林水産省の広報誌 aff (2026年3月号) は、大人2人の1週間分として「2リットル×6本入りを4箱」の例を載せている。48リットルで、上の表の42リットルに少し余裕を持たせた量だ。
この3リットルは、飲み水と調理用の水だけを指している。首相官邸の手引きは、トイレを流すなどの生活用水が別に要るとし、ポリタンクに水道水をくんでおくことや、風呂の水をためておくことを挙げている。
水道水を容器にためる場合、aff は飲み水として使えるのは3日程度とし、清潔な容器に口元いっぱいまで入れてふたをし、直射日光を避けて涼しい場所に置くよう案内している。長期保存用の保存水は、賞味期限が5〜10年のものがある。
食料を数える — 大人2人・1週間分の例
食料は「何食分あるか」で数えるのが分かりやすい。1人1日3食なら、1週間で21食。大人2人なら42食になる。
aff は、大人2人の1週間分の例として次の量を挙げている。
| 種類 | 量の例 |
|---|---|
| 米 | 2キログラム×2袋 (1人1食75グラム程度) |
| 乾麺 | そうめん300グラム×2袋、パスタ600グラム×2袋 |
| カップ麺 | 6個 |
| パックごはん | 6個 |
| レトルト食品 | 牛丼の素・カレーなど18個、パスタソース6個 |
| 缶詰 (肉・魚) | 18缶 |
このほか、たまねぎやじゃがいもなど日持ちする野菜、調味料、梅干し・のり・乾燥わかめ、野菜ジュース、インスタントの味噌汁、チョコレートやビスケットなどのお菓子も並んでいる。1人暮らしならおおむね半分、4人家族ならおおむね倍が出発点になる。
aff は、災害直後は炭水化物に偏りやすいため、缶詰などでたんぱく質を、日持ちする野菜や果物でビタミン・ミネラル・食物繊維を補うよう呼びかけている。主食だけを積み上げると、数は足りていても食事としては偏る。
米や乾麺は、水と火がなければ食べられない。食料の量を決めたら、次に火の側を数える。
火を数える — カセットこんろとボンベ
停電やガスの停止に備える熱源として、農林水産省のガイドはカセットこんろを必需品に挙げている。ボンベの目安は1人1週間で約6本。大人2人なら12本、4人家族なら24本になる。
aff によると、ボンベの使用期限は約7年、こんろ本体は約10年が目安だ。買ったまま押し入れの奥にしまうと、期限を過ぎていることに気づきにくい。
切らさずに回す — ローリングストック
量が決まっても、一度に買いそろえて棚の奥にしまうと、数年後に期限切れの山になる。農林水産省が勧めるのが「ローリングストック」だ。普段の食品を少し多めに買い置きし、賞味期限の近いものから食べ、食べた分を買い足す。こうすると、家には常に一定量の食品がある状態が続く。
ガイドは、費用も時間も普段の買い物の範囲で済み、増えるのは買い置きの場所が少し広がる程度だとしている。目安は「できれば1週間分」。災害時専用の非常食と、日常にも災害時にも使う日常食品の2種類を、両方そろえるのがよいとしている。
回し方は、次の3つを決めておくと続けやすい。
- 置き場所を1か所にまとめ、期限の近いものを手前に置く
- 「最後の1つを開けたら買う」など、買い足しの合図を決める
- 水とボンベは食品ほど頻繁に減らないので、年に1回など見直す日を決める
食生活に合わせて選ぶ
何を置くかは、普段の食べ方に合わせると無駄が出にくい。農林水産省のガイドは3つのタイプで例を挙げている。
- 普段料理をする人 — 常備菜や乾物 (梅干し、缶詰、切り干し大根など)
- 中食が多い人 — レトルト食品やフリーズドライ食品
- 普段料理をしない人 — カップ麺、お菓子、非常食など好きなもの
普段食べないものを「非常用だから」と積んでも、回らずに期限が切れる。食べ慣れたものを少し多めに持つほうが、ローリングストックとしては長続きする。
家族に配慮が必要な人がいるとき
乳幼児、高齢者、食べる機能が弱くなった人、慢性疾患のある人、食物アレルギーのある人がいる家庭向けに、農林水産省は「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」を別に出している。食事に配慮が必要な人については、少なくとも2週間分を家庭にストックすることを勧めている。
災害時は、普段食べている専用の食品が避難所や店で手に入るとは限らない。何をどれだけ置くかは、このガイドと、かかりつけの医療機関の案内を合わせて決めたい。
つまずきやすいところ
- 置き場所と重さ — 2人1週間分の水42リットルは、それだけで約42キログラムになる。床下収納や玄関の棚など、取り出しやすく直射日光の当たらない場所を先に決めておく
- ボンベの置き場所 — 日本ガス石油機器工業会は、直射日光の当たる車内や暖房機・ガスこんろのそばなど、高温になる場所に置かないよう注意している。NITE (製品評価技術基盤機構) も、こんろから外して室内の40℃未満の場所に保管し、熱源のそばに放置しないよう呼びかけている
- 一度にそろえようとして止まる — 最初から1週間分を買う必要はない。まず3日分、次の買い物で少しずつ足す
- 期限の管理が続かない — ローリングストックは、回すことをやめた時点で普通の買い置きに戻る。見直しの日をカレンダーに入れておくと崩れにくい
今日できること
家族の人数に3リットルと7日を掛け、いま家にある水の量と比べてみる。足りない分が、次の買い物で足す量になる。
1週間で足りるか、2週間分を考えるべきかは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で自宅の住所を入れると見当がつく。浸水や土砂災害の想定区域に入っているなら、多めの側で考えておきたい。
あなたの家の棚には、いま何日分があるだろうか。
ことば
- ローリングストック — 普段の食品を多めに買い、期限の近いものから食べて買い足す備蓄の方法。日々の買い物の中で中身が入れ替わるので、家に一定量がある状態を保ちやすい。
- 生活用水 — 飲み水・調理用とは別に、トイレを流したり体を拭いたりするのに使う水。1人1日3リットルの目安には含まれていない。
一次ソース
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド(1)食品の家庭備蓄のすすめ」maff.go.jp
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド(2)ローリングストック」maff.go.jp
- 農林水産省 aff 2026年3月号「知って備える 家庭備蓄のイロハ」maff.go.jp
- 農林水産省「アレルギーの方こそローリングストック!」maff.go.jp
- 農林水産省「家庭備蓄ポータル」maff.go.jp
首相官邸「災害への備え 事前にできること」首相官邸
日本ガス石油機器工業会「カセットこんろ・カセットボンベの安全な使い方」カセットこんろ・カセットボンベの安全な使い方|一般社団法人 日本ガス石油機器工業会(JGKA)- NITE「“NO MORE ボンベ破裂” カセットこんろの事故を防ぐ3つのポイント」(2024年12月26日)nite.go.jp
- 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
版 1.0 (2026年11月2日)