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Odyssey、ショウジョウバエの脳を世界モデル Odyssey-3 で飛ばす

Odyssey がショウジョウバエの脳を世界モデル Odyssey-3 の中で飛ばす動画を公開した。ハエの脳の地図はすでに完成しているが、今回どの脳をどう動かしたかは未公表だ。分かっていることと、まだ分からないことを分けて整理する。

Odyssey、ショウジョウバエの脳を世界モデル Odyssey-3 で飛ばすのイメージ

この記事でわかること

  • Odyssey がショウジョウバエの脳を世界モデル Odyssey-3 の中に置き、架空の世界を飛ぶ約30秒の動画を公開した
  • ハエの脳全体の配線図は2024年に FlyWire が発表済み。神経細胞13万9,255個・シナプス約5,000万
  • どの脳のモデルを使い、映像をどう入力に変えたかは未公表。確かめる先は Odyssey の続報

AI スタートアップの Odyssey は日本時間10月18日朝、ショウジョウバエの脳を自社の世界モデル「Odyssey-3」の中に置いたと X で公開した。添えられた約30秒の動画では、ハエが AI の生成した架空の世界を自分で飛び回っている。

生き物の脳を計算機の中で動かす研究は、これまで物理エンジンで作った作り物の体と部屋を舞台にしてきた。その舞台を、AI が際限なく描き出す世界に替える試みだ。ただし、どの「脳」をどう動かしたのかを、Odyssey はまだ説明していない。

Odyssey が公表したこと、していないこと

Odyssey の投稿は短い。ショウジョウバエの脳を Odyssey-3 の中に置き、ハエは想像上のシミュレーションの世界を自力で飛んでいる。書かれているのはこれだけだ。

使った脳のモデルが、実際のハエの神経の配線図 (コネクトーム) から作ったものなのか。ハエの目に当たる入力を、世界モデルの映像からどう作ったのか。羽ばたきの指令を、どう世界の側の動きに戻したのか。論文や技術の説明は、執筆時点で出ていない。X では「本物のコネクトームを入れた」と紹介する投稿も出ているが、Odyssey の公式アカウントの投稿はそこまで書いていない。

動画は、何かが動いたことは示している。どこまでが脳の働きで、どこからが世界モデルの側の描画なのかは、説明が出るまで切り分けられない。

ハエの脳は、どこまで地図になったか

この話が単なる演出で終わらないのは、ハエの脳の地図がすでに手元にあるからだ。2024年10月2日、国際共同研究の FlyWire が、成虫のメスのショウジョウバエの脳全体の配線図を Nature に発表した。神経細胞は13万9,255個、化学シナプス (神経どうしのつなぎ目) は約5,000万にのぼる。

同じ日の Nature には、この種の配線図をもとに脳全体を計算機上で動かすモデルも載った。Philip Shiu らのモデルは、甘さや水を感じる神経を刺激すると、実際に食べ始める行動に関わる神経を言い当て、モデルから立てた予測の一部を、生きたハエの実験で確かめている。

2026年3月には、スタートアップの Eon Systems が、こうした脳のモデルを物理エンジン MuJoCo の中の仮想の体につないだと発表した。脳のモデルのコードは公開したが、体とつなぐ部分は公開していないと報じられている。

世界モデルが舞台になると、何が変わるか

Odyssey-3 は米国時間10月8日に公開された世界モデルだ。指示した内容から操作できる環境をその場で描き出し、大量の映像から物理や因果の振る舞いを学んでいると同社は説明している。物理の振る舞いを測る試験 Physics-IQ Verified では、上位版が66.1を記録し、報告された中で最高の点だと同社は主張している。

物理エンジンの世界は、人が一つずつ作り込む。世界モデルなら、港でも森でも、文章で頼めば描ける。脳のモデルを試す場所が、作った分だけから、頼んだ分だけに広がる。一方で、世界モデルの物理は学習から得た近似で、重力や空気の流れが実際と一致する保証はない。ハエの飛び方が正しいのか、世界の側が辻つまを合わせているのかは、同じ動画からは分からない。

確かめる先は、Odyssey の公式 X と公式サイトに出る続報だ。使った脳のモデルの出どころと、映像を神経の入力に変える方法が書かれれば、この動画の重みは測れるようになる。

ことば

  • コネクトーム — 脳の中の神経細胞が、どれとどれにつながっているかを網羅した地図。電子顕微鏡で脳を薄く切って撮影し、画像から一本ずつたどって作る。ハエの脳全体の地図は2024年に完成した。
  • 世界モデル — 映像などから、物がどう動き、何をすると何が起きるかを学んだ AI。学んだ知識で、まだ見たことのない場面の続きを描き出せる。ロボットや AI を訓練する練習場としても使われ始めている。

脳の配線図を写し取って計算機の中で動かしたとき、あなたはそれを、どこから「そのハエ」と呼ぶだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。