NASA は11月7日、月の南極に置く月面基地へ荷物を運ぶ新しい契約「CLPS 2」に Blue Origin や SpaceX など8社を選んだ。期間は10年、総額の上限は100億ドルだ。同じ日に、原子力で動く探査車 PROMISE の輸送や、月面で電気をつくり、ためて、線を使わずに届ける部品の調達も発表した。
NASA ニュースリリース「NASA Awards Moon Base Transportation, Technology, Science Projects」(2026年11月7日)NASA
4日に示したアルテミス計画の段取りは、人をいつ月へ降ろすかの話だった。今回はその先、人がとどまる場所に電気と通信と物流をどう敷くかの話になる。月の夜を越える仕組みは、地上で送電網に頼らずに暮らす工夫ともつながる。
8社で回す輸送の枠
CLPS 2 は、月への荷物の配送を民間に頼むための枠組みだ。選ばれたのは Blue Origin、Firefly Aerospace、Intuitive Machines、ispace-U.S.、Lockheed Martin Space、Northrop Grumman Space Systems、SpaceX、Voyager Technologies の8社。10年の間に、仕事ごとに注文を出していく複数社の契約で、上限の100億ドルは8社の合計だ。
これまでの CLPS 1.0 も、上限を26億ドルから42億ドルへ引き上げた。2028年11月まで注文でき、受けた配送は2033年11月までに済ませればよい。1社に任せきらず、複数の会社に同じ種類の仕事を出せる形を広げたことになる。発表はケネディ宇宙センターの航空宇宙の催しで行われ、アイザックマン長官は、宇宙飛行士が月に戻るときには月面基地の最初の部品とともに着く、という趣旨を語っている。
夜を越える探査車と、部品から買う電源
月では、夜が地球の時間でおよそ2週間続く。PROMISE は、その長い夜や、太陽の光が届かず氷があるかもしれない永久影の中でも動けるよう、原子力を電源にした6輪の探査車だ。深さ約1メートルまで掘るドリルや分光計を積み、南極の地表と地下を調べて、資源や着陸地点の選定、後の基地づくりに役立てる。
作り方にも工夫がある。運用を担う NASA のジェット推進研究所が、火星探査車 Curiosity と Perseverance のために作った予備の部品や試験用の機体を使って組み立てる。輸送は Blue Origin が着陸機 Mark 1 で受け持ち、基本の契約が9,400万ドル、成果に応じた追加の選択肢が1億4,000万ドル。打ち上げは2028年後半を目指し、任務は18か月だ。
電源のほうは「miniCAST」と呼ぶ、電力と通信を一体にした塔の計画で進む。NASA は太陽電池、蓄電池、線を使わずに電気を送る装置を民間から買う。エネルギーの貯蔵を Honeybee Robotics (Blue Origin の子会社)、発電を Redwire、無線の送電を Yank Technologies が担い、NASA のマーシャル宇宙飛行センターが組み立てて試験する。最初から一式で買うのではなく、部品から始める。発電から送電までを一体にした電源システムの公募は、2027年の初めになる見込みだ。
通信では、SpaceX が2028年に Starship で通信衛星を月の周りへ運ぶ実証を受け持つ。ほかにも、小型ロケットなどの打ち上げ6件、計約13億ドルを発注し、人が着く前に南極を下見するドローンも送り込む。
地上の電気の自立と比べると
発電する、ためる、届ける、を別々の部品として選び、あとから一つにまとめる。月面の電源の買い方は、家に太陽光と蓄電池を入れるときの考え方と似ている。パネルと電池と配線を別々に選べば、壊れた部分だけ替えられる。その代わり、つなぎ合わせて本当に動くかを確かめる手間は自分で負う。NASA が試験の場としてマーシャルを置いたのは、その手間を引き受けるためだ。
ただ、月で使う技術がそのまま家に降りてくるわけではない。PROMISE の原子力電源は、個人の暮らしが選べるものではない。無線で電気を送る装置も、月面で何メートル先にどれだけ届くのかは、今回の発表には書かれていない。費用も桁が違う。月面の部品で試されるのは、長い夜を越えるのに、どれだけの電気をためておけば足りるかという計算のほうだ。
次に見るのは、NASA が2027年の初めに出すとしている、一体型の電源システムの公募だ。月面で求められる発電量と蓄電量が、その公募の条件として初めて数字で示されるかを確かめたい。
ことば
- CLPS — 月への小型の荷物の配送を、民間の会社に頼むための NASA の契約の仕組み。NASA は機体を持たず、運ぶサービスを買う。今回の CLPS 2 で、配送を頼める会社は8社になった。
- 永久影 — 月の極の近くにある、太陽の光が一度も差さないくぼみ。とても冷たく、水の氷が残っている可能性があるため、人がとどまるための資源の候補として調べられている。
もし2週間、電気を送電網から買えないとしたら、あなたの家はどれだけの電気をためておけばよいだろうか?