Anthropic の The Anthropic Institute は11月5日、科学研究での Claude の使われ方を分析した報告を公開し、今の能力の AI が広く使われれば、新しい研究1本に要する研究者の時間の27〜52%を AI が担えるとの試算を示した。分野の中央値は38%だ。
これはいま減っている時間の実測ではなく、前提つきの計算で、もとになるのは提供元自身の製品の利用データでもある。それでも、どの工程に AI が集まり、どの工程が手薄なのかは研究室の外の仕事を考える材料になる。
38%はどう作られた数字か
材料は2つある。1つは8月2日から9月30日までの、消費者向けプランの研究関連207,049セッションだ。内訳は Chat と Cowork が128,914、Claude Code が78,135で、言語モデルで34分野・7,262種類の作業に分類した。
もう1つは科学者528人への調査で、AI に任せる度合いを5段階で尋ね、AI が担う時間の0・25・50・75・100%に置き換えた。回答者は主に生命科学と医療の分野で、AI 研究用のクレジットに応募した人たちから募っている。報告自身が、平均的な科学者より AI を多く使う層だろうと注記している。
試算の前提も報告に明記されている。AI が広く普及し、役に立つすべての工程で研究者が使うという想定だ。研究の加速で見ると、今の能力で1.35倍 (芸術) から2.02倍 (統計学) まで幅がある。
使われているのは分析と執筆
報告は、研究者の時間の配分と Claude のセッションの比率を工程ごとに並べている。
- データ分析: 研究時間の27.6%に対し、セッションの33.7% (Claude Code では48.1%)
- 執筆と伝達: 研究時間の16.0%に対し、セッションの32.0%
- データ収集: 研究時間の28.6%に対し、セッションの11.5%
- 発想と仮説づくり: 研究時間の7.1%に対し、セッションの4.2%
調査では、重要な成果を生むうえで最も大事な工程に研究者は発想を挙げ (100点中35.6点)、次がデータ収集だった (23.6点)。AI が多く使われている工程と、研究者が大事にしている工程はずれている。ただし発想は他の作業に紛れて少なく数えられている可能性があると報告は断っている。
分野の差を作るのは手を動かす工程だ。農学・生物医学・化学・材料科学では研究時間の38〜41%が物理的な作業で、中央の分野の4%とは大きく違う。物理的でない工程をすべて自動化する例示のシナリオでも、統計学や計算機科学が15〜16倍なのに対し、これらの分野は3〜4倍にとどまる。報告はこのシナリオを予測ではなく例示と呼んでいる。
学びや別の仕事に当てはめる前に
学ぶ側への影響は、この報告からは読めない。分類は教育・査読・管理の業務を研究の作業から切り離しており、それらでの AI の利用は今後の研究に委ねられている。研究以外の職種に38%をそのまま持ち込む根拠もない。
借りられるのは数字より分け方だ。自分の1週間を、分析する・書く・集める・考え出すに分けてみると、AI に預けやすい部分と預けにくい部分が見えてくる。
見落とされやすいのは費用と確認だ。試算は AI の費用を1時間30ドル、研究者を95ドルと置くなどの仮定に乗っていて、機材や試薬の費用、アイデアの質は勘定に入っていない。AI の出した分析を確かめるには自分の分野の知識が要るので、基礎を学ぶ時間まで削れば確認ができなくなる。
Anthropic の Science Blog に同じ週に載った研究者の寄稿も、方向は近い。テュービンゲンの研究者らは、これまでの検証は主に既に知られたモデルの再発見に限られ、モデルが実際の仕組みについて何を語るかの解釈は人の手に残りやすいと書く。報告も、何を問うかといった判断に人を関わらせ続けることを重要としている。
次に開くのは Anthropic の Research のページだ。次の報告が出たときに、今回切り離した教育と管理の業務が扱われるかを見たい。
ことば
- Claude Code — Anthropic の AI に端末からコードの作成や実行を任せる道具。今回の研究関連のセッションでは計算機科学が32.7%を占め、分析の比率も Chat より高い。
- 研究の加速 — 同じ研究を何倍の速さで仕上げられるかを示す試算。担える時間の比率だけでなく、AI の稼働にかかる費用や時間の仮定にも左右される。
あなたの1週間の仕事を4つに分けたとき、AI に預けてよいのはどれで、手元に残しておきたいのはどれだろうか?

