本文へ移動
LIFEMAKERS.COM — 自立型ライフの実践知カタログ
ベータ版
Signal解説・分析エネルギーと循環FUTURE LIFE BRIEF

経産省の原油調達3法案、ガソリンや灯油の販売量に応じて納付金

原油調達3法案が閣議決定された。ホルムズ海峡を避ける輸送に交付金を出し、原資はガソリンや灯油の販売量に応じた納付金で集める。単価と店頭価格への影響はまだ決まっていない。

経産省の原油調達3法案、ガソリンや灯油の販売量に応じて納付金のイメージ

この記事でわかること

  • 政府は10月13日、原油調達多角化法案など資源確保に関わる3法案を閣議決定し、第222回国会に提出する
  • ホルムズ海峡を避ける輸送に交付金を出し、原資はガソリン・灯油・軽油・重油の国内販売量に応じた納付金で集める
  • 納付金の単価と上限は法案成立後に政令などで決まり、店頭価格への影響はまだ示されていない

政府は10月13日、原油などの調達を安定させるための3つの法律案を閣議決定した。経済産業省によると、中心となる「原油等調達多角化法案」は、ホルムズ海峡を通らない輸送路をとる石油会社などに交付金を出し、その原資を、ガソリン、灯油、軽油、重油の国内での販売量に応じた納付金で集める仕組みだ。法案は開会中の第222回国会に提出される予定になっている。

危機が起きてから高い運賃を払うのではなく、平時から少しずつ集めて、危機のときと平時のコストをならす。経済産業省はそう説明している。納付金が店頭の価格にどう乗るかは資料に書かれていないが、原資が燃料の販売量に連動する以上、冬の灯油や毎週の給油と切り離された話ではない。

閣議決定の第一報は「エネルギー調達安定性向上の関連3法案を閣議決定」で伝えた。ここでは、この仕組みが暮らしの燃料とどこでつながるのかを見ていく。

ホルムズ海峡を「指定水路」にする

経済産業省は法案の背景として、中東情勢の変化で、長い期間にわたり原油タンカーが事実上ホルムズ海峡を通れない状況が生じたと書いている。特定の輸送路に頼りすぎる危うさがはっきりした、という認識だ。

法案は、代わりの水路で運ぶのが難しい狭い水路を「指定水路」と呼び、政令でホルムズ海峡を指定することを想定している。石油会社や石油化学メーカー、商社などは、指定水路への依存を減らす計画を作って政府の認定を受ける。認定を受けた事業者には、エネルギー・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) が交付金を出す。

想定されている取り組みの例は二つある。海峡の外側にある積み出し港までパイプラインで運ぶこと、そして複数の地域から分けて買うことだ。前者ではパイプラインの使用料や追加の船の運賃を、後者では遠い港から運ぶ運賃を支える。

納付金は誰が払い、いくらになるのか

納付金を払うのは、原油を精製する事業者と、ガソリンなどの石油製品を輸入する事業者だ。国内で販売・使用した「指定石油製品」の量に応じて、毎年度 JOGMEC に納める。指定石油製品には、ガソリンとナフサ (揮発油)、ジェット燃料を含む灯油、軽油、重油が入る。給油所で家庭が買うガソリンと灯油も、ここに入る。

金額はまだ決まっていない。1単位あたりの単価は、交付金に要る費用の見通しなどを踏まえて、政府が総合資源エネルギー調査会などの意見を聞いて定める。上限は、指定水路を通る航路とそれ以外の航路の運賃の差をもとに、政令で決めるとされている。法律は一部を除き、公布から6か月以内の政令で定める日に施行される。

つまり、暮らしの側から見て一番知りたい「1リットルあたりいくらか」と「それが店頭の値段に乗るのか」は、法案の段階では答えが出ていない。決まるのは国会を通った後の政令と、審議会の議論の中だ。

保険と JOGMEC の2法案

残りの2つの法案は、運ぶための土台を支える。「原油等輸送保険法案」は、外国の政府が外国の保険会社による再保険の引き受けを禁じ、日本へ原油を運ぶ船の保険が結べなくなったときに備えるものだ。政府が国内の損害保険会社に交付金を出し、保険金の支払いに要るお金を支える。

「JOGMEC 法改正法案」は、JOGMEC の仕事を広げる。原油などの輸送事業、バイオ燃料などの製造、金属の再生資源を製錬する事業への出資と債務保証、そして CO2 を地中に貯める CCS への助成金が加わる。

平時の上乗せを、何と引き換えに払うか

この仕組みは、平時の燃料に小さな上乗せを置いて、危機のときの運賃や品薄の揺れを小さくしようとするものと読める。保険の掛け金に近い。ただ、掛け金がいくらになり、危機のときにどれだけ効くのかは、まだ数字で示されていない。

確認できる次の一点は、第222回国会での審議だ。衆議院と参議院の議案情報に法案が載り、委員会で納付金の単価の考え方や上限の目安がどこまで示されるかが、家計への影響を見積もる最初の材料になる。成立後は、経済産業省が定める実施指針と、上限を決める政令が続く。

ことば

  • 指定水路 — 日本への原油輸送で通る水路のうち、代わりの水路では運ぶのが難しい狭い水路。法案ではホルムズ海峡を政令で指定する想定で、ここへの依存を減らす取り組みが交付金の対象になる。
  • JOGMEC — 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構。資源の確保を支える国の機関で、今回の法案では納付金の徴収と管理、交付金の交付を担う。
  • 再保険 — 保険会社が引き受けた保険の一部を、別の保険会社に引き受けてもらう仕組み。金額の大きい保険でリスクを分け合うために使われ、これが断たれると元の保険も結びにくくなる。

冬の灯油を買うとき、その1リットルに「ホルムズを避けるための費用」が入るとしたら、それを保険料と見るか、値上げと見るか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。