Anker のポータブル電源ブランド Anker SOLIX は10月9日 (米国時間)、容量5,024Wh の新製品「SOLIX S5000」を米国で発表した。メールで登録した人向けの初回価格は2,499ドルで、購入できるのは10月27日から11月8日まで。対象はアメリカ本土の48州に住む人だ。
5kWh は、持ち運べる電源としては大きい部類に入る。冷蔵庫や通信機器を停電の間どれだけ動かせるのか、そのために何を引き受けることになるのかを、発表ページの数字から見ていく。日本での発売と価格は、いまのところ発表されていない。
5,024Wh と 4,500W の中身
発表ページに並ぶ主な仕様は次のとおりだ。
- 容量: 5,024Wh。電池はリン酸鉄リチウム (LFP) のセル
- 出力: 定格4,500W、瞬間的には最大8,000W。米国の家庭で使う120V と240V の両方に対応
- 停電時の切り替え: 10ミリ秒以内。接続した機器を止めずに電源を引き継ぐ
- 充電: 家庭のコンセント (120V) から最大1,800W、240V なら最大4,500W。太陽光パネルからは2系統で合計3,000W まで
- 寿命と保証: 容量が80%に落ちるまで6,000回の充放電。保証は5年
- 増設: 専用の増設バッテリーで最大30kWh まで
- 大きさと重さ: 約27×56×39cm、約44kg
家の配線につなぐこともできる。切替スイッチや屋外の接続口を工事で付ければ、停電のときに家の回路の一部をこの電源から動かせる。
停電の日に、どこまで動かせるか
Anker は「冷蔵庫を最大86時間」「家を48時間」といった数字を出している。ただ、冷蔵庫の86時間は、容量700リットルの冷蔵庫を室温25℃で動かしたという同社の社内テストの条件つきだ。家の48時間については、何を動かした想定なのかがページに書かれていない。「最も長持ちする5kWh 機」という言い方も、同社が選んだ他社機との比較で、1,000W 以下の負荷に限った主張になっている。
自分の暮らしに当てはめるなら、単純な計算のほうが役に立つ。容量の5,024Wh に、同社が示す変換効率96%を掛けると、使える電力量はおよそ4,800Wh になる (編集部の計算)。
- 1,000W の家電を動かし続けると、およそ4.8時間
- 500W なら、およそ9.6時間
- 消費電力が100W 前後の機器だけなら、丸2日近く
電子レンジやドライヤーのように1,000W を超える家電は、数時間で電池を使い切る。冷蔵庫と照明、スマートフォンの充電、ルーターに絞れば、太陽光で昼に充電しながら数日をしのぐ計算も立つ。どの家電を残すかを先に決めておくかどうかで、同じ5kWh の持ち方がまるで変わる。
44kg と、日本の家との距離
できることの裏側も見ておきたい。
まず重さだ。約44kg は、一人で抱えて階段を上り下りする重さではない。キャスターで転がすか、置き場所を決めて動かさない使い方になる。持ち運べる電源という名前から想像する手軽さとは違う。
次に価格だ。2,499ドルは登録者向けの期間限定価格で、通常の価格はまだ示されていない。増設バッテリーにも1台2,499.99ドルの参考価格が付いている。
そして、これは米国の電気に合わせた製品だ。120V と240V の2つの電圧、米国の形のコンセントを前提にしている。発表ページには、北米の電力網向けで米国とカナダ以外では使わないよう求める注記もある。日本の家庭のコンセントは100V で、そのまま持ち込んで使う製品ではない。
それでも、この発表は日本の読者にも一つの目安を渡している。家1軒の非常用電源を、工事なしの「箱」でどこまで担えるのか。5kWh、4,500W、44kg という組み合わせが、その現在地だ。
次に確かめるのは、10月27日に公開予定の Anker SOLIX の米国製品ページだ。通常価格や各コンセントの数が、そこで出そろうはずだ。日本での展開は、アンカー・ジャパンの公式サイトのニュース欄で発表を待つことになる。
ことば
- リン酸鉄リチウム (LFP) 電池 — リチウムイオン電池の一種で、充放電を繰り返しても劣化しにくく、熱による事故が起きにくいとされる。容量あたりでは重くなりやすく、据え置き型の蓄電池でよく使われる。
- 切替スイッチ — 停電のとき、家の回路の電気の取り込み口を電力会社の送電線から非常用電源へ切り替える装置。送電線へ逆に電気が流れるのを防ぐ役割もあり、設置には電気工事が必要になる。
停電の夜に、あなたの家で最後まで動かしておきたい家電はどれで、それは何 W だろうか?
