暗号資産のウォレット MetaMask は10月14日、AI エージェントに取引を任せるための Agent Wallet が、Grok の AI エージェント「Grok Bot」(X 上のアカウントは @bot) で使えるようになったと公式 X で告知した。何百万人もの MetaMask 利用者を守っているのと同じ安全の仕組みが支えている、としている。
お金を動かす操作を AI に頼める道具が、また一つ広い場所に出てきた。任せる範囲を自分で決める仕組みがどうなっているのか、そして決めきれない部分がどこに残るのかを見ていく。
何ができるようになったのか
Agent Wallet は、利用者本人が鍵を管理する (自己管理型の) ウォレットを、AI エージェントから操作できるようにする道具だ。公式ページによれば、エージェントは交換 (スワップ)、先物の一種である無期限先物、予測市場、ステーキング、流動性の提供といった取引を、複数のブロックチェーンにまたがって実行できる。
これまで公式の資料が挙げていた対応先は、Claude Code、Codex、Cursor など、主に開発者向けの AI 道具だった。今回の告知で Grok Bot が加わったことになる。ただし告知の投稿は短く、Grok Bot 上での設定の手順や、使える取引の範囲が他と同じかどうかは書かれていない。
任せる範囲を決める2つのモード
公式ページによると、利用者は使ってよい金額の上限、取引してよい相手 (プロトコル) の一覧、危険をどこまで取るかを先に決め、エージェントはその内側で動く。モードは2つある。
- Guard Mode: 許可した相手とだけ取引し、1日の上限を決める。決めた範囲の外の取引は、利用者の二段階の承認が要る
- Beast Mode: どの相手とも取引できる。悪質と判定された取引は止められ、承認に回される
承認の依頼はメールか MetaMask のスマホアプリに届き、内容を見て1回の操作で認めるか断る。5分たっても応じなければ自動で断られる。すべての取引は実行前に結果を試算し、悪質な宛先を調べる仕組み (Blockaid) を通すとしている。安全と判定された対象の取引には、月1万ドルまでの補償の仕組みがあるが、条件は別の規約で定められている。
決めきれない部分はどこに残るか
この仕組みが防ごうとしているのは、主に「悪質な相手」と「決めた範囲の外」だ。裏を返せば、許可した範囲の内側でエージェントが下した判断は、利用者が任せたものとして実行される。無期限先物や予測市場は、値動きしだいで短時間に大きく損をしうる取引でもある。
Guard と Beast の違いは、結局のところ「どこまで自分で線を引くか」の違いだ。上限を小さく、相手を少なく決めるほど安全側に寄るが、そのぶんエージェントに任せられることは減る。承認の通知に5分以内に応じられない時間帯があるなら、それも設計に入れておく必要がある。
確認できる次の点
次に見るのは、MetaMask の公式ニュース (metamask.io/news) と開発者向け資料に、Grok Bot での設定手順が載るかどうかだ。10月8日にはすでに Agent Wallet の始め方の解説が出ており、Grok Bot 向けの手順や、使える取引の範囲が同じかがそこで分かる。補償の対象と条件は、同社の Transaction Shield の規約で確かめられる。
ことば
- 自己管理型ウォレット — 資産を動かすための鍵を、取引所などではなく利用者自身が持つウォレット。自由に使える反面、鍵や操作の管理は本人の責任になる。
- 無期限先物 — 期限なしで売り買いの持ち高を保てる先物取引。手元の資金より大きな額を動かせるため、値動きしだいで損失も大きくなりやすい。
AI にお金の操作を任せるとしたら、あなたは1日いくらまで、どの相手とまでなら、自分の確認なしで動かしてよいと考えるだろうか?


