厚生労働省は10月23日、公式 X で生活保護の追加給付を案内し、対象世帯と申し出の方法をまとめた政府広報オンラインのページを紹介した。2013年8月から2026年3月までに一度でも生活保護を受けた世帯が対象になりうる給付で、いま受給していない世帯は、当時の自治体へ2027年7月31日までに自分から申し出ないと受け取れない。
受給中の世帯は原則として手続きがいらない。差がつくのは、すでに保護を離れた世帯だ。
2025年6月の最高裁判決が出発点
発端は、2013年から3年かけて行われた生活扶助基準の引き下げだ。最高裁は2025年6月27日、このうち物価の下落を反映させた「デフレ調整」について、厚生労働大臣の判断の過程と手続きに「過誤、欠落があった」として違法と判断した。
厚労省は学識経験者の専門委員会で対応を検討し、2025年11月の報告書を踏まえて、従来の水準と新たな水準との差額を追加で支給することにした。差額の率は期間で変わり、2013年8月〜2014年3月が従来水準の0.8%、2014年4月〜2015年3月が1.6%、2015年4月以降が2.4%になる。
対象になる世帯
政府広報オンラインと厚労省の相談センターの案内では、対象は次のとおりだ。
- 2013年8月から2018年9月までの間に生活保護を受けたことがある全ての世帯
- 2018年10月から2026年3月までの間に受けた世帯のうち、一定期間入院や介護施設への入所をしていた人、障害者加算などが算定されていた人、毎年12月の期末一時扶助が算定されていた世帯など
対象期間の一部でも受給していれば対象になる。働いて収入があり、生活扶助費が支給されていなかった、または一部しか支給されていなかった期間も対象に含まれる。一方で、すでに亡くなった人の分は支給されない。3人で受給していて1人が亡くなっていれば、2人分になる。
受給中なら自動、離れた世帯は申し出
いま生活保護を受けている世帯には、受給中の自治体が準備の整った順に支給する。原則として申し出はいらず、追加給付は収入として認定されない。
いま受けていない世帯は、当時受給していた自治体に、当時の世帯主から申し出る。受付は2026年8月1日から2027年7月31日まで。方法は自治体ごとに郵送・電子申出・窓口のいずれかで、厚労省のページに「自治体ごとの申出受付方法一覧」が載っている。引っ越しをはさんで複数の自治体で受給していた場合は、それぞれの自治体に申し出る。当時の世帯主が亡くなっている場合は、配偶者、子、父母の順に、当時の世帯員が代わって申し出られる。
ここで手間になるのが書類だ。厚労省の標準様式では、申出書に加えて次の添付を求めている。
- 申し出る人の本人確認書類の写し
- 全世帯員の戸籍謄本の写し(原則として発行から3か月以内)
- 振込先の口座が分かる通帳かキャッシュカードの写し
- 調査への同意書
離婚などで当時の世帯員が戸籍から外れている場合は、その人の現在の戸籍謄本を取り寄せることになる。マイナポータルなどの電子申請で確認ができ、対象期間ずっと単身だった場合などは、戸籍謄本が要らないこともある。
金額は世帯ごと、目安は相談センターに
金額は、受給当時の年齢、世帯人数、地域、期間、加算の有無で決まる。相談センターの例では、2013年8月から2026年3月まで続けて居宅で受給していた場合、都市部(1級地-1)の60歳代単身で10.5万円、30歳代夫婦と4歳の子の3人世帯で20.4万円。地方部(3級地-2)ではそれぞれ8.5万円と16.1万円になる。加算を含まない例なので、加算があった世帯はこれより増える。
例の内訳を見ると、金額の大半は2015年4月から2018年9月までの42か月分に集まっている。都市部の60歳代単身なら10.5万円のうち8.1万円がこの期間だ。受給がこの時期にかかっていたかどうかで、手元に来る額は大きく変わる。
戸籍を集める手間や手数料と、受け取れる額を比べて決めることになる。相談センターは個別の受給記録を持っていないが、当時の年齢や世帯人数、地域、期間を伝えれば、似た世帯の例を教えてくれる。申し出るかどうかは、その目安を聞いてからでも遅くない。
もう一つ、政府広報オンラインは、自治体などが電話で暗証番号を聞いたり、ATMの操作や手数料の振り込みを頼んだりすることはないと明記している。給付が話題になる時期は、それを装った連絡も紛れ込みやすい。
次に確かめたいのは、厚労省のページにある「自治体ごとの申出受付方法一覧」(10月2日更新版)で、当時住んでいた自治体がどの方法で受け付けているかだ。電話なら相談センター(0120-179-445、平日9時〜17時、10月中は土日祝も受付)が窓口になる。締め切りは2027年7月31日だ。
ことば
- デフレ調整 — 2013年からの生活扶助基準の見直しで、物価の下落を理由に基準額を下げた部分。最高裁は、この判断の過程と手続きに誤りや欠落があったとして違法と判断し、今回の追加給付の根拠になった。
- 級地 — 生活保護の基準額に地域差をつけるための区分。市町村ごとに「1級地-1」から「3級地-2」までの6区分が指定され、同じ世帯構成でも都市部ほど基準額が高い。追加給付の額にもそのまま響く。
- 期末一時扶助 — 年末の出費に備えて毎年12月に支給される扶助。2018年10月以降に受給した世帯でも、これが算定されていれば追加給付の対象に入る。
家族のだれかがあの13年のどこかで受給していたとして、受け取れる額と書類集めの手間を、あなたはどう比べるだろうか?

