メタは10月12日 (米国時間)、新しい AI モデル「Muse Wonder」と、その上位版「Muse Wonder Full」を発表した。同社はこれまでで最も能力の高いモデルと位置づけ、個人と仕事の両方で、AI が手順を踏んで作業を進める用途に向けて作ったとしている。開発者向けには発表の日から使え、利用者向けの個人エージェント「Muse」にも、まず有料の加入者から順に載る。
発表が例に挙げた仕事は、保険の請求、賃貸契約、家計の管理だった。質問に答える相手というより、用事を片づける代理人の頭脳として作られている。どこまで任せるかを決めるのは、使う側だ。
使える場所は、まだ分かれている
今の時点で Muse Wonder を使える場所は限られる。メタの発表によれば、Muse Wonder は開発者向けの Meta Model API と、プログラミング用の Muse Code で使える。上位版の Muse Wonder Full は、Muse Code の加入者向けだ。
一般の利用者が触れる Muse アプリについては、Muse Wonder が「まもなく」動かすようになり、加入者から先に提供するとだけ書かれている。時期は示されていない。
その Muse 自体も、9月8日の発表では米国で iOS・Android・ウェブ (muse.ai) に順次提供中とされ、日本を含むほかの国や対応する言語には触れていない。メタの AI グラスにも近く対応するという。日本の利用者がこのモデルを個人エージェントとして使える日は、今回の発表からは読み取れない。
覚えている、投げ出さない、大事な手前で聞く
メタが Muse Wonder の特徴として挙げたのは二つの機能だ。
- Active Memory — 会話をまたいで、関係のある情報を持ち越す
- Active Focus — 目標に向けて粘り、別のやり方を試し、失敗から立て直す。大事な操作の前には、確認を求めたり途中の報告を入れたりする
個人エージェントとしての Muse には、もともと止まる場面の仕組みがある。9月の発表によれば、Muse はメールの送信や買い物といった重い操作の前に本人に確かめ、外部へ送るものは別の見張り役のエージェントが承認する。どのアプリにつなぎ、どこまで許すか (メールなら読むだけか、送信もか) は利用者が選び、過去と予定の操作の記録も見られる。
新しいモデルが「大事な操作の前に聞く」ように鍛えられたことは、この設計と噛み合う。任せる範囲を広げるほど、止まる場所の決め方が効いてくる。
数字と安全の報告は、これから
未成熟な部分もはっきりしている。メタは法律の仕事を測る Harvey の Legal Agent Benchmark や、長期のソフトウェア開発を測る SWE-Marathon などの名前を挙げたが、研究ブログに点数は載っていない。安全性の評価を含む詳しい報告書は「近く」公開するとしている。
発表は保険・法律・金融・健康といった分野での働きにも触れている。ただ、これらは間違いの代償が大きい領域だ。今の時点で分かっているのは、メタが自社のモデルをそう説明しているという事実までで、手元の書類を任せてよいかの判断材料は、報告書が出るまでそろわない。料金についても、Muse は「必要なことの大半は無料、もっと使う人には加入プラン」とされるだけで、Muse Wonder がどの料金の層で使えるかは示されていない。
確認できる次の一点は、メタが「近く」としている Muse Wonder の詳しい報告書だ。メタの研究ブログ (research.meta.ai) に載る安全性の評価と点数を見て、任せる仕事の重さを決めたい。あわせて、Muse アプリの提供地域に日本が加わるかどうかも、メタのニュースルームで追える。
ことば
- AI エージェント — 質問に答えるだけでなく、調べる・書く・申し込むといった複数の手順を自分で進める AI。Muse はメタの個人向けエージェントで、アプリを閉じた後も作業を続けられる。
- Muse Code — メタのプログラミング用の道具。今回の Muse Wonder を発表の日から使える場所の一つで、上位版の Muse Wonder Full はその加入者だけが使える。
- ベンチマーク — AI の能力を同じ課題で測る試験。名前が挙がっても点数が無ければ、ほかのモデルと比べることはまだできない。
保険の請求や家計の管理を AI に頼めるようになったとき、あなたはどの手前で必ず自分に聞いてほしいと決めておくだろうか?



