IEA(国際エネルギー機関)は、2025年の電池の平均価格が前年より8%下がったとする分析を示している。2026年2月13日に公表した論評で、11月3日に公式 X で改めて紹介した。同じ論評は、2025年の電池パックの価格が中国では米国より30%、欧州より35%低かったとも書いている。
家に蓄電池を置くか、停電に備えてポータブル電源を買うかを考えている人にとって、「電池が安くなっている」という話は背中を押す材料に見える。ただ、IEA の数字が何の価格で、どこまでを言っているのかを分けて読むと、手元の判断に使える部分と使えない部分がはっきりする。
8%は、何の価格の話か
IEA によると、2025年の値下がりを支えたのは製造技術の進歩、電池の化学の改良、世界的な激しい競争だ。下げ幅が最も大きかったのは電力を貯める用途の蓄電システムで、2025年の世界平均価格は2020年の3分の1にまで下がったという。
電池の種類による差も大きい。リン酸鉄リチウム(LFP)電池は2025年に15%超値下がりし、ニッケル・コバルト・マンガン系(NMC)の5%未満を大きく上回った。その結果、LFP は平均で NMC より40%以上安く、電気自動車の電池の半分超、蓄電システムの90%超を占めるまでになった。
一方で、論評は家庭用の蓄電池の価格には触れていない。示されているのは電池パックや蓄電システムの世界の平均で、日本の家庭で付けるときの機器一式や工事の費用は、この数字の外にある。IEA の8%を、そのまま家庭用の見積もりの値下がりと読むことはできない。
安さの裏で、作り手は苦しい
市場は大きくなっている。IEA によると、リチウムイオン電池の市場は2025年に1,500億ドルを超え、前年から20%以上伸びた。用途の7割超は電気自動車で、蓄電システムが15%超を占める。2015年には電池の需要のほぼ半分がスマホなどの携帯機器だったが、2025年には5%を下回った。
同じ論評は、この安さに危うさがあることも書いている。LFP の正極材の作り手の多くが赤字で事業を続けており、業界の再編が起きる可能性が高まっているという。蓄電の分野は供給過剰で、中国以外の新しい作り手は、低コストの中国勢との厳しい競争にさらされている。
作る場所も偏っている。2025年に世界の電池の80%を大きく超える量を中国が作った。中国は2023年以降、電池の主要な部材に輸出規制を導入しており、2025年10月に発表した規制は、論評の執筆時点では一時停止されていた。IEA は、この構造的な偏りが近いうちに変わる見込みは小さいとみている。
家の電池を比べるときに残る問い
論評から家庭の判断に持ち帰れることは、大きく三つある。
- 電池の種類で価格が違う。製品の仕様に LFP かそれ以外かが書かれていれば、価格の差の理由の一つになる
- 今の安さには、作り手の赤字と供給過剰が含まれる。再編や輸出規制の動きしだいで、同じ下げ方が続くとは限らない
- 世界の平均価格と、家に付ける費用は別物になる。比べるなら、同じ容量・同じ工事の範囲でそろえた見積もりどうしで比べる
どれも「今買うべきか」の答えにはならない。電池の値下がりは、待つ理由にも、急ぐ理由にもなりうる。停電に備えたいのか、電気代を減らしたいのか、何を電池に任せたいかによって、価格の動きの読み方は変わる。
次に確かめたいのは、IEA が続きの分析を載せるとしている報告書 Energy Technology Perspectives 2026 と、予告しているナトリウムイオン電池についての別の論評だ。ナトリウムイオン電池は作る場所を分散できる可能性があると IEA は書く一方、いま計画されている工場もほぼすべて中国にあるとしている。
ことば
- LFP(リン酸鉄リチウム)電池 — 正極にリン酸鉄リチウムを使うリチウムイオン電池。材料の費用が構造的に安く、世界の蓄電システムの9割超に使われている。IEA によると2025年は他の種類より大きく値下がりした。
- 蓄電システム — 電池に、充放電を制御する機器などを組み合わせて電気を貯める設備。発電所の脇に置く大型のものから家庭用まであり、IEA が「3分の1」とした世界平均は家庭用の価格を示すものではない。
電池が安くなっていく流れの中で、あなたは家の電気のどこを、自分で貯めて持っておきたいだろうか?