防災庁が11月2日に発足し、同じ日に「事前防災徹底のための緊急要請」を出した。国民向けには細野豪志防災大臣のメッセージとして、家の耐震化と家具の固定、最低3日・できれば1週間分の水と食料の備蓄など、5つの取り組みを求めている。
国の体制を強くする組織の最初の要請に、家庭が宛先として入った。要請文は「国難級の災害では、行政だけによる対応には限界がある」と書く。司令塔ができた日に、国はまず家の中の準備を頼んだことになる。
防災庁と、3つの宛先に出た要請
防災庁が掲げるミッションは、国難級の大規模災害でも国民の生命・身体・財産を守り抜くため、災害対応の司令塔として防災体制を強めることだ。要請文は、発生が懸念される災害として千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火を挙げている。
緊急要請の宛先は国民だけではない。
- 国民向け:防災大臣からのメッセージとして発表
- 地方公共団体向け:事務次官名で都道府県知事に通知(市町村宛の内容を含む)。避難所の備蓄とトイレ・キッチン・ベッド・風呂の環境、個別避難計画、帰宅困難者対策などを、都道府県が市町村と一緒に点検するよう求める
- 各府省庁向け:防災大臣名で依頼。業務継続計画の点検・見直しなどを求め、必要に応じて勧告権を使うとしている
都道府県と各府省庁は年末に進捗を報告する。企業と国民向けの要請については、「防災に関する世論調査」などで点検するという。
家庭に求めた5つの備え
国民向けの要請は次の5項目からなる。
- 家の耐震診断・耐震化と家具の固定:昭和56年(1981年)以前に建てられた家は耐震診断を受けるよう求める。改修の費用負担が大きいときは、寝室やリビングなど一部だけでも実施して、家の中に安全な空間をつくることも考えられるとしている
- 水・食料、携帯用トイレなどの備蓄:最低3日間、できれば1週間分。飲料水は食事に使う分も含めて1人1日3リットル。ティッシュやトイレットペーパーなどの生活用品も挙げている
- ハザードマップ、避難場所、避難経路の確認:揺れやすさマップや津波ハザードマップで、自宅や職場のリスクを把握する
- 非常持ち出し品の準備:避難生活ですぐに必要なもの、ないと困るものをリュックなどに入れ、玄関など持ち出しやすい場所に置く
- 防災訓練への参加:避難、安否確認、炊き出しや簡易トイレの利用を体験し、近所と協力し合える関係を築く
1週間分を家に置くと、どれだけになるか
数字にすると、備えの重さが見えてくる。1人1日3リットルなら、4人家族の3日分で36リットル、1週間分で84リットルになる。2リットルのペットボトルで42本だ。収納の少ない集合住宅や一人暮らしの部屋では、置き場所そのものが最初の壁になる。
要請文はこの壁への答えも書いている。日頃使っているものを多めに買っておき、使ったら補充する習慣だ。非常食を一度にそろえるより、普段の買い物の量を少し増やすほうが、費用も手間も分散できる。
それでも抜けやすいものはある。携帯用トイレは水や食料と違い、普段の買い物で減って補充される品ではない。意識して買い足さない限り、家の中には増えない。
耐震化は費用の壁がいちばん高い。要請が「一部だけでも」と書くのは、全面的な改修に手が届かない家を前提にしているからだ。家具の固定は金具と工具で済む作業だが、賃貸住宅では壁に穴を開けられないこともあり、配置の見直しと組み合わせることになる。
家の備えの厚さは、近くの避難所で変わる
家に何をどれだけ置くかは、近くの避難所に何があるかと切り離せない。今回の要請は都道府県に、市町村の指定避難所の備蓄とトイレなどの環境を点検するよう求めた。その結果は年末に国へ報告される。
確かめられる次の一点は、自分の住む市町村のハザードマップと、指定避難所の場所だ。今週のうちに一度開いておけば、年末に自治体の点検の結果が出たとき、自分の地域に何が足りないかを読み比べられる。
ことば
- 防災庁:2026年11月2日に発足した、災害対応の司令塔となる国の組織。防災大臣は各府省庁に対策を求め、必要に応じて勧告権を使えるとしている。
- 耐震診断:建物が大地震にどこまで耐えられるかを専門家が調べること。要請は昭和56年以前に建てた家を対象に挙げる。この年に建物の耐震基準が大きく改められたためだ。
- 非常持ち出し品:避難するときにすぐ持って出るもの。要請は、避難生活で必要になるものを自分で考えてリュックに入れ、玄関などに置くよう求めている。
あなたの家は、助けが来るまでの最初の3日間を、何で持ちこたえるだろうか?