政府は10月9日、B型肝炎の給付金の請求期限を延ばす法律案を、臨時国会に提出した。いまの期限は2027年3月31日で、法案はこれを2032年3月31日まで5年延ばす。厚生労働省が同じ日に、法律案の概要と条文を公開した。
厚生労働省 第222回国会 (令和8年臨時会) 提出法律案 (10月9日提出)厚生労働省
対象は、子どものころの集団予防接種で注射器を使い回されたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染した人と、その家族だ。国は救済の対象を最大約45万人と見込むが、2026年3月末までに裁判を起こした人は約14万9千人にとどまる。期限まで1年半を切ったところで、残り時間が5年延びる見通しになった。
2027年3月末が、2032年3月末に
法案の中身は、ほぼこの一点だ。特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の第5条にある請求期限を、「令和9年3月31日」から「令和14年3月31日」に書き換える。期限までに裁判を起こしていれば、判決の確定や和解の成立から1か月が過ぎる日までは請求できる、という仕組みはそのまま残る。
あわせて、給付金の支払い業務を担う医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が長期の借り入れをできる期間も5年延ばす。施行は公布の日だ。
延長の理由として、厚労省の概要は請求の状況を挙げている。見込みの約45万人に対して提訴は約14万9千人で、まだ数多くの人が裁判を起こしていないと考えられる、という説明だ。
ただし、これは国会に出されたばかりの法案で、成立したわけではない。成立して公布されるまでは、いまの2027年3月31日が期限のままだ。
対象になりうる人と、請求の仕組み
厚労省の案内によると、対象は次の人たちだ。
- 1948年7月1日から1988年1月27日までの間に、7歳になるまでに受けた集団予防接種などで、注射器の使い回しによって感染した人
- その人から母子感染した人
- これらの人の相続人
生年月日でいえば、1941年7月2日以降に生まれた人が対象になる。
給付金は、手続きの書類を出せばもらえるものではない。国を相手に裁判を起こし、裁判所で要件を確かめたうえで和解する、という流れをとる。額は病態に応じて50万円から3600万円までだ。
期限が延びても、準備にかかる手間は変わらない
裁判を起こすには、持続感染を示す医師の診断書、注射の跡についての医師の意見書、カルテなどの医療記録をそろえることになる。弁護士に頼まず自分で起こすこともできるが、その場合は訴状を作り、資料を集め、裁判所にも出向く必要がある。給付金の対象と認められれば、和解金の4%に当たる額を国が弁護士費用として負担する仕組みはあるものの、実際の費用は依頼する弁護士で異なる。
資料を集めるのにも時間がかかる。古いカルテや予防接種の記録をたどるのは、本人にとっても家族にとっても手間のかかる作業だ。期限が延びれば、この準備に使える時間もそのぶん増える。
裁判を起こすかどうか、誰に頼むかは、一人ひとりの事情で決まる。迷う段階なら、まず公的な窓口で仕組みを聞くことができる。訴訟については厚労省の電話相談窓口 (03-3595-2252、平日9時から17時)、給付金の請求手続きについては医療情報基盤・診療報酬審査支払機構の相談窓口 (0120-918-027、平日9時から17時) が案内されている。
次に見るのは、衆議院と参議院の議案情報のページだ。この法案が審議され、成立したかどうかはそこで確かめられる。成立して公布されれば、厚労省の「B型肝炎訴訟について」のページの案内も新しい期限に書き換わるはずだ。
ことば
- 集団予防接種 — 国の制度にもとづき、多くの子どもにまとめて行われた予防接種。1988年1月27日に注射筒を1人ごとに取り替えるよう指導されるまでの間、使い回しが感染の原因になった。
- 和解 — 裁判のなかで、原告と国が話し合いで解決すること。B型肝炎の給付金では、裁判所が要件を確かめたうえでこの和解が成立すると、給付金を受け取れるようになる。
あなたや家族が子どものころに受けた予防接種の記録は、いまどこにあるか分かるだろうか?