政府は10月23日、エネルギー白書2026 (令和7年度エネルギーに関する年次報告) を閣議決定した。今年の白書は、2026年2月末からのホルムズ海峡の通航困難と、それに日本がどう対応したかに1章を割いている。そこには、店頭で170円程度だったガソリンが、補助がなければ最大221.2円になっていたという数字が載っている。
最も高い時期には、給油のたびに1リットルあたり50円ほどが店頭価格の外で払われていたことになる。その差を埋めていたのは予備費だ。家計のエネルギーが何に支えられていたかを、白書の数字から見ておきたい。この件は速報で閣議決定の第一報を出している。
白書が記録した半年
白書の概要資料によると、2月末の米国・イスラエルとイランの攻撃の応酬をきっかけに、ホルムズ海峡が通航困難になった。6月に戦闘終結の覚書が署名され停戦状態に入ったが、海峡をめぐる状況は流動的なままで、通航する船の数はまだ戻っていないという。
中東からの原油の調達量は、4月に前年同月の約3割まで落ちた。日本はこれに石油備蓄の放出で応じた。
- 3月16日: 民間備蓄15日分の放出を開始 (民間の備蓄義務を70日分から55日分に引き下げ)
- 3月26日: 国家備蓄1か月分 (約850万kl) の放出を開始
- 5月1日: 国家備蓄の第2弾、約20日分 (約580万kl) の放出を開始
米国などからの代わりの調達も広げ、5月以降の原油の処理量は前年と同じ程度に戻った。7月末時点の備蓄は、国家103日分・民間98日分・産油国との共同備蓄4日分の合計約206日分だという。石油危機のときのような節電要請や営業制限には至っていない、と白書は書いている。
170円の内側
家計に直接届いたのは、3月19日に始まった燃料油の「緊急的激変緩和措置」だ。対象はガソリン、軽油、重油、灯油、航空機燃料で、補助の額は原油価格に応じて毎週見直される。
3月16日時点の全国平均はガソリン190.8円、軽油178.4円、灯油154.1円だった。措置のあと、ガソリンは170円程度、軽油は160円程度、灯油は140円程度で推移している。9月14日時点のガソリンは169.9円で、白書は日米欧で日本が最も安い状況だとしている。
この価格を支えるため、政府は3月24日に7,948億円、9月1日に6,136億円の予備費の使用を閣議決定した。合わせて1兆4,000億円を超える。
一方で、量は足りていても、届く先に偏りが出た。原料や製品の調達への不安から流通の目詰まりが起き、潤滑油やシンナー、包装フィルムなどで相談が相次いだ。政府が直接販売の仕組みを設けて対応し、9月に受け付けた分を除いて解消したとしている。
家のエネルギーを、どこに預けているか
白書は今後の方向として、原油の調達先と輸送経路の多様化、そして化石燃料への依存を減らすことを挙げる。原子力の活用、地域と共生する再生可能エネルギー、ペロブスカイト太陽電池や次世代型地熱の産業基盤づくり、暮らしや移動の電化と効率化が並ぶ。
どれも国の側の話で、時間がかかる。家計の側でいま見えるのは、車の燃料と冬の灯油が、海峡一つと補助金に左右されていたという事実だ。補助の額は毎週変わり、終わる時期を白書は書いていない。
だからといって、すぐに太陽光や電気自動車へ切り替えれば済む話でもない。初期費用は大きく、住まいの条件や地域によって向き不向きがある。断熱の見直しで暖房の量を減らす、車を使う回数を見直すといった小さな手から、何をどれだけ電気や自前の手段に移せるかを測るほうが現実的だ。
次に確かめたいのは、資源エネルギー庁の石油製品価格調査で毎週公表される全国平均の店頭価格と、同庁が毎週告知する激変緩和措置の補助単価の推移だ。補助単価が下がれば、店頭価格は補助なしの水準へ近づいていく。
ことば
- ホルムズ海峡 — ペルシャ湾の出入り口にあたる海峡。中東の原油や天然ガスを積んだ船の多くが通り、アジアは欧米よりこの経路への依存が大きいと白書は指摘している。
- 石油備蓄 — 輸入が途絶えたときに備え、国と石油会社が原油や製品を蓄えておく制度。日本では石油危機を受けて整えられ、今回は国家備蓄と民間備蓄の両方が取り崩された。
- 予備費 — 予算を組んだ時点で使い道を決めず、予期しない支出に備えて取っておくお金。今回は燃料価格の補助に充てるため、閣議決定で使用が決められた。
冬に向けて、あなたの家の暖房と移動は、どれだけ海の向こうの石油に頼っているだろうか?