Google DeepMind は10月31日、英国の自治体の都市計画担当者向けに作った AI ツール「PlanAssist」を、イングランドの12の自治体へ新たに広げると発表した。ロンドンのバーネットとカムデン、南西部のドーセットの3自治体で6月から続けた試験では、担当者が住宅の増改築の申請を審査する平均の時間が58%減ったという。
屋根裏の部屋や増築、サンルームのような家の改修でも、英国では自治体の許可を待つ月日がかかる。PlanAssist が狙うのはその待ち時間で、家を手直ししたい人にとっては「書類を出してから返事が来るまで」の長さに触れる話だ。
PlanAssist がやる4つの下準備
DeepMind の発表によると、PlanAssist は Gemini をもとに、英国政府と Google Cloud、AI 企業の Faculty と共同で開発された。担当者に代わって、次の下準備を受け持つ。
- 申請書類と建築図面がそろっているかを確かめる
- 保存樹木の指定のような歴史・環境面の制約や、地元と国の計画方針に照らして申請を点検する
- 近隣の住民などから過去に異議が出ていないかを調べる
- 出典つきの審査報告の下書きを作り、担当者が手を入れられる形で渡す
発表は、住宅の増改築のような定型の申請が担当者の仕事の最大70%を占めるとしている。多くは許可しやすい申請なのに、時間だけを取られてきた部分だ。
3自治体の試験と、これからの1年
試験の数字は審査時間だけではない。PlanAssist が作った報告のうち70%を超える分は、担当者が手を入れずにそのまま承認したという。書類がそろっているか、地元の計画の規則に合っているか、といった判断を含む報告だ。
これから12か月は、実際の申請を使うベータ段階に入る。新しい12自治体は3回に分けて加わり、参加は計15自治体になる。都市部と農村部の両方を含めて、地域の違いで結果がどう変わるかを見るという。試験がうまくいけば、英国政府は2027年にイングランドのすべての自治体で使えるようにする計画だ。
58%が示すもの、まだ示していないもの
ただし、58%は3自治体の初期の試験で出た数字だ。担当者の作業時間が減ったことと、申請した人が返事を受け取るまでの日数が同じだけ縮むことは、別の話になる。申請の処理には、担当者の作業時間とは別に、近隣の意見を待つような期間も含まれうる。
70%を超える報告がそのまま通った一方で、残りは担当者が手を入れている。どの申請でも最後に判断するのは資格を持つ担当者で、AI が許可を出すわけではない。速さと引き換えに判断を手放す仕組みにはしていない、というのが発表の立て付けだ。
家の改修の手続きは国ごとに違い、PlanAssist はイングランドの自治体の道具だ。それでも、行政の待ち時間のうちどれだけが「書類がそろっているか」「規則に合っているか」を確かめる作業でできているのか、という問いは、どの国の申請にも当てはまる。
次に確かめたいのは、12自治体の最初のグループが実際の申請で使い始めたあと、DeepMind と英国政府が出すベータ段階の結果だ。3自治体と同じ58%が、地域を広げても出るかどうかがそこで分かる。
ことば
- 住宅の増改築の申請(householder application) — 英国で、自宅の増築や屋根裏の改装、サンルームの設置などのために自治体へ出す計画許可の申請。数が多く、内容も定型的なものが多い。
- ベータ段階 — 試作の段階を終え、実際の申請で使いながら性能を確かめる段階。PlanAssist では12か月をかけ、参加する自治体を15まで広げて結果を見る。
あなたが最後に出した役所の申請で、返事を待った時間のうち、どれだけが書類の確認だったと思うだろうか?