米ダラスのバイオ企業 Colossal Biosciences は10月14日 (米国時間)、ドードーの復活に向けて開発した AI の仕組み「GenoMorph」で、くちばしの大きさと形に関わる遺伝子の候補を約2300に絞り込んだと発表した。70種を超える現生の鳥で、頭の骨とくちばしがどう形づくられるかを調べ、その形を切り替える遺伝的なスイッチを学ばせたという。
17世紀に人間が絶滅させたとされる鳥を、遺伝子の編集で呼び戻す計画が、設計図の「読み方」の段階に入った。ただし、戻ってくるのが何なのかは、言葉の印象とは少し違う。
楽譜より難しいのは「編曲」
Colossal は公式の X で、ドードーの復活を「傷だらけの数枚のレコードから、失われたヒット曲を作り直すようなもの」とたとえた。難しいのは曲の編曲にあたる部分、つまり調節 DNA だという。
遺伝子そのものが体をつくる指示書だとすると、調節 DNA は、その指示をいつ、どこで、どれだけ強く働かせるかを決める。同社は、生きている鳥を調べてこの働き方を学ぶとしている。
ロイターによると、同社の最高科学責任者ベス・シャピロ氏は、残っている DNA がごくわずかな種では、同じ種の多くのゲノムを比べて特徴の原因を探す通常のやり方が使えないと説明した。そこで GenoMorph は、ドードーではなく生きている70種超の鳥から、骨格の形とスイッチの関係を学ぶ。得られた約2300の候補は、いまは実験室で一つずつ確かめている段階だ。候補はあくまで候補で、原因と決まったわけではない。
戻ってくるのは、ドードーに似せたハト
ロイターによると、ドードーのゲノムは95%まで組み上がり、解析は最終段階にある。同社は、最も近い現生種であるニコバルバトの細胞に、ドードーの特徴を編み込む計画だ。テキサス州で飼うニコバルバトは、成鳥36羽に増えた。
ここで押さえておきたいのは、生まれてくるのがニコバルバトを土台に、ドードーの特徴を加えた鳥だという点だ。ニコバルバトは飛べるが、ドードーは飛べなかった。同社は前年、ハイイロオオカミの遺伝子を編集してダイアウルフの特徴を加えたと発表しており、同じ考え方の延長にある。
CEO のベン・ラム氏は、GenoMorph を「ドードーのゲノムの宝の地図」と呼んだ。一方で、どの遺伝的な変化が本当に大事かを見極めること、多くの編集を鳥に施して次の世代へ受け継がせること、安全な生息地を用意することを、大きな課題に挙げている。孵化の時期は示されていない。
島に戻すかどうかは、島の側が決める
計画の行き先は、ドードーがもともと暮らしていたインド洋のモーリシャス島だ。同社は、モーリシャスの研究者や保全団体、政府と協議を続けている。ラム氏は、生態の調査と地域との協議が終わるまで、放す場所は決めないとしている。
論点は、技術の外にもある。安全な生息地をどう用意するかは、ラム氏自身が課題に挙げている。手間と資金をかけて戻した鳥が、島の暮らしや生態系にとって何になるのかは、遺伝子の解析では決まらない。絶滅した種を「戻す」ことに、保全の新しい道具を見る人もいれば、今いる危機種への投資が先だと考える人もいるだろう。
次に見るのは、Colossal の公式サイトにあるドードー計画のページだ。約2300の候補のうち、実験室でどれが確かめられたか、そしてモーリシャスでの協議がどこまで進んだかは、そこに順に載る。
ことば
- 調節 DNA — 遺伝子のそばにあり、その遺伝子をいつ、どこで、どれだけ働かせるかを決める DNA の領域。GenoMorph は、この領域とくちばしの形の関係を、生きている鳥から学ぶ。
- ニコバルバト — ハトの一種で、ドードーに最も近い現生の鳥。ドードーと違って飛ぶことができる。Colossal は、この鳥の細胞にドードーの特徴を編み込むことで復活を目指している。
もしドードーに似た鳥がモーリシャスの森を歩く日が来たら、あなたはそれを「取り戻した自然」と呼ぶだろうか?
