Anthropic は10月27日、社内の研究用に使っている未公開の AI モデルで、ブラウザや OS の重大な脆弱性を見つけ、実際に攻撃が成り立つ手順まで組み立てたと発表した。Chrome では、この報告をもとに62件の脆弱性に識別番号(CVE)が割り当てられ、Chrome 156 までに修正されている。
Anthropic Frontier Red Team の研究報告(10月27日・5つの攻撃手順・Chrome の62件と Chrome 156・開示の期間・防御側への提供)anthropic.com
穴を見つけるだけでなく、動く攻撃まで AI が組めるようになった。同じ力は、いずれ攻める側も手にしうる。読者の手元でできることは、更新を早く当てることに集約される。
5つの攻撃手順のうち、3つは暮らしの端末
Anthropic の研究チーム Frontier Red Team が公開したのは、5つの攻撃の手順だ。どれも人が最初に方向を示したあと、AI が穴を組み合わせて書き上げたという。
- Chrome(macOS): 細工したページを開くだけで、ブラウザの守りの外で任意のプログラムを動かせた。62件はすべて深刻度が「重大」か「高」
- Safari: どのサイトの JavaScript からでも、閲覧履歴や Cookie を読み、ログイン中の他のサイトに本人として問い合わせを送れた。メールにログインしていればメールを読まれ、銀行にログインしていれば残高を見られうる状態だった
- Android: 盗まれたスマートフォンから、ロックを解かずに写真などの個人情報を取り出せた。試験には実機の Pixel 9 を使った
- Windows: HTTP/3 に応答する機械を、ネットワーク越しに少しのデータを送るだけで落とせた(CVE-2026-33096)
- Linux: 特定の通信方式を受け付けるサーバーに、認証も操作もなしで管理者として命令を実行させられた(CVE-2026-98432)
後ろの2つは主にサーバーの話で、前の3つは毎日手に持つ端末の話だ。Apple は報告を受けた当日に受け取りを返し、修正をすでに配っている。Android の件は Google が対応済みとし、Windows と Linux もそれぞれ修正された。
盗まれたスマホは、ロックだけでは守りきれなかった
Android の件は、手元から離れた端末の守りを考え直させる。ロックしたスマートフォンは、USB でつないでもデータを渡さないように作られている。AI は、その守りを含めて Android が重ねている複数の防御を一つずつ回り込み、3つの脆弱性をつないで写真を取り出した。
つまり、ロック画面は端末を手に取った人に対する最後の壁ではなかった。修正は済んでいるが、修正を当てていない端末では同じ道が残る。更新が止まった古い端末は、この種の修正を受け取れない。
見つけた穴は、直してから話す
Anthropic は、見つけた脆弱性をそれぞれの開発元に知らせ、修正に90日、その後さらに45日を置いてから、公開済みの情報を超える詳細を話す決まりで進めたとしている。今回の記事も、修正が出たものについて書かれている。
同社は、こうした力を持つモデルを外には出していない。代わりに、審査を通ったセキュリティの専門家が、防御のために高度な機能を使える仕組みを広げた。開発者には、コードを変更する段階で穴を探す Claude Code の追加機能を公開し、自分のコードを調べることが「これまで以上に重要」だと呼びかけている。
更新を当てるのは、使う人の仕事として残る
開発元が直しても、修正が端末に入るのは使う人が更新を当てたときだ。Chrome は再起動で新しい版に切り替わり、スマートフォンの OS の更新は再起動と数分の待ち時間を求める。手間は小さいが、後回しにしやすい。
一方で、更新には相応の負担もある。古い端末では OS の更新が配られなくなり、アプリが動かなくなることもある。更新を当て続けられない端末を、ロックをかけたまま持ち歩くか、引退させるか。AI が穴を早く見つけるほど、修正が配られてから狙われるまでの時間も短くなりうる。
今日確かめられる一点は、手元の Chrome の版だ。設定の「Chrome について」を開き、156以降になっているかを見ればいい。Android は、端末の設定で最後に届いたセキュリティ更新の日付を見ておきたい。来月初めに Android のセキュリティ情報(Android Security Bulletin)の新しい版が出たら、その月の更新が自分の端末にも届くかを確かめる。
ことば
- 脆弱性 — ソフトウェアの設計や作りの誤りで、攻撃者が想定外の操作をできてしまう箇所。今回の Chrome の件のように、一つでは害がなくても、いくつかをつなぐと攻撃が成り立つことがある。
- CVE — 公開された脆弱性につける共通の識別番号。開発元や利用者が同じ穴を同じ名前で呼べるようにするためのもので、修正の告知や更新内容の説明にもこの番号が使われる。
あなたの手元で、更新が配られなくなった端末は、いまも何台動いているだろうか?