人型ロボット Digit を作る米 Agility Robotics は11月5日、Nasdaq で取引を始めた。ティッカーは AGLT で、Churchill Capital Corp XI との統合によって約4億6,500万ドル (費用を引く前) を調達したという。同社はこれを、米国で初めての人型ロボット専業の上場と位置づけている。
上場の発表文は、人型ロボットが今どこで働き、次にどこへ向かうかを同社自身の言葉でまとめた資料でもある。読んでみると、工場と物流の話は細かく書かれている一方で、家庭についての記述はない。暮らしまでの距離を測る材料として読む。
発表が挙げる働き場所
Agility によると、Digit は実際の現場で3年近く、合計6万5,000時間を超えて動いてきた。
- GXO のジョージア州の拠点で10万個を超えるトートを運び、2027年初めに米国の2拠点が加わる
- Schaeffler と Toyota Motor Manufacturing Canada が顧客として名前を連ねる
- 農機の AGCO は2027年に試験導入を予定している
- 大手の自動車メーカーを含む3社が有料のプログラムに入っている
見込み客は自動車、製造、航空宇宙、物流、消費財、防衛で30社を超える。稼働している台数は書かれていない。
次の Digit 5 に書かれた予定
9月に発表した次の世代 Digit 5 は、約23kg (50ポンド) の荷物を繰り返し持ち上げる設計で、早期の提供が2027年前半、一般の提供は2027年末を目標にする。充電は9分、24時間のうち20時間以上働くことを狙うという。複数年の注文は3億ドルを超えるが、製品の仕様や節目の達成を条件にしたものだ。
安全については、人とロボットがより近くで働ける設計を目標に、工場向けの安全システムを FORT Robotics と開発していると書く。具体的な認証や事故の件数は発表にない。同社は発表の末尾で、Digit 5 の開発の遅れや注文の条件の未達、これまでの純損失などをリスクとして挙げ、先の見通しは保証ではないとしている。
家までの距離はどこにあるか
Agility は Digit を「人のために作られた環境」で働くロボットと説明する。家も人のために作られた環境だが、工場や倉庫とは条件が違う。運ぶ箱の形はそろっておらず、床には物が置かれ、子どもやペットが予測なく動く。止まったときに直す担当者もいない。
そのため当面、人型ロボットが暮らしに触れるのは間接的な場面が中心になりそうだ。通販の荷物が届くまでの裏側や、車を作る工場での持ち運びの仕事である。
家庭用をうたう人型ロボットを検討する日が来たときは、発表の数字より先に次の点を確かめると判断しやすい。
- 何をどれだけ持ち上げられ、できない作業は何か
- 子どもやペットのそばで動くときの安全を、どの基準で確かめたのか
- 止まったときに誰がいつ直しに来て、費用はいくらか
- 買い取りか利用料か、それに家の中の映像や音のデータをどう扱うのか
次に開くのは Agility のニュースのページだ。2027年前半に予定する Digit 5 の早期提供が、台数と担う作業の範囲つきで公表されるかを見たい。
ことば
- Digit — Agility Robotics の二足歩行の人型ロボット。倉庫や工場で箱の運搬のような繰り返しの作業を受け持つ。現行は Digit 4 で、次の世代の Digit 5 を開発している。
- SPAC との統合 — 上場済みの買収目的の会社 (今回は Churchill Capital Corp XI) と合併して上場する方法。通常の新規上場とは手続きが違い、統合と同時に資金を調達することが多い。
人型ロボットが家に来るとしたら、あなたが最初に任せたい仕事と、任せたくない仕事はそれぞれ何だろうか?
