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Samsung・LG のテレビの ACR、HDMI でつないだ画面まで照合

スマートテレビの ACR は HDMI でつないだ画面まで照合していた。英米の研究が示した仕組みと、同意を外す設定、家でできる対策の手間と限界。

Samsung・LG のテレビの ACR、HDMI でつないだ画面まで照合のイメージ

この記事でわかること

  • Samsung・LG のテレビの ACR は、HDMI の外部入力でも画面を照合して送っていた (IMC 2024 の研究)
  • 視聴情報の同意を外すと、英米どちらでも ACR のサーバーとの通信は止まった
  • ネットワーク分離や DNS での選別には手間があり、日本で売られる他社機の挙動はまだ分かっていない

Samsung と LG のスマートテレビを英国と米国で調べた研究チームが、2024 年の国際学会 IMC で、画面の中身を照合して送る ACR(自動コンテンツ認識) は、テレビをパソコンやゲーム機の外部ディスプレイとして HDMI でつないでいるときも動いていたと報告した。設定で同意を外すと、ACR のサーバーとの通信は止まった。

居間のテレビは、放送や配信を映すだけの箱ではない。何を映しているかを、作った会社に知らせる機械でもある。それを知ったうえで、どこまで許すかを決めるのは、テレビの持ち主の側だ。

ACR がしていること

ACR は、音楽を聞かせると曲名が分かるアプリに近い仕組みだ。テレビが画面の内容を一定の間隔で切り取り、指紋のような短いデータにして、メーカー側の照合サーバーへ送る。論文が引くメーカーの資料では、Samsung は 0.5 秒ごと、LG は 0.01 秒ごとに画面を取り込むとされる。研究チームが通信を観測すると、送信のまとまりは Samsung でおよそ 1 分ごと、LG でおよそ 15 秒ごとに出ていた。

論文の結論で重いのは、使い方を選ばない点だ。テレビ放送でも、配信アプリでも、HDMI の外部入力でも通信は出ていて、外部入力は通信量が最も多い場面の一つだった。アカウントにログインしているかどうかも、ほとんど影響しなかった。つまり、テレビにつないだ仕事用のパソコンの画面も、照合の対象になりうる。

もう一つ、別の報告もある。10 月 23 日、Samsung のテレビを解析したという研究者 @log4j が、マイクのない機種は、つながったサウンドバーや Bluetooth 機器のマイクを探すと X に投稿した。こちらは個人の報告で、Samsung の説明や第三者の検証はまだ出ていない。

テレビの値段と、視聴データの値段

テレビが安く買える理由の一端は、決算に出ている。米国のテレビメーカー Vizio の 2024 年第 3 四半期 (7〜9 月) は、テレビ本体の事業が 670 万ドルの赤字だった一方、広告と視聴データの事業は 1 億 1580 万ドルの粗利を出した。本体で稼がず、画面の前の人で稼ぐ形だ。

規制も動き始めた。米テキサス州の司法長官は 2026 年 2 月 26 日、Samsung と合意し、明示の同意なしに ACR の視聴データを集めることをやめさせ、分かりやすい同意画面へテレビを更新させると発表した。同じ州は Sony・LG・Hisense・TCL も訴えており、発表の時点でその訴訟は続いている。

家でできることと、その手間

研究で効いたのは、視聴情報の同意を外す設定だった。論文の調査では、Samsung は視聴情報サービスへの同意 (英語の画面では Viewing Information Services)、LG は視聴情報の利用への同意 (同 Viewing information agreement) を外すと、英米どちらでも ACR のサーバーとの通信が消えた。日本語のメニュー名は機種と地域で違うので、プライバシーや利用規約の項目から「視聴情報」を探すことになる。論文の手順では、広告の個人化や音声情報の同意もあわせて外している。

その先の手もある。

  • テレビやスマートスピーカーを、ルーターのゲスト用ネットワークに分ける。家のパソコンやスマホと同じ網に置かない
  • 家全体の通信を DNS の段階で選別する NextDNS や Pi-hole で、追跡用の宛先を止める

どちらにも手間と失敗の条件がある。ゲスト用ネットワークを分けられないルーターもある。DNS で止めると、一部のアプリや更新が動かなくなることがあり、記録を見て宛先を一つずつ許可し直す作業が出る。同意を外せば、おすすめの番組の表示など、視聴データを前提にした機能も弱くなる。

まだ分かっていないことも多い。研究が調べたのは 2 社・2 か国で、日本で売られている他社のテレビがどう動くかは、この論文の範囲の外にある。マイクの探索の報告も、検証はこれからだ。次に確かめる先は、テキサス州司法長官の発表ページだ。LG を含む 4 社の訴訟が合意か判決に進めば、ほかのメーカーの同意画面がどう変わるかがそこに出る。

ことば

  • ACR — 自動コンテンツ認識。画面や音を短いデータにして照合し、何を見ているかを特定する技術。広告の効果測定や番組のおすすめに使われ、テキサス州と Samsung の合意は、この同意の取り方そのものを問題にした。
  • IMC — インターネットの計測研究を扱う国際学会。実際の通信を外から観測して確かめる研究が集まる場で、今回の論文も、テレビの中を開けずに通信だけを見て ACR の動きを測った。
  • DNS フィルタリング — 機器がインターネット上の宛先を引くときの問い合わせ段階で、決めた宛先への接続を止める方法。ルーターに設定すれば家中の機器にまとめて効く一方、必要な通信まで止めることがある。

あなたの居間のテレビに、何を見ていたかを知らせる役まで任せたままにするだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。