comma.aiは10月23日、後付けの運転支援ソフト「openpilot」の新版0.11.2を公開した。目玉は、外付けのデスクトップ用GPUを車内でつなぎ、これまでの小型モデルの約15倍のパラメータを持つ大きな運転モデルを動かせるようにしたことだ。
comma.ai 公式ブログ openpilot 0.11.2 リリース記事 (10月23日)comma.ai blog
自分の車に足す運転支援が、小さな車載機の中の計算から、PCのグラフィックボードを足元に積む段階に入った。性能の伸びと引き換えに、費用と手間、そして運転者が引き受ける責任の重さもはっきり見えてくる。
運転モデルは約15倍、計算量は約55倍
comma.aiのリリース記事によると、0.11.2は「chestnut級」と呼ぶ大型の運転モデルを載せた最初の版だ。パラメータは0.11.1の小型モデルの約15倍、計算量は約55倍になる。映像を読み取る部分にはConvNeXtという画像認識の構造を使い、その学習に使う走行区間は50万から250万に増えた。
学習のやり方も変わった。運転モデルを鍛える土台として、40億パラメータの「世界モデル」を、学習に使う走行区間を250万から1000万に増やして作り直した。さらに新しいモデルは、人の運転をまねるだけでなく、強化学習で後から補正をかける。元の運転方針を固定したまま、実際に出た加速度と世界モデルが予測した加速度を比べ、急なハンドル操作や加減速を嫌う項も足して、補正の分だけを学ばせる。
足元にGPUを積むchestnut
大きなモデルを動かすのは、comma.aiが合わせて売り出したchestnutという部品だ。PCIeをUSBに変える基板で、デスクトップ用のGPUを車載機「comma four」につなぐ。comma fourとはUSB3でつながり、電源は車のシガーソケットからXT60端子で取るか、PC用の電源装置を使う。GitHubのリリースノートも、外付けGPUで大きなモデルを動かす対応を新機能に挙げている。
comma.aiのストアには、次の値段が並ぶ(10月25日時点・米ドル)。
- comma four本体: 999ドル(車種に合う配線ハーネスを選んで同梱)
- chestnut本体のみ: 249ドル(GPUと電源は自分で用意。出荷まで2〜6週間)
- chestnutの車載一式: 899ドル(AMD Radeon RX 9060 8GB、3mのUSB3ケーブル、車の電源ケーブル、固定用ストラップ付き。出荷まで4〜12週間)
車載一式の手順では、組み立てたGPUを助手席の足元か助手席の下に、空気の通り道を残して固定する。大きなモデルを動かすなら本体と一式でおよそ1,900ドルになり、米国外への発送には一律30ドルの送料がかかる。
対応車と、運転者が負う役割
0.11.2では、フォルクスワーゲンID.4(2021〜2025年式)とクプラ・ボーン(2021〜2023年式)に対応した。フォルクスワーゲンの電気自動車向けの車台「MEB」で初めての対応車で、ID.3やシュコダ・エンヤックなど、同じ車台のほかの車種も続く予定だという。対応するかどうかは車種と年式で決まる。日本で乗っている車が対象かは、comma.aiの対応表で年式まで照らし合わせるところから始まる。
外せないのが運転者の役割だ。openpilotの安全方針の文書は、openpilotを前の車に合わせて速度を保つ機能(ACC)と、車線の中央を保つ機能(ALC)の組み合わせと位置づけ、運転者が常に注意を払うことを求めている。運転者の注意は安全に使うための必要条件であって十分条件ではない、とまで書く。
0.11.2では、運転者を見守るカメラの警告も、国連の基準(UN規則171号)に沿って作り直された。3秒で出ていた文字だけの警告をなくし、5秒で出る最初の警告に新しい音を付けた。注意がそれて使えなくなる時間は最初が1分で、繰り返すと5分、15分、30分と延びていく。
後付けを選ぶ前に
自分で運転支援を足す魅力は、メーカーの更新を待たずに、新しいモデルを自分の車で試せることにある。comma fourもchestnutも、30日以内なら返品して全額返金を受けられる。
一方で、手間は確実に増えた。GPUの組み立て、車内での固定、配線、熱の逃げ道の確保までを自分で引き受ける。注文から届くまで、車載一式なら最長で3か月近い。大きなモデルが実際の道でどれだけ変わるかは、公開から2日しか経っておらず、乗った人の記録が積み上がるのはこれからだ。日本の道で使うなら、国内の決まりの上でどう扱われるかも、使う前に自分で確かめる点に入る。
次に確かめる先は、comma.aiの対応表と、openpilotのGitHubのリリース一覧だ。MEB車台のほかの車種がどの版で入るかは、次のリリースノートが答えを持つ。
ことば
- openpilot — comma.aiが開発するオープンソースの運転支援ソフト。対応する車に専用の車載機を付けると、前の車との距離に合わせた速度の調整と、車線の中央を保つ操作を手伝う。運転の責任は運転者に残る「レベル2」の運転支援として作られている。
- 世界モデル — いまの状況から、次に周りがどう動くかを予測するAIモデル。openpilotでは運転モデルを鍛える土台として使われ、今回は40億パラメータまで大きくし、強化学習の採点にも使われた。
- chestnut — comma.aiの、デスクトップ用GPUを車載機comma fourにつなぐための変換基板。USB経由でGPUの計算力を足し、車の中で大きな運転モデルを動かせるようにする。GPUと電源ケーブルまで揃った車載一式もある。
ハンドルの補助を、足元のGPUにどこまで任せるか。あなたはその手間と責任を、どこまで自分で持ちたいだろうか?
