JAXA は10月20日、火星の衛星を調べる探査機 MMX を載せた H3 ロケット 10 号機を種子島宇宙センターから打ち上げた。打上げは午前 4 時 41 分 03 秒で、ロケットは計画どおり飛行し、約 1 時間 11 分後に MMX を正常に分離して軌道に投入したことを確かめたと発表した。
MMX はこれから約 1 年かけて火星の近くまで飛び、衛星フォボスに降りて砂や石を集め、2031 年に地球へ持ち帰る計画だ。火星のまわりから試料を持ち帰った例は、まだどの国にもない。
打上げで確かめられたこと
JAXA の発表で確かめられたのは、ロケットが計画どおりに飛んだことと、MMX が正常に分離され、予定の軌道に入ったことまでだ。探査機の太陽電池の展開や地上との通信など、打上げ後の初期の運用がどう進んでいるかは、この発表には書かれていない。打上げ当日には記者会見も開かれ、JAXA の公式 YouTube で経過が説明された。
10 グラムの砂を持ち帰るまで
MMX のプロジェクトサイトによると、計画の流れは次のとおりだ。
- 2027 年: 火星のまわりに到着し、フォボスを目指す
- 2027〜2030 年: フォボスの近くを回りながら詳しく観測し、2 回の着陸で 10 グラムの試料を集める。もう一つの衛星ダイモスも観測する
- 2031 年: 試料の入ったカプセルを切り離して大気圏に突入させ、オーストラリアで回収する
探査機には 13 の観測装置が載り、小型の車輪付きローバーも含まれる。NASA、フランスの CNES、ドイツの DLR、ESA、オーストラリア宇宙庁が、装置の提供などで加わっている。
10 グラムは、手のひらに少し載るほどの量だ。それでも、地球の実験室で最新の装置を使い、何十年もかけて調べ直せる点が、探査機の上だけで測るのとは違う。
フォボスの砂で何を確かめるのか
プロジェクトサイトは、目的として火星の衛星がどうやってできたのかを解き明かすこと、水や有機物が太陽系の中でどう運ばれたのかを探ること、火星のまわりの移り変わりを知ることを挙げる。地球のような岩の惑星に、生命の材料がどう届いたかという問いにもつながる。
ここから先の道のりは長い。火星までの航行、着陸、試料の採取、帰りの航行と、どれも一度きりの難しい工程が続き、成果が手元に届くのは 5 年ほど先になる。
次に確かめたいのは、打上げ後の初期の運用の続報だ。JAXA のプレスリリースと MMX のプロジェクトサイトで、探査機が地上と正常に通信し、火星へ向かう軌道を順調に進んでいるかが示される。
ことば
- サンプルリターン — 探査機が天体の砂や石を集め、地球へ持ち帰ること。日本の「はやぶさ」と「はやぶさ2」が小惑星で成功させ、MMX はその経験を火星の衛星で生かす。
- フォボス — 火星の 2 つの衛星のうち大きいほう。形はでこぼこで、どうやってできたのかがまだ決着していない。
5 年後に届く 10 グラムの砂から分かってほしいことを一つ挙げるとしたら、あなたは何を選ぶだろうか?