国民生活センターは10月20日、同センターを名乗る「最終確認通知書」というハガキが届いたという相談が、全国の消費生活センターなどに寄せられていると公表した。ハガキは未納料金をめぐって裁判所に訴状が出されたと告げて電話を促すが、同センターがこうしたハガキを送ることは「絶対にありません」としている。
同センターが求める対応は、連絡せずに無視することだ。ただ、裁判を名乗る書面を前にして「無視していい」と言い切れる人は多くない。不安を消すのに役立つのは、本物の裁判の知らせがどう届くかを知っておくことだ。
ハガキの文面が電話へ誘う順番
同センターが公開した実物の文面は、次の順番で読み手を電話へ向かわせる。
- 「契約者として登録されている当該会社」への未納料金について、管轄裁判所へ訴状が出されたと通知する
- 訴訟の内容や取り下げの相談は、「記号番号」を伝えれば担当職員が調べるとする
- 連絡がなければ口頭弁論の呼出状が届いて出廷となり、欠席すると給料や財産が差し押さえられた例がある、と書く
- 「身に覚えが無い場合」こそ早急に連絡するよう求める
連絡先は050で始まる番号と東京都目黒区の住所で、差出人欄は「国民生活センター」「相談情報部」となっている。どの会社の、何の料金なのかはどこにも書かれていない。
相談を寄せた人は、契約内容や担当者名が無いこと、そもそもなぜハガキなのかを不審に思い、記載の番号には電話しなかった。
効いているのは最後の一文だろう。身に覚えのない人ほど、誤解を解こうとして電話をかけたくなる。会社名を伏せた文面は、読む人が自分の心当たりを当てはめる余地も残す。
本物の訴状は封書で手渡される
国民生活センターは2018年、「地方裁判所管理局」を名乗る同種のハガキについて注意を呼びかけた際、正式な裁判手続では、訴状は「特別送達」と書かれた裁判所名入りの封書で郵便局員が直接手渡すのが原則だと説明している。ハガキで郵便受けに入ることはない。
逆向きの落とし穴もある。裁判所は、支払督促や少額訴訟の手続を悪用して、架空の請求を本当に裁判所へ申し立てる例があると注意を呼びかけている。この場合は本物の裁判所から書類が届き、身に覚えがないからと放置すると、架空の請求について判決などが出て、強制執行を受けることがあるという。
「裁判の知らせはすべて無視」と覚えると、こちらで失敗する。見るべきは文面の中身より、届き方と差出人だ。ハガキなら無視でよく、裁判所名入りの封書が手渡しで届いたなら放置しない。裁判所は、封書に書かれた電話番号が偽物でないかを自分で調べたうえで、裁判所に直接問い合わせるよう勧めている。
受け取ったとき、家族が受け取ったとき
- 記載の番号には電話しない。記号番号も伝えない
- 料金の払い忘れに心当たりがあっても、ハガキの番号ではなく、自分が契約している会社の窓口を自分で調べて確かめる
- 迷ったら消費者ホットライン「188」に電話する。住んでいる地域の消費生活センターなどを案内してくれる
- 実家の親など、離れて暮らす家族にも一度話しておく
手間がかかるのは最後の項目だ。ハガキは一人で受け取るので、電話をかけてしまってから家族に話す、という順番になりやすい。届く前に一度話題にしておくほうが早い。
次に確かめたいのは、国民生活センターの「国民生活センターをかたる電話やメール等にご注意ください!」のページだ。10月20日にも更新されており、ハガキ・電話・メールの手口が実物の見本とともにまとまっている。差出人名や文面が変わった偽物が出れば、ここに加わる。
ことば
- 特別送達 — 裁判所が訴状などを送るときの郵便の方式。封筒に「特別送達」と書かれ、郵便局員が受取人に手渡すのが原則だ。郵便受けに投げ込まれるハガキとは、届き方の時点で違う。
- 支払督促 — 裁判所を通じて、相手に支払いを求める手続き。申立ての形式がそろっていれば相手の言い分を聞かずに発せられるため、架空の請求に悪用されることがあると裁判所は注意している。
- 消費者ホットライン 188 — 「いやや」と覚える全国共通の3桁の番号。かけると、住んでいる地域の消費生活センターなどにつないでくれる。架空請求かどうか迷ったときの最初の相談先になる。
実家の郵便受けに同じハガキが入ったとき、最初に相談される家族はあなただろうか?