Deutsche Telekom、Orange、Telefónica、Vodafone の欧州の携帯大手4社は10月19日、衛星通信向けの周波数の割り当てに共同で入札することを検討する意向書に署名したと発表した。狙いは、スマートフォンが基地局の届かない場所で衛星と直接つながるサービスを欧州で広げることだ。
Deutsche Telekom ほか4社の共同発表 10月19日 (共同入札を検討する意向書・地上設備を担い衛星には直接投資しない・衛星の相手は未定)telekom.com
衛星そのものは4社では持たず、組む衛星の相手もまだ決まっていない。日本ではすでにスマートフォンが衛星と直接つながるサービスが動いており、その中身と比べると、欧州がいまどの段階にいるかが見える。
4社が引き受けるのは地上の側
発表によると、4社は地上の通信設備と、衛星との連携や監視の機能を欧州に置く役を担う。衛星群には直接投資せず、それはこれから選ぶ衛星事業者が提供する。
掲げる目的は、電波の届きにくい地域でもつながる状態を求める利用者に応えること、公共の通信網をより途切れにくくすること、重要な通信を守ること、そして欧州の衛星群の育成を支えることだ。仕組みはどの携帯会社にも差別なく開き、各社が自社の契約者に衛星直接通信を提供できるようにするという。今回の意向書は、各社が既に結んでいる衛星事業者との提携を置き換えるものではないとも書いている。
背景にある2GHz帯の選び直し
入札の対象になるのは、欧州委員会が5月27日に選定手続きの案を示した2GHz帯の衛星移動通信向けの周波数だ。いまの免許は2027年5月に切れる。欧州委員会の案では、この帯域の3分の1を政府の重要通信や安全保障の用途に、残る3分の2を一般向けの用途にあてる。一般向けの半分は欧州から新たに参入する事業者向けとし、もう半分は欧州内外の事業者が使えるようにする。
つまり、欧州の利用者が圏外で衛星につながれるようになるまでには、まず周波数を誰に割り当てるかが決まり、そのうえで衛星の相手が選ばれる、という順番を踏む。サービスの開始時期や料金は、今回の発表には書かれていない。
日本ではもう使える、ただし条件つき
日本では KDDI が au Starlink Direct を提供している。公式ページによると、au の電波も Wi-Fi も届かない場所で、対応機種のスマートフォンからテキストメッセージの送受信、対応アプリでのデータ通信、現在地の共有、緊急速報メールの受信ができる。au の利用者は当面、追加料金なしで使える。
一方で、使える場面は限られる。周りに木や山や建物がなく、空が見える場所でなければつながりにくい。データ通信は対応するアプリに限られ、ブラウザや動画、SNS は使えない。音声通話はまだできず、高速データ通信と音声通話は2027年内の対応を予定している。対応機種であることも前提になる。
山や海、災害で基地局が止まったときの連絡手段として、圏外でも文字が送れることの意味は大きい。ただ、それは電話やいつものネットがそのまま使える状態とは違う。欧州の計画が形になっても、少なくとも最初はこの種の制約から始まるとみるのが自然だろう。
次に見るのは、4社が選ぶ衛星事業者の発表と、欧州委員会の2GHz帯の選定手続きの行方だ。日本の側では、au Starlink Direct の公式ページにある音声通話の対応時期が更新されるかが、圏外での備えの中身を変える。
ことば
- 衛星直接通信 (D2D) — 専用の衛星電話ではなく、ふだん使っているスマートフォンが宇宙の衛星と直接電波をやりとりする仕組み。基地局のない山や海、災害時の圏外を埋める手段になる。
- 意向書 — 正式な契約の前に、当事者が「この方向で検討する」と確かめ合う書面。今回の4社の意向書は、入札そのものを決めたものではない。
圏外になったとき、あなたのスマートフォンが何につながり、何ができないのか、確かめたことはあるだろうか?


