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Anthropic、創薬の6組織と進めた Claude の初期成果を公開

Anthropic は10月27日、新薬を開発する6つの組織と数か月にわたり進めてきた研究協力の初期成果を公開した。分子の設計だけでなく、製造記録の点検や規制当局への書類の下書きまで Claude が担った。多くはまだ人での試験の前の段階だ。

Anthropic、創薬の6組織と進めた Claude の初期成果を公開のイメージ

この記事でわかること

  • 協力先は BigHat Biosciences、Bristol Myers Squibb、Divergence Labs、Enveda、Generate Biomedicines、The Column Group の6組織。Anthropic 自身も創薬を始めた
  • Enveda では製造記録1,061ページの点検で、人が見つけた11件をすべて拾い、人が見逃した7件も指摘。確認にかかる時間は89%減った
  • 成果の多くは前臨床で、人での試験はまだ。自社の筋ジストロフィーの候補は、早ければ2028年の後半に人での試験を始める見込み

Anthropic は10月27日、新しい薬を開発する6つの組織と、この数か月にわたって深い研究協力を続けてきたと公表し、その初期の成果をまとめた。協力先は BigHat Biosciences、Bristol Myers Squibb、Divergence Labs、Enveda、Generate Biomedicines、The Column Group で、Anthropic 自身も創薬に乗り出している。

AI と薬の話は「新しい分子の候補を考える」場面で語られることが多い。今回の報告が見せたのは、その外側だ。製造の記録を点検し、規制当局へ出す書類を下書きし、臨床試験の計画を見積もる。薬が届くまでの時間のうち、研究室の外で過ぎている部分にも Claude が入り始めている。

分子の設計から、書類の山まで

Anthropic によると、薬の開発には、狙う標的を決める初期の研究、性質の合った分子の設計、安定して大量につくるための調整、臨床試験に必要な書類づくり、試験の設計と運営など、多くの仕事がある。ボトルネックは一か所ではなく、工程のあちこちに散らばっているという。6組織との協力は、その工程ごとに Claude を当てたものだ。

  • Generate Biomedicines: がんの治療法 CAR-T 細胞療法を、固形がんにも使えるようにする研究。Claude Code が提案した設計の一つは標準より約70%短く、実験では、がん細胞を見つけるための受容体が約10倍つくられた
  • Divergence Labs: 食物アレルギーの新しい治療法の研究。Claude が目標を設計計画に落とし込み、約1か月でおよそ3万5千の抗体の設計をほぼ自律的に生み出した。その中から、試験で手応えのある候補が見つかった
  • BigHat Biosciences: 薬の候補の改良。Claude が変更を提案し、約10週間で約1,010の変異体がつくられ、試された
  • Enveda: 製造と書類。製造記録1,061ページの点検で、人の確認者が見つけた11件の問題をすべて拾い、人が見逃した7件も指摘した。確認にかかった時間は25時間超から3時間未満へ、89%減った。規制に関わる書類の下書きでは、手作業で約3か月かかるものを4時間で書いた
  • The Column Group: 新しい会社 Pleiades を立ち上げ、少人数でも多くの薬の開発計画を Claude で回せるかを試している
  • Bristol Myers Squibb: 臨床試験の計画の評価と、成功の見込みの見積もり。2027年に取り組みを広げる予定

見落とされがちなのは、書類の側の数字だ。Enveda では、製造を担う化学者が仕事の時間の最大75%を書類に使っていたという。ここが縮むなら、研究者が実験に戻れる時間が増える。

まだ、人での試験の前にある

Anthropic 自身も、この研究はまだ初期の段階だと書いている。多くは前臨床、つまり薬の候補を人で試す前の段階にある。実験室で良い結果が出ても、人での試験で効き目や安全性が確かめられるまでには長い時間がかかり、途中で止まる候補も多い。

自社の取り組みとして、Anthropic は一人で会社を営んでいた Mithril Medicine を買収した。創業者の Cody Tranbarger 氏は、2つのまれな型の筋ジストロフィーの治療法を開発していた。外部の11の研究所との契約や段取り、実験の手配を Claude で回し、一方の型では、構想からマウスでの有望な結果までを18か月足らずで進めた。候補がこのまま持ちこたえれば、人での臨床試験は早ければ2028年の後半に始められる見込みだという。

患者や家族にとって、これはすぐに使える治療が増えたという話ではない。見えてきたのは、薬が届くまでの年月のうち、どの部分が縮みうるかの手がかりだ。

研究の現場の外にいる人が持てる問い

Anthropic は、研究者向けの作業環境「Claude Science」や、ライフサイエンスの研究者向けの利用クレジットも用意している。研究者でない人がこの道具を直接使う場面は少ない。それでも、AI が薬づくりのどこに入ったかは、いずれ受け取る側にも関わってくる。

たとえば、新しい薬の説明を読むときに「どの工程で AI を使ったか」を気にするかどうか。設計に AI が使われた薬と、書類の点検に AI が使われた薬とでは、受け止め方が変わる人もいるだろう。速さを歓迎する見方も、人の確認がどこに残っているかを先に知りたい見方もある。

次に確かめたいのは、Anthropic のライフサイエンスのページで、Bristol Myers Squibb との臨床試験の段階の取り組みが2027年にどう広がるかと、Mithril の候補が人での試験に向けてどこまで進むかだ。

ことば

  • 前臨床 — 薬の候補を人に投与する臨床試験の前の段階。細胞や動物を使った実験で、効き目や安全性の手がかりを集める。今回の成果の多くはこの段階にある。
  • CAR-T 細胞療法 — 患者の免疫細胞に、がん細胞を見つけて攻撃する仕組みを遺伝子で組み込んで戻す治療法。これまで主に血液のがんに使われ、固形がんへの応用が課題になっている。
  • Claude Code — Anthropic のプログラミング向けの AI の道具。今回は Generate Biomedicines の研究者が、遺伝子の設計案を出すのに使った。

薬が届くまでの時間が縮むとしたら、あなたはその途中のどこに、人の目が残っていてほしいだろうか?

参照

あなたの暮らしで、最初に試せることは何でしょうか。