AI 研究者の Andrej Karpathy が日本時間11月2日未明、動画サイト「HackerTube」を公開した。技術者が集まる掲示板 Hacker News の20年分、4,300万件のコメントを Claude に絞り込ませ、繰り返し薦められてきた動画6,454本を集めたもので、作業は Claude の Opus 5.5 とおよそ2時間だったという。
YouTube のおすすめに不満を持った一人が、自分の基準で推薦の仕組みを作り直した話だ。出来上がったサイトに加えて、元のデータを zip で配り「自分の Claude に渡して、自分版を頼めばいい」と書いた点に、この話の持ち帰れるところがある。
HackerTube の中身
Karpathy の投稿とサイトの説明によると、HackerTube には次の特徴がある。
- アカウントがなく、ログインもいらない。高評価や視聴履歴、後で見るリストはブラウザの中だけに保存される
- サムネイルは投稿者が用意した画像ではなく、動画の中ほどの1コマ
- 動画は YouTube のプライバシー強化モードの埋め込みで再生する
- 長尺の動画をまとめた「Longs」がある
サイトの説明では、データの処理、検索と推薦、サイトそのものは Claude Opus 5.5 が Claude Code の中で作り、コメントのラベルや動画の紹介文、話題の一覧は、Opus が取りまとめた Claude Sonnet 5.5 のエージェントの群れが書いた。
人の手が要った3つの作業
Karpathy によると、自分の手でやったのはブラウザでの作業3つだけだった。YouTube の動画情報を取るための Google Cloud の API キーの作成、配信用の VPS(仮想サーバー)の立ち上げ、ドメインの購入だ。サーバーが動いてからは IP アドレスを渡し、更新、安全対策、配備、最適化まで Claude に任せたという。
裏返せば、同じものを公開するには、この3つは自分で引き受けることになる。サーバーとドメインには毎月・毎年の費用がかかる。配布データの側にも条件がある。
- 動画の説明文や再生数、長さといった YouTube の情報は含まれない。YouTube の規約で再配布できないためで、各記録にある動画 ID から、無料の YouTube Data API キーで自分で取り直す。手順は DATA.md にまとめられ、Google Cloud での作業は5分ほどと説明されている
- データのライセンスは元の Hacker News アーカイブと同じ ODC-By 1.0。HackerTube と元のデータセットを明記すれば、用途は問わない
- ラベルや紹介文は Claude が書いたもので、サイト自身が、いくつかは外れているはずだと断っている
推薦を、誰の目に預けるか
Karpathy は、投稿者が作るサムネイルを「A/B テストで最適化され尽くした」ものと表した。HackerTube は代わりに、技術者たちがコメント欄で20年間薦め続けた動画を基準にした。推薦の基準をどこに置くかで、並ぶ動画は変わる。
基準を自分で選べるのが、自分で作る推薦の意味だ。料理の動画なら料理好きが集まる掲示板、農業なら地域の生産者の記録というように、誰の薦めを集めるかを決められる。ただし、その集団の好みはそのまま偏りになる。Hacker News の薦めは技術者の関心に寄っている。どの目を借りるかで、見える範囲は広がりもし、狭まりもする。
確かめられる次の一点は、HackerTube の Data のページにある DATA.md だ。今週末に自分版を試すなら、何を自分で用意する必要があるかが、そこに手順として書かれている。
ことば
- Hacker News:米国の投資会社 Y Combinator が運営する、技術者向けのニュース共有掲示板。20年分の投稿とコメントが公開アーカイブとして配布されており、HackerTube はそれを材料にした。
- VPS:インターネット上に借りる仮想のサーバー。自分のサイトやアプリを公開するときの置き場所で、月ごとの利用料がかかる。
- ODC-By 1.0:データベース向けの公開ライセンスの一つ。出典を明記すれば、商用を含めて自由に使える。
あなたが次に見る動画を、誰の薦めで選びたいだろうか?