Anthropic は10月8日、AI で科学と技術の発見を速める米連邦政府の取り組み「Genesis Mission」に、3年間で1億5,000万ドルを拠出すると発表した。資金は、NASA や米国立衛生研究所 (NIH)、米国立科学財団 (NSF) を含む15を超える機関で Claude を使えるようにすることに充てる。
国の研究所の話に見えるが、同じ発表には、政府の外にいる研究者が使える窓口も並んでいる。研究の道具としての AI が、大学や研究室の一人ひとりにどこまで降りてきているのかを整理する。
1億5,000万ドルの使い道
発表は、ホワイトハウスの科学技術政策局が開いた会合の場で行われた。3年間で Anthropic が行うことは、主に三つある。
- Genesis Mission の数百の研究プロジェクトに、Claude、Claude Code、API の利用枠を提供する
- 各機関や国立研究所と、核融合エネルギーや量子コンピューティングなどの優先分野で協力する
- 参加する科学者に研修や技術支援を行い、新しく加わる機関が最初のプロジェクトを立ち上げるのを手伝う
Genesis Mission は、エネルギー省が中心になって進める連邦政府の取り組みで、Anthropic は昨年12月からこの取り組みとエネルギー省との協力を進めてきた。今回の拠出は、その範囲を NASA や NIH などほかの機関にも広げる形になる。
政府の外にある窓口
同じ発表で Anthropic は、研究者向けにすでに開いている取り組みも挙げている。8月27日に同社が発表した内容と合わせると、個人の研究者に関係するのは次の三つだ。
- 研究者向けの Claude チームプラン: 世界の研究者向けに1万席を用意し、標準の席は1年間無料、利用上限が5倍の席は月15ドル。申し込めるのは、大学や非営利の研究機関で研究室を率いる立場の人 (またはそれに相当する人) で、認証を受けたあと研究室のメンバーを加えられる
- AI for Science: より多くの計算を必要とする研究プロジェクトに、1件あたり最大5万ドル分の利用枠を出す。対象は生物学から、計算の重いほかの分野にも広がった
- Claude Science: 研究者がよく使う道具をまとめ、作業の記録を後から確かめられる形で残す研究用の作業環境
1万席は「世界の研究者」が対象で、米国の機関に限られていない。日本の大学の研究室も、条件を満たせば申し込める作りだ。
使えない場面と、手間
ただ、誰でもすぐ使えるわけではない。
チームプランを申し込めるのは研究室を率いる立場の人で、学生や個人の研究者が単独で申し込む形にはなっていない。AI for Science の利用枠も審査があり、すでにプランの枠を使い切るほど使っていることが前提になる。生物学と化学の研究者は、二重用途のリスクを理由に、当面は使えるモデルが限られる。
もう一つ、今回の1億5,000万ドルは米国の政府機関向けで、日本の研究者が直接受け取るものではない。個人に開いているのは、上に挙げた既存の窓口のほうだ。
次に確かめる場所
次に見るのは、Anthropic の研究者向けプランの申し込みページと、AI for Science の申請フォームだ。同社は1万席を今後数か月で増やすとしており、枠の拡大はそこで告知される。Genesis Mission の側では、エネルギー省が公表するプロジェクトの一覧で、核融合や量子の研究に AI がどう入ったかを追える。
ことば
- Genesis Mission — AI を使って科学と技術の発見を速めることを目指す米連邦政府の取り組み。国立研究所の計算資源やデータを AI と組み合わせ、エネルギーや医療などの研究を進める。
- API の利用枠 (クレジット) — AI を自分のプログラムから呼び出して使うときの料金に充てられる前払いの枠。研究では大量の計算をまとめて流すことが多く、月額のプランより API が向く場面がある。
あなたの研究や仕事の中で、AI に任せたい調べものや計算はどれだろうか。そのとき、手元のどの窓口から始めるだろうか?