米国の人型ロボット企業 Agility Robotics は10月21日、ペンシルベニア州ピッツバーグに広さ約5万平方フィート (約4,600平方メートル) の新しい拠点を構えると発表した。ソフトウェアと AI の開発の中心になり、同社の人型ロボット Digit を東海岸で保守するサービスセンターも置く。
ロボットを売る話ではなく、売ったロボットを現場で動かし続けるための足場の話だ。この1週間、このサイトでは上場で集める資金、次世代機 Digit 5 の電池、農機メーカー AGCO の工場での試験導入を取り上げてきた。今回はその先にある、導入した後の手当ての部分が見えてきた。
新しい拠点に入るもの
発表によると、新しい拠点は既存のピッツバーグの拠点に約3万5,000平方フィートを足す形になる。ピッツバーグ市長の Corey O'Connor 氏は、同社が市内の拠点をほぼ3倍にすると述べた。社員が使い始めるのは年内の見込みだ。
中に置かれるのは次のような機能だという。
- Digit が覚える作業 (スキル) の開発と、それを動かすソフトウェアの整備。シミュレーションと実物の両方で試す
- 顧客の現場で動く Digit の群れを見守り、整備し、新しいロボットや作業の流れを入れるチーム
- 東海岸のサービスセンター。オレゴン州セーラムにある Digit の工場「RoboFab」の保守の機能を補う
- 顧客が導入前に技術を確かめるための評価の場所
採用するのは、ソフトウェアと AI の技術者、サービスの技術者、導入の専門家、チームの責任者だ。人数は書かれていない。
ロボットの「働く一生」を支える
最高経営責任者 (CEO) の Peggy Johnson 氏は、人型ロボットを広げるには、ロボットが働く期間の全体を支える基盤を作ることが要ると述べた。新しい作業を覚えさせ、現場に入れ、毎日動き続けられるように面倒を見る。最高技術責任者 (CTO) の Pras Velagapudi 氏は、実際の現場への導入が、同社にとって最も大事な学びの源の一つだとしている。
同社によると、Digit はすでに物流の GXO、自動車部品の Schaeffler、トヨタ自動車のカナダ工場で使われ、自動車・消費財・農業のほかの4社にも入っている。Digit 5 については、複数年にわたる3億ドル超の受注を得ているという。ただしこの受注は、契約で決めた節目を満たすことが条件になっている。
車に販売店の整備工場があるように、職場で働くロボットにも、壊れたときに直す場所と人が要る。現場が増えるほど、修理の拠点までの距離や、新しい作業を覚えさせる手間が、導入する側の費用の計算に入ってくる。
一方で、発表には拠点の住所も、建物を借りるのか建てるのかも、サービスセンターが具体的にどんな修理や部品の在庫を受け持つのかも書かれていない。どれだけ早く直してもらえるかは、まだ外から確かめられない。
ロボットの隣に生まれる仕事
今回の採用の一覧に「サービスの技術者」と「導入の専門家」があることは見ておきたい。人型ロボットが職場に入るとき、人の仕事は消えるだけでなく、ロボットを整え、現場に合わせ、うまくいかないときに手を入れる側にも生まれる。家庭に Digit が来る話ではまだないが、倉庫や工場で働く人にとっては、隣に来るロボットの面倒を誰が見るのかという問いが、少しずつ具体になってきた。
次に確かめるのは、Agility Robotics の公式サイトのニュース欄だ。上場に向けた Churchill Capital Corp XI との合併は2026年第4四半期に終える見込みで、新拠点の入居や、東海岸での保守の始まりもそこで知らされるはずだ。
ことば
- サービスセンター — 現場で働くロボットの点検や修理を受け持つ拠点。Agility はオレゴン州の工場 RoboFab に加え、東海岸のピッツバーグにも置くことで、顧客の近くで手当てできる体制をつくろうとしている。
- RoboFab — Agility Robotics がオレゴン州セーラムに持つ Digit の工場。製造に加え保守の機能も担ってきたが、顧客が東海岸にも広がり、その役割を分ける形になった。
- Digit 5 — Agility Robotics の次世代の人型ロボット。今回の発表では、複数年にわたる3億ドル超の受注を得たとされる。新しい拠点で開発される作業のスキルも、この機体の上で動くことになる。
人型ロボットが職場に来る日、あなたはその隣で、どんな仕事をしていたいだろうか?
