米国の Agility Robotics は10月20日、人型ロボット Digit を、農業機械メーカー AGCO のカンザス州ヘストンの工場で試験導入すると発表した。米国での試験は 2027 年に始まる予定で、まずは部品の仕分けと積み上げ、保管用の箱を決まった場所へ置く作業から受け持つ。
Agility Robotics 発表 10月20日 (AGCO ヘストン工場での試験・担当する作業・2027 年開始)agilityrobotics.com
物流倉庫や自動車の部品工場で試されてきた人型ロボットが、トラクターなどを作る農機の工場にも入る。単純で体に負担のかかる作業から人の手を離すという説明は分かりやすいが、発表文には書かれていないことも多い。
何を、どこから始めるのか
AGCO は Fendt、Massey Ferguson、Valtra などのブランドを持つ会社で、農業機械のほか、センサーやデータで畑の管理を細かくする精密農業の事業も手がける。発表によると、Digit は当初、部品の仕分けと積み上げ、保管用の箱 (トート) の配置を担い、将来は組み立てや生産の主要な工程も支える構想だという。
Agility はこれまでに、トヨタ、物流の GXO、部品メーカーの Schaeffler などに Digit を導入してきた。発表の会社紹介では、実際の現場で 6 万 5000 時間を超える稼働実績があるとしている。
一方で、導入する台数、試験の期間、本格導入へ進む条件は発表に書かれていない。ヘストンの工場で何を作っているかも、発表文からは分からない。
「人の力を補う」という説明の範囲
AGCO で製造技術を統括する Thomas Enghof 氏は、繰り返しで体に負担がかかる、あるいは危険な作業を引き受けることで人の力を補う、という趣旨を述べている。発表は、従業員がより技能を生かす仕事へ移れるとも書き、人とロボットを組み合わせる際の厳格な安全管理にも触れた。
ただ、人員の増減や配置換えの規模については何も書かれていない。人型ロボットの工場導入は、まだ試験の段階の例が多い。速さや故障の頻度、人のそばで動くときの安全をどう確かめるかが、本格導入の前に越える壁になる。
現場の仕事はどう変わりうるか
部品を仕分けて箱を運ぶ作業は、熟練よりも体力と根気がいる仕事だ。そこをロボットが受け持つなら、人に残るのは段取りを組む、異常に気づく、ロボットの止まった理由を調べるといった仕事になる。働く側から見れば、腰や肩への負担が減る可能性と、求められる技能が変わる負担とが、同時にやって来る。
繁忙期だけ人を集めにくい現場なら、ロボットは人手の波をならす手段になりうる。その一方で、少量多品種の現場では作業の切り替えが多く、ロボットに教え直す手間がどれだけかかるかで、割に合うかどうかが決まる。
次に確かめたいのは、2027 年の試験開始の時点で AGCO と Agility が何台を、どの工程に入れたと公表するかだ。AGCO のニュースルームと Agility のニュースページで、台数と作業の範囲が具体的に示されるかを見たい。
ことば
- 人型ロボット (ヒューマノイド) — 人と同じように 2 本の脚と腕を持つロボット。人の体に合わせて作られた工場や倉庫を、大きく作り替えずに使える点が売りとされる。
- トート — 部品や商品を入れて運ぶ、取っ手付きの樹脂製の箱。倉庫や工場の中で、決まった棚や置き場との間を何度も行き来する。
自分の職場で、明日からロボットに任せたい作業と、任せたくない作業を一つずつ挙げるとしたら、どれになるだろうか?