小説:「土曜の夜と日曜日の夕方」〜後編〜

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待ち合わせのコンビニには、15分前に到着した。
急にまた胃のあたりが強張ってきた。
トイレを借りるためコンビニに入った。何も買わずにトイレを借りるのが忍びなかったので、チョコレートを一つ買ってクルマに戻った。
クルマの座席に着いたとき、ちょうど待ち合わせ時間の5分前になっていた。
そろそろ彼女が来る頃だと思い、ちょくちょくクルマの時計に目をやったがなかなか時間は進んでいなかった。
「どんな娘が来るんだろうな?」と淡い期待を持ってはいたが、実際に現れた娘とのギャップが大きくなるのもどうかと思い、考えることは止めた。
でも今はギャップが大きいほうが好都合な気がして、コンビニの窓側に並べられた女性誌を飾る美しいモデルや女優たちの顔を見定めていた。
「お待たせ、着いたよ♡」彼女からメールが届いた。
待ち合わせの時間から5分ほどが経過していた。
慌ててクルマの外を四方見回してみたが、それらしい娘は見当たらなかった。
クルマを降りてみると、ゴミ箱の脇の自転車置き場に一人の女性が立っていた。
「葵、ちゃん?」
想像していた17歳の女の子とは違い、凄く大人っぽい女性だったので恐る恐る声をかけてみた。
「そうよ。初めまして、マ・コ・ト・さん」
逆の期待はずれに、さっきまでのユウツがどこかに吹き飛んだ。
「なんで、制服じゃないの?」
とっさに口から出たのがそんなくだらない質問だった。
「あったりまえでしょ、制服なんかでくるはずないじゃない!」
そう言って彼女は、怒ったような、それでいて少し緊張がほぐれたような笑顔を俺に向けた。
「じゃあ、行こうか」
俺は、助手席側にまわり、ドアを開けて彼女をクルマに迎い入れた。
彼女は、高いヒールを履いていたこともあったが、身長は俺よりも少し上回るくらいあり、長い髪はダークブラウンの綺麗なワンレングスだった。白い肌に大きな黒い瞳はその長い髪にとても似合っていた。今どきの若い女性らしく細く長い脚は、ダメージ加工のスリムなデニムにぴったりフィットしていた。
 
葵ちゃんは、市内に住む公立高校に通う17歳。母一人娘一人の母子家庭で育った女の子だった。出会い系サイトに登録した目的は、別に援交目的ではなく、自分ではとくに悩みとも思いたくなかったらしいが、3年生に進級した頃からそれまで大好きだった母親との仲が悪くなり徐々に心のバランスが取れなくなり、寂しくて誰かにすがりつきたくなったのだと……
俺は、彼氏でも作ればいいじゃんと聞いてみたが、同じ年頃の男子は子供っぽくってとても付き合う気にはなれないと言っていた。
それがこの2週間の葵ちゃんとのメールのやり取りでわかったことだ。